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今年はバッハ・イヤーということで沢山のバッハを聞いたが、いよいよクリスマス・
オラトリオの登場。この曲はバッハのマタイ受難曲と対をなす大作であるが、マタイ
ほどには演奏回数は多くはない。今年の日本ではマタイがあちらこちらで年中演奏さ
れたのと対照的だ。CDではルネ・ヤコブ&RIASを愛聴しているが、BSで放送
されたエリクソンの演奏も素晴らしい。今日はヴィンシャーマン&ドイツ・バッハと
いうことで楽しみにしていた。
ステージに設置された大きなクリスマス・ツリーは2階バルコニー席を超える高さで
一際目立つ。さらにオルガン中央に金色の星がつけられ、気分ははやクリスマスだ。
指揮者の前にチェンバロとオルガンを配し、周囲を古楽アンサンブルが取り囲む。後
方の段に60名ほどの合唱が並ぶが、BCJやコレギウム・ヴォカーレなどに比べる
とかなりの大編成。それゆえに言葉がやや不明瞭だったが人数が多い分ハーモニーに
奥行きが出ていたように思う。第1部から迫力あるティンパニと輝かしい管弦楽とと
もに合唱が素晴らしいバッハが開始された。
このオラトリオは受難曲同様、福音史家によるレチタティーヴォを中心に数々のアリ
アや合唱、コラールで物語が進むが、マタイ同様、ドラマにのめりこんでしまった。
こういった音楽は聴き手を音楽を超越した世界に誘ってくれるようで、それはもう素
晴らしい体験だった。もっとも今日の演奏者全体が素晴らしく、極上のバッハとなっ
たのは嬉しいい限り。特にソプラノの天羽とテノールの吉田が出色の出来栄え。バッ
ハ・ゾリステンのソリストたちも上手くて、特にコンサートマスター嬢の美しいヴァ
イオリンと歌手たちのアンサンブルが極上。全6部、ほぼ3時間に及ぶコンサートは
ひと時も耳を離せない魅力度と集中力が漲っていた。次回のバッハ・プログラムはB
CJのミサ曲ロ短調とNJPのクリスマス・オラトリオの予定。20世紀もそろそろ
あと僅かとなってしまった。