ヘンデル:オラトリオHWV56『メサイア』 |
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2000年12月15日(金)19時 |
今までにメサイアは何度か聞いたがいずれも12月と相場は決まっている。当たり前
と言われればそれまでだが、メサイアはクリスマスの時期に留まらず演奏されて良い
のではとつくづく思う。ヘンデルはオラトリオの数々を作曲しているが、残念ならが
らライブで聞いたのは「ユダスマカベウス」だけ。メサイアを聴けるのはやはり12
月。しかし日本で実際どれだけメサイアが演奏されているのだろうか。音大関連では
いくつか演奏があるものの、普通の演奏会として聞けるチャンスは少ない。本当は教
会の大聖堂なんかで聞ければ最高なのにと思う。それはともかく今日は音響の良いオ
ペラシティでメサイアを。しかもザ・シックスティーンという類まれなるアンサンブ
ルで聞けるのは本当に嬉しい。
ステージにはTVカメラが入っていた。なんでも12/31のBSで放送されるらし
い。BSは収録してから半年くらいしてから放送されるのが多いが、たった2週間で
放送されるとは・・・
弦楽パートは5,4,2,2,1の編成にオルガン、ハープシコード、それにティン
パニと管楽器が加わる。これだけの編成になればさすがにアンサンブルに充実感があ
り、二日ほど前のBCJ「ミサ曲ロ短調」の管弦楽が色あせるようすら感じてしまっ
た。合唱はかなりの小編成で管弦楽の後方に2列で並ぶ。何と透明で生彩に満ちた合
唱だろうか。小編成ならではの軽やかさとしなやかさがあって、しかもフォルテにお
ける力感の素晴らしさ。特に管弦楽と盛り上がるとこなんかは、合唱に流動感があっ
て音楽の推進力とともに聴衆を完全に魅了しきった。
4人のソリスト陣も粒立ちが揃っていて、ヘンデルのオラトリオの面白さ美しさ、荘
厳さといったものを余すことなく聞かせてくれた。こういったオラトリオにはスター
級のソリストは不要。むしろこういった古楽畑のスペシャリスト達の息のあったアン
サンブルが何よりも大切と感じさせてくれる。ラッセルの清楚で妖精のようなソプラ
ノ、ブレイズの柔らかく包み込むようなカウンターテナー、安定したテノールのギル
クライスト、一瞬ブルゾンを思わせた貫禄のジョージ。彼ら4人のレチタティーヴォ
とアリアを交互に聴ける楽しみ。実に多彩なメサイアだなぁと思わせた。
オラトリオということもあってか若干の演出も加えられる。第1部、「いと高きとこ
ろに神に栄光あれ」のくだりではオルガンバルコニーに2本のトランペットが現れ、
まさに天から神々しい響きが降り注ぐ。管弦楽と合唱と響きあうアンサンブルに釘つ
けとなってしまった。もちろん有名なハレルヤでも2本のトランペット、今度はステ
ージでティンパニと音楽的興奮を体験させてくれた。
それしてもクリストファーズのテンポ運びは上手い。ゆったりと音楽を推し進めつつ
決して焦らない。音楽の重心をしっかりと据えて、その上に躍動、歓喜を上手く表現
していくといった指揮だ。それゆえに聴くほうも、じっくりとドラマに引き込まれし
まう。この安定さが重要なのだと思った。今日は本当にメサイアの素晴らしさを心行
くまで楽しめた次第。
(PS)
このところCD屋さんに行く暇がなくて・・・ちょうど演奏会の前に時間があったの
で、新宿ヴァージンに寄ってみた。バーデンのニーベルング指輪が4300円、ケン
ペ&MPOのベートーヴェン交響曲全集がとにかく安く売られていた。欲しいなぁと
思ったが荷物になるので、その場を立ち去った。