2000年を振り返って(マイ・ベスト・セレクション

フェストシュピーレ・マガジンでは例年ベステンという企画が行われるように、小生
も今年を振り返ってみて、ベスト・コンサートを選んでみたいと思います。もちろん
個人的趣向と独断によるもので、決して一般的な基準というものではありません。特
に今年は何時にも増してオペラとオーケストラの来日ラッシュのためコンサート通い
が235回と急増してしまい、ベストを選ぶのは至難。とりあえず各ジャンル別にセ
レクトしてみました。

●オーケストラ編(77本)

1.アバド&BPO/第九交響曲(ヨーロッパコンサート)
2.ラトル&ウィーンフィル/第九交響曲(フェストヴォッヘン)
3.アバドBPO定期/田園交響曲(フィルハーモニー)
4.ゲルギエフ&ウィーンフィル/火の鳥(ザルツブルク音楽祭)
5.シノーポリ&ドレスデン国立/ワルキューレ1幕(サントリーホール)
6.ムーティ&ウィーンフィル/シューマン交響曲3番(ザルツブルク音楽祭)
7.シャイー&コンセルトヘボウ/マーラー交響曲4番(サントリーホール)
8.マーガ&新星日響/ブルックナー交響曲8番(サントリーホール)
9.ブーレーズ&ロンドン響/マーラー交響曲6番(ザルツブルク音楽祭)
10.マゼール&バイエルン放響/英雄の生涯(サントリーホール)


ウィーンフィルだけでもコンサート5本、ゲネプロ2本、オペラを8本と計15回も
聴きけましたし、ベルリンフィルはコンサート5本、オペラ1本となりました。当然
ながらベスト・ランクにはこれら二つオケが浮上するのは必至。それにウィーンフィ
ルとベルリンフィルはそれぞれのホームグランドとなるホールでの演奏がやはり素晴
らしく、アバド、ラトルともに燃焼する凄さを実感した次第。ゲルギエフとムーティ
のウィーンフィルも間違いなく最高の出来栄えで文句なしのベスト。小澤&ウィーン
フィルももちろん素晴らしかったですが、個人的にはマゼールの「英雄の生涯」のほ
うにインパクトを感じました。

●オペラ編(54本)

1.ボーダー指揮『ルル』(ウィーン国立歌劇場)
2.シノーポリ指揮『影の無い女』(ウィーン国立歌劇場)
3.ゲルギエフ演奏会形式『スペードの女王』(ザルツブルク音楽祭)
4.アバドBPO『トリスタンとイゾルデ』(東京文化会館)
5.ティーレマン指揮『パルジファル』(ベルリン・ドイツ・オペラ)
6.ウィーン国立『シャモニのリンダ』(NHKホール)
7.メッツマッハー指揮『ヴォツェック』(ハンブルク・オペラ)
8.カンブルラン指揮『トロイの人々』(ザルツブルク音楽祭)
9.スーザン・グラハム『トーリードのイフィジェニ』(ザルツブルク音楽祭)
10.ケント・ナガノ指揮『遥かな愛』(ザルツブルク音楽祭)


今年観たオペラには良いものが沢山あって10本に絞るのがとても難しいところ。他
にもウィーン国立のナクソス島、ムーティ&スカラ座、グルリットのヴォツェック、
シュレーカーの「遥かな響き」、ホールオペラ「仮面舞踏会」などなど捨てがたいも
のが沢山ありました。コストパフォーマンス的にはバーデン市立の「天国と地獄」も
楽しめましたし、東響のカーチャ・カバノヴァーも良かったです。


●室内楽編(48本)

