・今日はルツェルン音楽祭友の会発足の特別イヴェントでした。簡単なプログラム解説にはヴァーチャル・ポストカードと記されたルツェルン音楽祭ガイドのCDが添付されていました。今回はちょうどグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラと一緒に来日しているピエール・ブーレーズとルツェルン音楽祭芸術総監督のミヒャエル・ヘフリガーによる講演が行われました。
第1部では先ずヘフリガーによりルツェルン音楽祭の概要が説明されました。1938年にトスカニーニによって創設されたルツェルン祝祭管弦楽団による演奏がトリーフェンで行われたのが音楽祭の発端だそうです。祝祭管弦楽団はその後、消滅していたものの、今年の夏の音楽祭でアバド指揮により復活するのが興味深いところです。さらにコンテンポラリーの分野も重点を置き、今年だけでも17の世界初演を行うという点に意気込みを感じます。
ピエール・ブーレーズの語りでは、2004年から発足する現代音楽アカデミーの計画が紹介されました。ブーレーズ・アカデミーとのなるこのプロジェクトでは演奏家と作曲家の相互理解にポイントを置き、将来のコンテンポラリー演奏家達を育てるというものだそうです。最近は20世紀の古典すら余り演奏されていないことに危惧を覚えるというブーレーズの語りには切実感がありました。この講演を聴いていると、ちょうど昨年のポリーニ・プロジェクトのコンセプトが思い起こされました。
なおジーラ・フーバーによりルツェルン友の会について説明されましたが、通常年会費が3000円のところ、今日のイヴェントでは3年間で3000円の特別割引であることを強調されていたのが面白いところでした。コレクト・リヒターさんの語りではルツェルンの自然について簡単に紹介されました。
第2部はブーレーズに選ばれた6人による演奏で、ルツェルン音楽祭レジデンツ作曲家であるところの細川俊夫とハンスペーター・キーブルツの世界初演2作品がとても印象的でした。細川作品は細川氏自らが指揮し、キーブルツ作品はブーレーズが指揮しました。「歌う庭」では冒頭の超ピアニッシモの囁きから、花が開花していく様子を描いたという解説を彷彿とさせる内容で、個々の楽器の実在感、楽器間の音が空間を飛び交う様子までが手に取るように伝わってきました。キーブルツの六重奏は最初からインパクトあるアンサンブルで開始され、諧謔的な展開が面白い作品でした。ともかく二つの小品だけでも卓越したアンサンブルに時間を忘れるひと時でした。
ちなみにピアニストのエマールはザルツブルク音楽祭でのブーレーズ・プロジェクトで演奏していたのが印象に残っていて、彼のリサイタルも行ってみたいところです。なお第2部終了後は本日の出演者も参加してのレセプションで、ロビーのカフェを使って行われましたが、それほど大人数ではなく、とても落ち着いたものでした。ともかく来週のブーレーズ&マーラー・ユーゲントによる演奏会が楽しみです。 |