ベルリンフィルハーモニー管弦楽団Cプログラム

 2000年11月26日(日)19:00/サントリーホール
 指揮    :マリス・ヤンソンス
 ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
(プログラム)
 ウェーバー    :歌劇「オベロン」序曲
 ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調Op.99
 J.S.バッハ  :無伴奏ソナタ第1番よりプレスト(アンコール)
 −休憩−
 ドヴォルザーク  :交響曲第8番ト長調Op.88
 ドヴォルザーク  :スラヴ舞曲Op.72−7(アンコール)

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今日も凄い演奏会になってしまった。最初のオベロン序曲からBPOのアンサンブル
がフル回転の状態。ヤンソンスの棒に俊敏に反応するオケはもう唖然とするほどのテ
クニックでぐいぐいと押し捲る。オベロンって、こんなに凄い曲だったのかと驚くほ
どだ。冒頭、寸分のズレもないホルンの響きやクラリネットが特に素晴らしかった。
これだけ凄いアンサンブルを聞かされると、聴くほうとしてもその痛快さに圧倒され
てしまう。まさしく昨日のエグモント序曲に呼応するかのような幕開けとなった。

続くショスタコのヴァイオリン協奏曲も余りにも凄い演奏に驚嘆してしまった。とに
かくヒラリー・ハーン嬢のヴァイオリンが素晴らしすぎる。冒頭から彼女のヴァイオ
リンに首っ丈となるのだが、第2楽章に入ってから次第に盛り上がる。ヤンソンスB
POのアンサンブルも大きな起伏で観客を圧倒するし、ハーン嬢はそれ以上に凄いヴ
ァイオリンを聞かせる。第3楽章はもう完璧なソロとアンサンブルに身震いするほど
だったし、彼女のカデンツァの壮絶さときたら、もう絶句状態だ。内的音楽世界とい
うよりも本能的な興奮状態に駆り立てられてしまった。もう今日はこれで終わっても
おかしくないほどだ。

後半はドヴォルザークの8番。あの凄いショスタコの後にどんな演奏が可能なのかと
思わせたが、ドヴォルザークもBPOの超絶テクニックを前面に押し出すことで、ア
イデンティティを得たような演奏となった。いわゆるボヘミアン情緒といったものと
は無縁の世界だが、これほど凄いアンサンブル力を駆使した音楽は文句なしに世界一
級を堪能させてくれる。ヤンソンスの掌握力もさることながら、ベルリンフィルの自
発性を上手くベクトル合わせして、最大の効果を発揮するアンサンブルはさすがのも
のだ。アンコールのドヴォルザークはまるでヴァルトビューネのコンサートを彷彿と
させるようなノリの良さ。昨日のアバドBPOの崇高な音楽とはまた違ったスペクタ
クルさを存分に楽しめた。