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昨日の素晴らしいカーチャ・カバノヴァーを演奏した東響に比べればアンサンブルの
レベルは明らかに劣る。が、小林が指揮すると実にサウンドが良く伸びてくる。先週
のコチシュに比べてもこうも違うものかと思ってしまった。最初のリストの前奏曲、
これはヴァーレク&プラハ放響でも聞いたが、それと比較しても今日の方がずっと良
い。響きの深みが何とも見事だし、フィナーレにかけての輝かしい盛り上げ方も小林
ならではのもの。
ショパンのコンチェルト。最初のリストで大いに盛り上がってしまったが、オーケス
トラとピアノが溶け合うようなアンサンブルが美しい。テンポもゆっくりめに詩情豊
かに演奏される。中村のピアニズムの美しさ、力強さを堪能した。特にピアノタッチ
の粒立ちが流れるようなフレーズとともに弾ける。しかし楽章毎に小林が指揮台から
降りて長い休止を取るので、楽章間にまたがる緊張感、持続力といったものが途絶え
るように感じた。
これは幻想交響曲にも言える。たしかにサウンドの充実ぶりは見事だが、4、5楽章
を除いて楽章間の休止を取りすぎたためか、音楽の流れが断続されるような印象を受
けた。個々の楽章は小林一流の音楽作りにドライブされているのだが、全体を支配す
る緊張、集中力が乏しくなってしまう。昨年の小林&チェコ・フィル「わが祖国」で
は大いなる感動を与えてくれたのだが、今日の演奏はそれとはほど遠いように感じた。