ザルツブルク日記 2000年8月14日
ムーティ&ウィーンフィル〜コシ・ファン・トゥッティ

●ムーティ&ウィーンフィル
Wiener Philharmoniker 14. August 2000, 11.00 Uhr
Grosses Festspielhaus

Wolfgang Amadeus Mozart
Symphonie C-Dur KV551, "Jupiter"
-Pause-
Robert Schumann
Symphonie NR.3 Es-Dur op.97, "Rheinische"

Dirigent Riccardo Muti
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モーツァルトのジュピターにシューマンのラインという組み合わせはムーティ&
ウィーンフィルの王道プログラムと言っても良い。最初のモーツァルトでは何と
も柔らかく美しい弦が力強く響くことか。管楽器も素晴らしすぎる。ゲネプロで
の指示事項が極自然に演奏されるのだから、ウィーンフィルは素晴らしい。しか
しこのモーツァルトは今まで聞いたムーティ&ウィーンフィルのうちでも最高の
ものではないだろうか。二年前の来日公演はいったい何だったのだと疑うほど今
日のモーツァルトは活き活きとしている。第1楽章の調和に満ちた響きに対して
第2楽章の緊張感伴った美しさ。このピアニッシモで観客席から大きな咳払いが
出る。一瞬、ムーティが客席に振り向き、緊張が客席に走る。これ以降、観客席
にも真剣さが漂う。演奏するほうと聞くほうの双方が同時に集中できるほど素晴
らしいことはない。演奏は益々素晴らしくなる。

シューマンのシンフォニーはかなりの大編成で演奏される。ホルンは5本。これ
らが大きなラインの流れを描くが、それは穏やかにも悠々と流れ、長閑な情景が
彷彿とするが如く沸き立つ音楽だ。これだけの大編成でありながら、室内楽のよ
うに緊密なアンサンブルで響きが統一されている。ゲネプロでは終楽章に掛けて
やや荒削りなところもあったが、本番はさすがに緻密に、しかも生命力豊かな演
奏となる。今日の演奏を聞くと、ウィーンフィルの面々が本当に真剣に演奏して
いる様がまざまざと感じられた。日本公演でもこういった熱の入った演奏が聞け
ることを期待する。さて次回のゲルギエフ&ウィーンフィルがとても楽しみだ。

8/12のザルツブルガー・ナハリヒテンによると、ウィーンフィルのマエストロ、リッカルド・ムーティの1971年からの音楽祭への功績が表彰されたとのこと。

●モーツァルト『コシ・ファン・トゥッティ』
Wolfgang Amadeus Mozart
COSI FAN TUTTE
Dramma giocoso in zwei Akten Text von Lorenzo Da Ponte KV588

Musikalische Leitung : Lothar Zagrosek
Inszenieung : Hans Neuenfels
Buehnenbild und Kostueme : Reinhard vo de Thannen
Dramaturgie : Yvonne Gebauer
Choreinstudierung : Donald Palumbo
Regiemitarbeit : Henry Arnold

Fiordiligi : Karita Mattila
Dorabella : Vesselina Kasarova
Despina : Maria Bayo
Ferrando : Rainer Trost
Guglielmo : Simon Keenlyside
Don Alfonso : Franz Hawlata

Wiener Philharmoniker
Cantinuo : Ronald Schneider
Kozertvereinigung : Winer Staatsopernchor
14. August 2000, 18:30 Uhr
NEUINSZENIERUNG
KLEINES FESTSPIELHAUS
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噂に聞いていた演出は良く分らないものであった。というよりも、余りにも沢山
の情報がびっくり箱のように飛び出すものだから、見てみて繋がりが全く掴み難
いし、演出の意図が伝わらない。最初の舞台は二つの間口に二組のカップルが登
場するのであるが、それぞれの間口に1番、2番と番号ランプがついている。真
中に13番のランプがあり、そこにはハウラータ演じるアルフォンソが居る。彼
はまるでマフィアの親方のような出で立ちで、フェルランドとグリエルモを従え
ている。場面を追うごとに、異様な舞台となっていくが、極めつきは大きな額縁
に映し出される映像。フィオルディリージとドラベッラが歌っているときに、大
きな映像を映し出されては目障りこの上なし。しかもその映像はアダムとイブの
物語を描き、りんごに蛇が登場する。さらにリンゴをナイフで切ったところ、う
じ虫が群がるというしろものだ。

ステージ上には大きなガラス円盤があり、これが傾斜して舞台から置きあがる仕
組みになっているが、これには大きなハエが2匹、標本のようになっている。先
ほどのうじ虫と関連があるのだが、意味が読み取れない。それに歌手たちに意味
不明の仕草をさせているが、これも良く分らない。分らないずくめの演出が次ぎ
から次ぎへと押し寄せるが、テーブルが沢山並べられた食卓の場面で、13番の
テーブル番号が真中に置かれたのは、第1幕冒頭の13番ランプと符合するもの
がある。これも意味不明。

ということで、分らないずくめでオペラを見るほど面白くないものはない。コシ
を見ているという感覚が無くなってくる。これに対して、音楽はとても良かった
と思う。ツァグロセクがウィーンフィルからとても快活でメリハリのある音楽を
引き出していたし、マッティラとカサロヴァが良い歌を聞かせてくれた。これに
対して、恋人役の男性たちは小粒で、彼女たちの影に隠れてしまった。ハウラー
タは相変わらずコミカルさも十分にちょっと変わったアルフォンソを楽しませて
くれた。また昨年、ツェルリーナを歌ったバーヨが凄く上手いデスピーナを歌っ
た。それにしてもこのコシはある意味で面白いが、一体全体何だったのだろうか。