●イングリッシュ・コンサート
 J.S.バッハ『マタイ受難曲』BWV244
 2000年10月8日(日)16:00/東京オペラシティコンサートホール
(演奏)
 指揮:トレヴァー・ピノック
 イングリッシュ・コンサートおよび合唱団
 TOKYO FM少年合唱団
 福音史家:ハワード・クルック
 イエス :ライムント・ノルテ
 ソプラノ:エリザベス・クラグ、エマ・ブレイン=ギャボット・ゴム、
      ニコラ・ジェンキン、メレイズ・シーリン
 アルト :フランシス・バーン、フランシス・ジェラード、ダイアナ・モア、
      デボラ・マイルズ・ジョンソン、スザナ・スパイサー
 テノール:ロバート・ジョンストン、ゲライント・ロバーツ
 バス  :マイケル・バンディ、コリン・キャンベル、
      アンドリュー・フォスター、ダニエル・ジョーダン、
      ブリンドリー・シェラット
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昨年12月のピノックと仲間達というコンサートで今日のマタイがあることを知った。とにかくピノックのチェンバロやポジャーのヴァイオリンが素晴らしかったので、このマタイは外せないと思った。そして今日、今年9回目のマタイとなったが、やはりこの音楽は今回も感動を与えてくれた。

座席は3列目。1,2列が外されステージが拡張されていたので最前列で聴くことになる。ちょうど目の前にエヴァンゲリストがいる。間を空けて右がイエス。ピノックはその右、チェンバロに向って立って指揮を行う。合唱はやや大人数で各声部のソリストも合唱のメンバーが交代で担当する。そのため合唱の位置からステージ前に移動することになるが、イエスとエヴァンゲリストの間を空けているのはそのためだ。

第1部、比較的輪郭のしっかりとした演奏が続く。古楽の響きも素晴らしく、ピノックも的確に音楽を進める。合唱の場面ではエヴァンゲリストも咽喉ならしに一緒に歌っていた。ソリストたちは概ね水準以上のレベルで、マタイに十分に没頭させてくれる。特に合唱の力強さは事のほか素晴らしい。

第2部からは受難の物語の核心に向うため、自ずから音楽と物語に惹きこまれる。ピノックの音楽作りも次第にダイナミックになってきた。有名なアルトのアリアではポジャーの美しいヴァイオリンとのデュオが聞き物だったし、ヴィオラ・ダ・ガンバなど古楽器の躍動感溢れる音楽が素晴らしい。時おりバロック・コンチェルトとかと思うほどに音楽が生彩を放っていた。合唱ではコラールの厳粛さに対して、群集を歌う場面では音楽的興奮すら覚えた。概ねピノックのマタイは力強く淡々としている印象を受けたが、後半、特に65番アリアで感動のピークを迎えた。やはりマタイは色んな演奏があるが、最後には大きな感動が待っている。これがバッハの普遍性というものだろうか。いずれにしてもイングリッシュ・コンサートのマタイはとても良かった。