ヨーロッパ室内管弦楽団・日本公演 |
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2000年10月31日(火)19時/サントリーホール (演奏) 指揮 :エマニュエル・クリヴィヌ ピアノ :マルタ・アルゲリッチ 管弦楽 :ヨーロッパ室内管弦楽団 (プログラム) R.シュトラウス:メタモルフォーゼン(変容) シューマン :ピアノ協奏曲 イ短調 op.54 シューマン :「子供の情景」より第1曲(アンコール) −休憩− シューマン :交響曲第2番 ハ長調 op.61 モーツァルト :交響曲第33番第1楽章(アンコール) |
今年2月に予定されていたアルゲリッチのリサイタルは苦労してチケットをゲッ
トしたものの、あっさりとキャンセルになってしまった。今回の公演もまさかキ
ャンセルしないだろうかと心配したが、無事に聴くことが出来きた。彼女の弾く
コンチェルトを最良のコンディションで聴こうと、2階最前列のど真ん中をゲッ
トできた。
最初はR.シュトラウスから始るが、このオーケストラの響きは何と独特なもの
だろうかというのが第一印象。まるで羽のように軽く、それでいて音が痩せてい
ない。絹がなびくようなしなやかさを感じるし、ピアニッシモの美しさは格別だ
った。クリヴィヌの描くR.シュトラウスは大きな高揚といったものは見せなか
ったが、透明で澄み切ったアンサンブルで魅了する。途中、かなり長いパウゼで
もって一気に集中力を高めるあたりに、彼の描く音楽の壷があるような気がした。
静かな音楽の流れが単調なものではなく、実に味わいと静かな起伏に富んでいた。
アルゲリッチとのコンチェルトでもオーケストラは透明さを保っていて、特に木
管の長く美しいパッセージが印象的だった。ここではピアノもクラリネットの語
りを聞き入るようで、続くアルゲリッチのパッセージが活きてくる。彼女のピア
ノはとても明快かつ適度な力感のバランスが素晴らしい。シューマンのこのコン
チェルトは夢のような曲だが、彼らによる演奏はまさに夢の如く移ろう音色の変
化など、聴きこむほどに多彩な演奏に驚いた。
後半のシューマン2番のシンフォニーは面白い演奏だった。アーノンクール風に
弾みのあるサウンドは古楽風で躍動を感じる。やはり羽のように軽いアンサンブ
ルが魅力で、シューマンにしてはソフトすぎるような気もした。この曲でも透明
感は抜群であるが、透けて見える見とおしの良さがシューマンのドイツ音楽的要
素を感じさせない。このあたりに好き嫌いが出ると思われる。おそらくベートー
ヴェンのシンフォニーであれば面白いアプローチできっと素晴らしいとは思うが、
どうもシューマンとしては音楽の充実感が不足しているように感じる。だだしこ
のように感じたのは第3楽章までで、終楽章は一転して力感溢れるアンサンブル
と充実感で大いに盛り上がった。全体に小編成であることから来る機敏さが何よ
りも素晴らしいし、音の美しさへのアプローチが特に印象に残った。