●ミュンヘン・デュオ
ベゴーニャ・ウリアルテ&カール=ヘルマン・ムロンゴヴィウス
2000年10月19日(木)19:00/カザルスホール
(プルグラム)
ブラームス :2台のピアノのためのハイドンの主題による変奏曲
リスト :2台のピアノのための「ドン・ジョバンニ」の回想
−休憩−
メンデルスゾーン:八重奏曲 変ホ長調 作品20
(メンデルスゾーンによる4手のピアノ編曲)
(アンコール)
シューマン :シュトゥーゲ・カノン
ストラヴィンスキ:パガニーニ・ヴァリエーション
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1999年3月にミュンヘン・デュオを聴いて、その卓越した演奏の素晴らしさ
に圧倒された。当然、今日のリサイタルを外すわけにはいかない。会場は結構空
席が目立つ。どうして満席にならないのかと不思議に思うが、ともかく今日のリ
サイタルも俄然素晴らしいものとなった。
ブラームスのハイドンの主題によるヴァリエーションはオーケストラでは良く聴
くものの、2台のピアノでの演奏は初めて聞いた。2台のピアノが並ぶとさすが
に壮観。それに彼らのデュオの風格が加わることで、とてもスケールの大きな演
奏で、ゆとりといったものまで備わった懐の深さを感じた。ピアノタッチの絶妙
さもさることながら、ブラームスの滋味がしみじみと漂う。それでいて鋭いアタ
ックが力強いブラームスに仕立てていた。
続くリストはさらに豪快な演奏で、2台のピアノが共鳴しあっていた。冒頭の深
刻なパッセージを経て、有名な二重唱の旋律ではグランドオペラの世界となる。
後半部の変奏におけるピアニズムの醍醐味に唖然と聞き入ってしまった。
後半はメンデルスゾーンの弦楽八重奏を作曲者自身がピアノに編曲したもの。プ
ログラム解説によれば、この編曲版は出版されておらず作品目録にも登録されて
いないそうだ。それだけにCDや演奏会で聴くこともまず稀で、今日の演奏はと
ても貴重となる。まずこの曲は音楽が素晴らしすぎる。16歳のメンデルスゾー
ンの天才ぶりを大いに実感できるが、ミュヘン・デュオはこの作品の魅力を余す
ことなく楽しませてくれた。ムロンゴヴィウスがヴァイオリン4台のパートを、
ウリアルテがヴィオラ2台+チェロ2台のパートを弾く。何とも節度あるシンフ
ォニックな響きであることか。しかも微妙な繊細さがあるし、ロマンの香りが素
晴らしい。アンコールではパガニーニ・ヴァリエーションが圧巻で、二人のダイ
ナミック、華麗、鮮烈さを存分に聴くことができた。