1.フェスティバル・ソロイスツ/ゴルトベルク変奏曲(サントリーホール)
2.東京カルテット(トッパン・ホール)
3.ウィーン弦楽四重奏団(紀尾井ホール)
4.ベルリンフィル・バロック・ゾリステン&ペトリ(東京オペラシティ)
5.アルバン・ベルク弦楽四重奏団(紀尾井ホール)
6.バッハ・コレギウム・ジャパン/ブランデンブルク全曲(東京オペラシティ)
7.ウィーン・アルティスSQ&シャロン・カム(武蔵野市民文化会館)
8.ミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブ(三鷹市芸術文化)
9.アントルモン&オランダ室内管弦(紀尾井ホール)
10.館野泉トリオ/ブエノスアイレスの四季(横浜みなとみらい)


圧倒的だったのはフェスティバル・ソロイスツ。完成度の高さはもとより万華鏡のよ
うに変幻自在するゴルトベルクにはバッハの奥深さもあって最高でした。今年新たに
出来たトッパンホールでの東京カルテットも完璧なアンサンブルと音楽性にひたすら
感動を覚えました。ヒンク率いるウィーンSQも抜群の出来栄え。異色どころではグ
ローブ座の楽しさ、館野泉トリオの情熱が素晴らしかったと思います。


●リサイタル編(21本)

1.竹澤恭子&シュテファン・ヴラダー(東京オペラシティ)
2.オーギュスタン・デュメイ&小山実稚恵(カザルスホール)
3.ミュンヘン・デュオ/メンデルスゾーン八重奏曲(カザルスホール)
4.ホアキン・アチュカロ/組曲ゴイェスカス・イベリア(カザルスホール)
5.イツァーク・パールマン/ブルッフ協奏曲(サントリーホール)
6.アルゲリッチ&マイスキー(サントリーホール)
7.藤井一興/フォーレ夜想曲全曲(彩の国さいたま)
8.カテリーナ・マヌーキアン/ヴァイオリンリサイタル(紀尾井ホール)
9.ブーレーズ2000/エマール(ザルツブルク音楽祭)
10.熊本マリ/ピアノ・リサイタル(紀尾井ホール)


リサイタルは21本と少ない演目から選んだ10本です。やはり竹澤のヴァイオリン
が冴えまくった感じがしますし、デュメイ&小山のデュオもまた素晴らしい。ミュン
ヘン・デュオとアチュカロのピアニズムにも驚嘆。藤井、エマール、熊本と多彩なピ
アノリサイタルが楽しめました。


●声楽編(33本)

1.コンチェルト・イタリアーノ『スタバト・マーテル』(紀尾井ホール)
2.バーバラ・ボニー(紀尾井ホール)
3.グルベローヴァ&カサロヴァ/オペラアリアの夕べ(サントリーホール)
4.タン・ドゥン&サウンド・デザイン『新マタイ受難曲』(東京オペラシティ)
5.ナタリー・シュトゥツマン&ゼーデルグレン(紀尾井ホール)
6.コレギウム・ヴォカーレ『ヨハネ』『マタイ』『ミサ曲ロ短調』
7.ムーティ&ミラノ・スカラ座『レクイエム』(NKHホール)
8.ピノック&イングリッシュコンサート『マタイ受難曲』(東京オペラシティ)
9.ザ・シックスティーン『メサイア』(東京オペラシティ)
10.ドイツ・バッハ・ゾリステン/クリスマス・オラトリオ(東京オペラシティ)


声楽のいずれも甲乙つけ難い素晴らしさでした。コンチェルト・イタリアーノのスタ
バト・マーテルは実に感動的。それにボニー、グルベローヴァ、カサロヴァ、シュト
ゥッツマンらの素晴らしさ。今年聴いた10本のマタイのうちコレギウム・ヴォカー
レとイングリッシュ・コンサートの演奏は出色の出来栄えでした。ムーティ&スカラ
の迫力も凄かった。なお他にも波多野睦美「フランス宮廷歌曲」も絶品でした。


●バレエ編(2本)

今年観たバレエはベジャール「くるみ割り人形」とイスラエル・コンテンポラリ・ダ
ンスのみですが、特にベジャールのは素晴らしかったです。イスラエルのは異常なほ
どパワーを感じるダンスで迫力満点でした。