井上由紀&井上景『女たちとギターの弦は』

 2000年12月22日(金)19時/東京オペラシティ近江楽堂
(演奏)
 井上由紀(ソプラノ)
 井上景(19世紀ギター)
(プログラム)
 ジュリアーニ :スペインのラフォリア
 モーツァルト :「恋人よ、さあこの薬で」(ソル編)
        :「濃いとはどんなものかしら」(井上編)
 メルツ    :ハンガリー風幻想曲
 ジュリアーニ :「愛は遅れるのを好まない」
         「全ての苦しみの中で」
         「何時その日は来るのだろう」
         「私の可愛い人が」
 −休憩−
 パガニーニ  :ソナタ
 ソル     :「君は覚えているだろうか」(井上編)
 パイジェッロ :「うつろの心」(ソル編)
 ソル     :「涙」
        :「哀れな心」(井上編)
 アグアド   :「ファンダンゴ」
 ベッリーニ  :「ゆかしい月よ」(井上編)
 ロッシーニ  :「羊飼いの娘」(井上編)
        :「踊り」(井上編)
(アンコール)
 ソル     :セギディーリャ「女たちとギターの弦は」
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近江楽堂では古楽アンサンブルを良く聴くものの、ソプラノを聞くのは初めて。しか
もギターが伴奏となれば、是非聴いてみたいもの。今年はギターだけを近江楽堂でも
聞いたが、今日のようなプログラムはとても楽しみ。

最初はあのラフォリアをテーマにしたジュリアーニによる6つの変奏曲がギターソロ
で演奏された。井上嬢が演奏されたギターはやや小ぶりもので、余り大きな音が出な
いものの、繊細で古風な調べが美しかった。ちなみに彼女はヴィオラ・ダ・ガンバも
学ばれているとのこと、古楽を感じさせる雅さがギターにも溢れていた。

続いて二人の井上嬢によるモーツァルトの歌曲。ドン・ジョバンニのアリアから旋律
をとった編曲で、ソプラノの響きの豊かさに驚いた。もっともここは近江楽堂だから
響きが良いのは分かっていても、ここで聴く肉声の素晴らしさは何とも表現しがたい
ほど美しい。

途中、メルツ、パガニーニ、アグアドなどのギターソロをはさみながら、ソプラノと
ギターのデュオが続く。前半はおもにウィーンの音楽家、後半はパリを焦点に据える
が、ソルのスペイン風、ロッシーニのイタリア風と実に多彩な音楽が繰り広げられた。
最後のソルの珍しいセギディーリャから「女たちとギターの弦は」はまさしく今日の
アンサンブルにぴったりの作品。今日のようなリサイタルも実に楽しいなぁと感じた
次第。

なお12/24の近江楽堂では19:00から無料のクリスマスコンサートが開かれるとのこと。
これには今日のソプラノ井上嬢も出演される。他にもユニークなものとして2/23に松
堂久美恵&武久源造によるシューベルト歌曲集とシューマンのリーダークライスが。
異色ものとしては12/29にウーロン亭のオペラ落語(ディドとエアネス/魔笛/タン
ホイザー)があるとか・・・