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前回、ボロディンSQを聞いたのは98年10月の王子ホールで。あの時はボロディ
ン、ラフマニノフにチャイコフスキーといったプログラムで、アンコールにショスタ
コーヴィチが演奏された。今回はそのアンコールを引き継ぐかのように前半にショス
タコーヴィチが並ぶ。
第1番のSQから贅肉を削ぎ落とした響きで迫ってくる感じ。特にフィナーレの緊密
感溢れるアンサンブルに聞き入ってしまった。第8番のSQは暗く渋い音楽だ。いわ
ゆる戦争にまつわる音楽のためか、奏でられる響きは厳しい。王子ホールのデットな
特性と相まってか、ひたすら禁欲的な響きを強いられる。
後半はベートーヴェンの最も有名なカルテット。いわゆるウィーン風の生き生きとし
た精彩さをボロディンに求めるのは無理かもしれない。アンサンブルの質はトップレ
ベルからはほど遠い。前回の日本公演でも感じたが、アハロニアンの音程が微妙によ
ろしくない。カルテットの場合、ちょっとしたミスでも目立ったしまうのだ。とはい
うもののボロディンはさすがにカルテットの老舗といったところで、構造美あるベー
トーヴェンを聞かせてくれた。今年はカルテットの演奏が昨年に比べると少なくて寂
しいが、来週からはベルリンフィルの来日に乗じて、アポスSQとフィルハーモニシ
ェスSQが演奏を行う。いずれも音響の素晴らしいトッパンと紀尾井で聞けるのが嬉
しい。