小澤征爾指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 2000年11月12日(日)18:00/ザ・シンフォニーホール
(プログラム)
 ブラームス:交響曲第4番 ホ短調op.98
 −休憩−
 ブラームス:交響曲第1番 ハ短調op.68
(アンコール)
 J.シュトラウスU「ウィーン気質」

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冒頭、二日ほど前に起きたオーストリア・アルプスにおける大惨事に対しG線上のア
リアが演奏され、全員起立で黙祷が捧げられた。神妙な雰囲気のうちにブラームス4
番が開始された為か、第1楽章から悲壮感が漂う。しかしさすがに小澤&ウィーンフ
ィルの演奏は熱い情熱に包まれてゆく。いまさらウィーンフィルの素晴らしい音色や
ウィーンらしさについて云々することもないが、小澤の指揮するウィーンフィルの響
きは実に充実していて手ごたえも十分。適度の粘りがあってさらっとした切れ味もあ
る。第1楽章のうねるような情熱は全て小澤の指揮に統率されている。凄い求心力だ。
第2楽章の弦楽アンサンブルの深みも素晴らしいし、第3楽章のややメリハリが強い
演奏もコントラストがあってパンチが効いている。第4楽章の情熱は第1楽章と同様
に深い悲哀を湛えるが、後半部での加速で一気に興奮の高まりに導かれる。所々随分
と響かせ過ぎかなとも思ったが、テンポの流れの良さが重過ぎず軽すぎずといった絶
妙のバランスを作り出していたと思う。

後半に交響曲1番を持ってきたプログラミングは、やや暗いイメージの4番に対して
1番のフィナーレで暗から明に転じることを目論んでいるのは明らかだ。この当たり
前のことが実にリーズナブルに極自然に描かれる。1楽章の充実したアンサンブルか
ら終楽章の豪快なクライマックスまで全く耳を放さない集中力は見事だった。今日は
2階席最後列で聴いたが、シンフォニーホールはサントリーに比べてステージまでの
距離が近くてサウンドもエネルギッシュに湧き上がってくる。特に弦・管・打のバラ
ンスも素晴らしく聞こえた。今日は4番1番という重量級のプロだったが、重さを全
く感じさせない、むしろ爽快感に溢れた素晴らしいコンサートとなった。