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コルボ&ローザンヌ声楽アンサンブル |
ついに今年10回目のマタイを聴くことになった。しかも嬉しいことにコルボ&
ローザンヌによるもの。実はマタイをCDで聞くようになったのはコルボ&ロー
ザンヌが1982年に録音したエラート盤が始り。ということもあってか、この
録音の素晴らしさからコルボのマタイを聞きたいと思っていた。もちろんヘレヴ
ェヘやエリクソンのマタイなんかも最高だが、コルボ盤に愛着を感じる。
ステージレイアウトはオーソドックスな2部オーケストラとなるが、2台のオル
ガンが左右に配置され、その間でエヴァンゲリストが歌う。チェンバロは用いな
いで、リュートが登場した。概ね今月始めのイングリッシュ・コンサートと同様、
合唱のメンバーがソリスト以外のソロを兼ねる。
やはりコルボの語り口はCDで聞かれたのと同じく、音楽の美しさが格別だ。単
に美しいというよりはどこか高貴さが漂い、すっきりとしている。それに合唱が
とても若く、実にフレッシュで活気に満ちている。もっとも合唱はトップレベル
には及ばないとしても、マタイを力強く歌う様は本当に素晴らしいと思った。
ソリストではレヘティプーがとても若い歌手で、上手いエヴァンゲリストを聴か
せてくれる。フィンクのイエスは貫禄と威厳があって感動的。言葉から発せられ
る響きがある種の流れを作っているようで、イエスの言葉が魂に響くようだ。
管弦楽は古楽器による演奏で、管楽器の出番では椅子から立って演奏していた。
やはりダ・ガンバやヴァイオリン、リュートのソロが歌手達の歌と織り成す美し
さは息を呑むほどだった。特に第57番のバス・アリアはリュートの調べととも
に心が引き締まる美しさ。
さて今日の演奏では第1部が終わってからすぐに第2部に突入した。どんどん音
楽が進むものだから、このまま休憩無しかと思っていたら、有名なアルト・アリ
アの次ぎの40番のコラールで休憩となった。すなわち後半は第2部も押し迫っ
たイエスをピラトに引き渡す場面から開始される。そのためか前半は音楽の比重
が高く、後半にドラマの核心部が展開するといった具合だ。こういったアレンジ
は珍しいが、後半部でのドラマにスピード感を感じた。
コルボのマタイは緩急がかなりはっきりとしている。コラールで意外と思うほど
早いテンポだったり、アリアでかなりスピードを落とすなど。しかしドラマに即
して実に自然に流れて行く。合唱の歌わせ方も自然な起伏があり、マタイの音楽
が自然と体に入ってくる感じだ。しかし今日のマタイはかなりヘビー仕立てで手
応えがありすぎて、少し疲れてしまった。それにしても今日のサントリーは6割
くらいの入りで空席が目立ちすぎる感じだった。
さて今年はもうバッハのマタイの予定はないので、結局10本で終わりとなるが、
色んなマタイが聴けて満足といったところ。今年のバッハはミサロ短調を1回、
クリスマス・オラトリオを2回残すばかりとなった。