N響名曲シリーズ |
アシュケナージの指揮を聞いたのはチェコフィルとベルリン・ドイツ響の二回だ
け。チェコフィルとはドヴォルザーク8番という名曲で、ベルリン・ドイツ響と
はドビュッシーの交響詩ペリメリというプログラムだった。いずれもあまり芳し
くない印象を受けたが、今日のN響はなかなか良かった。
前半のラヴェルではN響のサウンドがとても大らかにゆったりと響くのが心地良
かった。色彩感の鮮やかさも格別で、ピアノ連弾に作曲されたということからピ
アニスト・アシュケナージが描くイメージがそのままオーケストラとして聴ける
のが面白い。こういったメルヘンの音楽には安らぎがあって良いなぁと思う。
後半はプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」ならぬ「シンデレ
ラ」から抜粋。このバレエ音楽は滅多に聴くチャンスがないが、ロメオとジュリ
エットに引けを取らぬ素晴らしさだ。物語は全くのお伽話ではあるが、その音楽
がとても魅力があってドラマチック。アシュケナージはクリーブランド管弦楽団
とこの曲を録音していることもあってか、全体に見とおしの良い音楽を作る。と
かくバレエの抜粋といえば断片的な印象を受けるが、今日の抜粋の構成はひとつ
の交響詩的なまとまりがあって十分に聴き応えがあった。各パートのサウンドの
魅力が十分に発揮され、時計の時刻を告げる木琴の刻みが特に印象的だった。プ
ロコフィエフの作曲の上手さが十分に聞き取れるくらいにパートを描き分けた指
揮が素晴らしい。それにしても今日のサントリーの入りは少なく6割程度だった。