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演出 :プラーメン・カルターロフ 美術・衣装:ヨアンナ・マノレダキ 指揮 :ジョルジョ・プロイエッティ (キャスト) トゥーランドット:ゲーナ・ディミトローヴァ カラフ :ボイコ・ツヴェターノフ リュー :佐藤しのぶ ティムール :ニコラ・ギューゼレフ ピン :セヴェル・バルネア パン :ニコライ・パヴロフ ポン :ミレン・ボシュコフ アルトゥム :ボリス・ボグダノフ 役人 :ストイル・ゲオルゲエフ 賢者 :パヴェル・モロゾフ ビセル・ゲオルゲエフ ストヤン・バラバノフ ゲオルギ・イリエフ ソフィア国立歌劇場管弦楽団/合唱団 TOKYO FM少年合唱団 |
トゥーランドットを見られるというだけで心が沸き立つ。今日の公演はブルガリアの
ソフィア国立歌劇、いわゆるメジャー級の出来栄えに及ばないかもしれないが、それ
でも開演まえから期待が高まる。音楽とともに現れた舞台は狭いステージを有効に活
用した立体的なセット。正面にはギリシャ劇のような円形舞台が青白く光っている。
周囲には兵士たちや群集といったお馴染みの場面。左右からジグザグ状の階段が宮殿
に連なる。遠近法を縦に使った工夫で宮殿の高みを表現している。
さて音楽に関してはオーケストラに伸びが不足している。管と打は良く響くが弦が何
とも貧弱だ。中低域が抜け落ちたかのような薄っぺらい響き。合唱も余り頂けない。
やっぱりトゥーランドットはオーケストラも合唱も豪華絢爛に鳴り響いて欲しい。
歌手達の声量も全体に弱すぎたのは残念だ。とはいうもののツヴェターノフのカラフ
はなかなか良かった。輝かしい美声が素晴らしいし、第2幕からは大いにイタリアオ
ペラの醍醐味を聞かせてくれる。アリア「寝てはならぬ」はちょっとあっさりすぎた
のは残念だったが。
これに次いで佐藤しのぶのリューが耳と心を捉えて放さなかった。主役級の彼女がリ
ューを歌うというのも、周囲の歌手達とのバランスが取れないように感じたが、それ
はもう立派な歌と演技だった。
さてディミトローヴァのトゥーランドットに関しては、往年の貫禄ある歌声の片鱗が
伺えるものの、今やこの役を歌うのは苦しそうだった。第3幕のフィナーレで強烈な
ドラマチックさが復活し、トゥーランドットの愛を聴けたのは嬉しかった。かつてウ
ィーンで聞いたイーグレンの怒涛のトゥーランドットが懐かしくなった。
オペラの舞台に関してはドラマがうまく流れるよう群集の扱いも巧みだったし、とて
もスムーズにお話が進む。これにオケが上手ければ良いのにと思うだけだった。しか
し先日の東響「カーチャ・カバノヴァー」に比べると手応えが無さ過ぎるように感じた。