NJPオーチャード・シリーズ11月

 
2000年11月17日(金)19:30/オーチャードホール
(演奏)
 指揮  :デリック・イノウエ
 ピアノ :ジャン・マルク・ルイサダ
 管弦楽 :新日本フィルハーモニー交響楽団
(プログラム)
 モーツァルト :ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」
 シューベルト :交響曲第8番 ハ長調D.944「ザ・グレイト」
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NJPの定期会員になったひとつの理由は今日のコンサートが聴きたかったため。ル
イサダのコンチェルトと大好きなシューベルトのグレイトが聞けるのが何よりの楽し
みだ。ルイサダのCDではグラナドスやショパンの室内楽版コンチェルトがお気に入
りだが、もちろんショパンのマズルカやワルツなんかも素晴らしい。しかしルイサダ
のモーツァルトとなれば、一体どんなコンチェルトなのかと興味津々。

演奏されるコンチェルトはモーツァルトのザルツブルク時代のもの。とてもシンプル
で古風な佇まいが魅力の作品だ。ピアノ・パートはやや地味な感じでむしろ管弦楽の
伸び伸びとしたアンサンブルを楽しむことができた。ルイサダの淡々としつつも味わ
い深い演奏も見事だった。ルイサダは12月にリサイタルを聞くので楽しみだ。

今日のメインはシューベルトのハ長調大交響曲。これはかつてカール・ベーム&ウィ
ーン・フィルの名演を聞いて以来、これを超える名演に接したことがない。CDでは
最近のガーディナー&ウィーンフィル/ザルツブルク・ライブが俄然素晴らしい内容
だ。しかし今日のイノウエの指揮もかなり素晴らしいものだった。冒頭のホルンから
ゆったりとしたテンポで安心して音楽に身を任せられる。次第にテンポが加速する。
引き締まったリズム感覚で快調に滑り出す音楽が実に素晴らしい。第2楽章も魅力一
杯な音楽が響く。特に終楽章は痛快な演奏だった。しかしオーケストラの響きは今ひ
とつ充実度に不足しているように感じた。つい先ごろのウィーンフィルの圧倒するア
ンサンブルが印象に残っているためかも知れないが、いつものNJPと比べても、今
一歩踏み込みが不足しているようにも感じる。とはいうもののイノウエのオーケスト
ラを掌握しきった指揮が実に痛快だった。