●グァルネリ弦楽四重奏団
 2000年10月26日(木)19時/カザルスホール
(演奏)
 アーノルド・スタインハート(ヴァイオリン)
 ジョン・ダリー(ヴァイオリン)
 マイケル・トゥリー(ヴィオラ)
 ピーター・ワイリー(チェロ)
(プログラム)
 バルトーク  :弦楽四重奏曲 第3番
 ブラームス  :弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 作品67
 −休憩−
 ラヴェル   :弦楽四重奏曲 へ長調
(アンコール)
 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第1番第2楽章
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グァルネリとオリオンの二つのカルテットによるメンデルスゾーン弦楽八重奏曲
ARABESQUE RECORDINGS
Z 6714

10月に入ってからストリング・カルテットは今日で3回目となる。有名なグァ
ルネリとなっては期待が高まるが、最初のバルトークの素晴らしさに圧倒されて
しまった。バルトークの3番は抒情といったものを一切拒否しているが、グァル
ネリの演奏は圧倒するといっても威圧感を感じるものではなく、バルトークが素
直に吸収できるような包容力に満ちている。強いて言えばベートーヴェンの構築
美にもあい通じるものがあるように感じた。彼ら4つの楽器が奏でる不協和音の
連続は切れ味が鋭いというよりも、実に緻密に進行するポリフォニーの如く大き
な構成美を見せる。シンプルな音の構造に気迫に満ちた緊張を込める演奏に目が
覚めた。第1ヴァイオリンの音程がときに上ずり加減となることもあったが、細
部から全体の構成において片時も耳を放せない演奏だった。

拍手のあとバルトークの余韻を残したままブラームスに突入した。これもまるで
バルトークの響きをそのままに、和声の織り成す音響美がエネルギッシュに展開
する。ブラームスの渋さとか抒情というよりも機敏なアンサンブルが噛合う醍醐
味を大いに味わえた。

後半のラヴェルは今日の圧巻。さすがグァルネリ・カルテットの音は美しく音量
も大きい。特にチェロの厚味のある音は魅力的だ。ラヴェルのカルテットは今ま
で沢山いろんな演奏を聞いてきたが、彼らのアプローチは前半のバルトークとは
異なるものの、やはりその根底には強固なアンサンブルを基本とした緻密さを感
じる。ラヴェルの多彩な音色はもちろんのこと、第2楽章のピチカートの響きの
豊かさは格別。終楽章の盛り上がりはオーケストラのそれを感じさせるほどシン
フォニックですらあった。今日の演奏は東京SQ,ウィーンSQに引き続き十分
満足できた。