ザルツブルク日記 2000年8月10日


8/10 19:30頃のホーエン・ザルツブルク城
この時間帯の橋の上は観光客も少なく比較的静かなザルツを楽しめる。


いよいよ待ちに待った旅の始り。早朝、地下鉄で上野に向う。6時半のスカイライナー
で7時半に成田第2ターミナルに着いた。LH711は10時頃の出発なので余裕だ。
さすがに出国手続きは待ち時間はゼロ。あとはラウンジでのんびりと過ごす。フライト
中も睡眠を十分にとるが、ザルツブルクマガジンなどに没頭し、時間のたつのを忘れて
しまう。オーディオ・チャネルではハンプソンの特集が組まれていて、これをBGM代
わりとする。フランクフルトでの待ち時間はほぼ2時間ほど。あとはザルツにむけても
う一飛びするだけ。

ザルツは快晴で飛行機からもホーエンザルツが何時ものように望める。それにしてもさ
すがに涼しい。さてホテルにチェックインして部屋で荷物をひとまずまとめた段階で午
後7時15分頃。今日はブッヒンダーのリサイタルとコシにネックス・ジェネレーショ
ンの音楽祭プロがあるが、いずれも間に合わない。今から行けるのはシュロス・コンツ
ェルト20:30、レジデンツ・コンツェルト20:30とレクイエム20:00のい
ずれかだ。

やはりモーツァルト生誕の地で彼のレクイエムを聞いてみたい。会場はコレーギエン教
会である。ここは祝祭大劇場のザルツァッハ寄りの大学の教会となっている。歩いても
大した距離ではない。開演20分前に余裕で到着した。

●Gesellschaft Musica sacra Salzburg
Kollegienkirche Salzburg
10. August 2000, 20.00 Uhr

W.A.MOZART
Fantasie in f-moll KV 594
Adagio-Allegro-Adagio

REQUIEM KV 626
1.Introitus Requiem
2.Kyrie
3.Sequenz
Dies irae, Tuba mirum, Rex tremedae, Recordare,
Confutatis, Lacrimosa
4.Offertorium
Domine Jesu, Hostias
5.Sanctus
6.Benedictus
7.Agnus Dei
8.Communio Lux aeterna

Solisten:
Irena Bespalovaite, Sopran
Leah Summers, Alt
Bernhard Berchtold, Tenor
Gun Wook Lee, Bass
Karl-Heinz Vater, Orgel

Ensemble Salzburger Vokalosolisten
Cappella Musica sacra Salzburg
Konzertmeisterin : Elizabeth Wilcox

Dirigent: Hans-Joachim Rotzsch
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演奏者たちが登場する前に神秘的なオルガンが聞えてきた。最初の演目のモーツァルトのファンタジーだ。オルガンは祭壇に向って後ろの方に有るが、さすがに迫力パイプオルガンは教会全体を包み込む。この曲は始めて聞いたが、サントリーホールやオペラシティで聞くオルガンよりもはるかに厳粛で、荘厳だ。やはりオルガンはこういった教会が相応しいと改めて実感した。

指揮者にはあの有名なロッチュが出演するほかは、全く知らないアンサンブル、ソリスト、合唱であったが、この教会で聞くレクエムはぞくぞくする程素晴らしかった。会場に入ったときは既に前の方の席は一杯でちょうど教会の中央部ドームの真下で聞いた為かも知れないが、微妙な残響に残響が重なり、神々しいレクイエムが響き渡った。アンサンブルや合唱にも立体感があり、何よりも音が極自然に沸き立つ様が素晴らしい。こういった効果が特に顕著だったのがソプラノの美しすぎる歌声だった。一点の曇りもない澄み切ったソプラノが教会のエコーに重なり合い、自然とビブラートが生まれる。さらにはティンパニは雷の如く増幅され、教会はまさに生きた楽器といっても良い。こうした音響効果が生み出すのは響きだけではなく、まさしく敬虔さ、厳粛さといった祈りであることに他ならない。以上1時間10分のコンサートでザルツブルクの魅力に浸ることができた。さて明日から本格的な音楽祭が始る。