ベルリン・フィルハーモニー・バロック・ゾリステン

 2000年12月3日(日)19:00/東京オペラシティコンサートホール
(演奏)
 第1ヴァイオリン:ライナー・クスマウル/ゾルタン・アルマジ/
          アレクサンダー・イヴィッチ/セバスチャン・ヘーシュ
 第2ヴァイオリン:ベルンハルト・フォルック/ライマー・オルロフスキー/
          ハインツ=ヘニング・パーシェル
 ヴィオラ    :ヴォルフラム・クリスト/ヴァルター・キュスナー
 チェロ     :ゲオルグ・ファウスト/ZHAO JING
 コントラバス  :クラウス・シュトール
 チェンバロ   :アンドレアス・シュタイアー
 リコーダー   :ミカラ・ペトリ

(プログラム)
 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲ト短調BWV.1056a(復元版)
         ヴァイオリン独奏:ライナー・クスマウル
 テレマン   :リコーダー協奏曲ハ長調TWV.51−C1
         リコーダー独奏 :ミカラ・ペトリ
 ヘンデル   :5声のソナタ 変ロ長調HWV.288
         ヴァイオリン独奏:ライナー・クスマウル
 ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲 ト短調RV.531
         第1チェロ   :ゲオルグ・ファウスト
         第2チェロ   :Zhao Jing
 −休憩−
 J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第3番 ニ長調BWV.1054
         チェンバロ独奏 :アンドレアス・シュタイアー
 テレマン   :ターフェルムジーク第1集〜協奏曲 イ長調TWV53−A2
         リコーダー   :ミカラ・ペトリ
         ヴァイオリン  :ライナー・クスマウル
         チェロ     :ゲオルグ・ファウスト
(アンコール)
 ヘンデル   :歌劇「ソロモン王」から「シバ女王の到着」
 ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「冬」第2楽章
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前回の来日公演では四季を聞いたが、余りの素晴らしさに今回の来日公演も見逃す訳
にはいかない。バッハのヴァイオリン・コンチェルトではいきなりクスマウルのソロ
が冴えまくった。弦楽アンサンブルも素晴らしい響きを醸し出す。彼らの超テクニッ
クでは当たり前のことだが、いわゆるバロック・アンサンブルの域を越えているとい
っても良い。オペラシティの広いホールがまるでオーケストラのごとく豊かなサウン
ドで包み込まれた。それにクスマウルのソロの良く走ること。まるで一筆書きのよう
に流暢だ。それに細部にわたって音楽の喜びが満ちている。昨日のクリスマス・オラ
トリオでも独唱ソプラノに対してヴォーカルと木管のエコーが聴けたが、クスマウル
のソロに対して第1ヴァイオリンがエコーを聞かせていた。こういったあたりにバッ
ハの作曲技法が浮き彫りにされていて実に面白い。

テレマンの協奏曲ではペトリ嬢が4本のリコーダーを携えて登場。4つの楽章で4本
の楽器を使い分けるが、その音色の変化はとても美しく味わい深い。特に終楽章での
ピッコロ風リコーダーの繊細さは見事。まるで超絶コロラトゥーラのようにアンサン
ブルと融和していた。彼女のリコーダーは凄いテクニックだが、いつまでもお若く美
しい姿に見とれてしまった。

前半のクライマックスはヴィヴァルディの2つのチェロのコンチェルトとなった。J
ing嬢とファウストの2台のチェロの掛け合いの見事さもさることんがら、迫力あ
る弦楽アンサンブルとあいまってバロックとは思えぬほどシンフォニックなコンチェ
ルトとなった。通奏低音にコントラバスが加わっているためか、重心がしっかりして
いて、ドイツ的な重厚さも感じられるほど。

後半はヴァイオリン協奏曲を編曲したヴァージョンのチェンバロ・コンチェルトで始
まる。ちょうど最初のヴァイオリン協奏曲がチェンバロ協奏曲を原曲としていたのと
コントラストをなすかのようだ。チェンバロの繊細さはもとより、これを上手く引き
立てるアンサンブルが実に上手い。特に第2楽章のアダージョのチェンバロは極上も
のだった。そしてフィナーレはテレマンのターフェル・ムジーク。いままでの密度の
高さからややリラックスした雰囲気が漂い音楽がとても楽しい。3人のソリストたち
の妙技もまた楽しく、晩餐の音楽に相応しいリズムとテンポが体に心地よく響く。ア
ンコールではヘーシュの上手い日本語解説付でヘンデルのオペラとヴィヴァルディの
冬から抜粋が演奏された。特にイタリアの冬は雪ではなく雨が良く降るそうだ。ヴァ
イオリンソロに対する伴奏はその様子を示しているとか。なお他日公演ではバッハの
ヴィオラ協奏曲でクリストがソロを弾くようだが、今日きけなかったのは寂しい。