ソフィア国立歌劇場日本公演/ポンキエッリ『ラ・ジョコンダ』

 2000年12月16日(土)15時/新国立劇場
 演出   :プラーメン・カルターロフ
 美術   :サルヴァトーレ・ルッソ
 指揮   :ジョルジョ・プロイエッティ
(キャスト)
 ジョコンダ :ゲーナ・ディミトローヴァ
 エンツォ  :ボイコ・ツヴェターノフ
 アルヴィーゼ:ニコラ・ギューゼレフ
 ラウラ   :エレーナ・チャブダロヴァ=イッサ
 チエーカ  :ステフカ・ミネヴァ
 バルナバ  :ジフコ・プランチェフ
 ツァーネ  :ビセル・ゲオルギエフ
 イゼーポ  :ミレン・ボシュコフ
 水先案内人 :ストイル・ゲオルゲエフ
 バレエ・ソロ:ヴェッサ・クラスタノヴァ
        ルッセン・カネフ
 ソフィア国立歌劇場管弦楽団/合唱団/バレエ団

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ジョコンダはBSで放送されたドミンゴ&マルトンの名演奏はもちろんのこと、昨年
の新星日響コンサート形式も圧倒的な出来栄えだった。今回のソフィア日本公演は舞
台上演としては本邦初というから大いに期待する。が、先日のトゥーランドットが不
発だったように、今日の公演もかなり不満の残るものとなった。

舞台はシンプルな作りながら4つの幕を巧みに展開されゆく。しかし残念ながらオー
ケストラ、合唱、ソリストたちと全てが低レヴェル。舞台なしで素晴らしいオペラを
聞かせてくれた新星日響とは天と地の差があると感じた。このオペラには随所に聞か
せどころが満載されているが、訴求力に乏しい上演に留まった。かろうじてバレエが
見せ場となっただけ。今日一番の拍手はバレエに対してであったことは情けないと感
じた。歌手たちは声量が無くてインパクトゼロ。唯一ツヴェターノフが輝かしさを放
ち、ドラマティックな場面を見せてくれた。ディミトローヴァも最終幕で往年の実力
を垣間見せてくれたが、イタリア・オペラを楽しませる域にはほど遠い。オーケスト
ラも最悪。実にか細いアンサンブルがジョコンダの魅力を消し去っている。

こんなマイナス面ばかり書いて恐縮するほどだが、舞台セットには随所に工夫が凝ら
されていた。全幕を通して階段を組み上げるシンプルな舞台には好感が持てたし、舞
台セットと衣装の美しさが目を楽しませる。舞台に配置された階段はドラマ展開に応
じて動くようになっており、舞台に流動感を与えている。特に第3幕では二つの階段
が字に相反し、それぞれの階段の頂上にアルヴィーゼ、ラウラが向かい合う。まさに
夫婦のきずながV字で切り離されているのを視覚で訴えるかのようだ。第4幕ではこ
れら2つの階段が左右反転し、V字とは逆のアーチを描く。仮死状態のラウラはアー
チの下に運び込まれるが、アーチの上にいるジョコンダとの対比が印象つけられる。
音楽に不満があるものの、舞台展開の良さオペラのドラマ性を掻き立ててくれたのは
何よりの救い。特に前半よりも後半、第3幕、第4幕と緊張感が感じられた。