●アヴィラム・ライヒェルト/ピアノ・リサイタル
2000年10月6日(金)19:00/紀尾井ホール
(プログラム)
スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ロ短調L.33
ピアノ・ソナタ ニ長調L.14
ピアノ・ソナタ ハ長調L.457
ピアノ・ソナタ ハ長調L.104
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」
−休憩−
シューベルト :4つの即興曲 作品90 D.899
リスト :メフィスト・ワルツ 第1番
(アンコール)
ショパン :革命
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イスラエル出身のライヒェルトは98年東京の夏音楽祭で始めて聴いた。あの時
は今日と同じ紀尾井ホールの昼間の公演だったと記憶している。あの時の衝撃的
な凄さが忘れられず、今回のリサイタルも聴くこととした。
プログラムは前回に比べやや地味ながらも、この2年間でさらに磨きが掛かった
のと同時に、内面性を重視した演奏を指向しているように感じられた。特にスカ
ルラッティの決して派手なピアニズムではなしに、落ち着いた深みとでもいうよ
うな風格が備わっている。続くベートーヴェンのワルトシュタイン。これもやは
控え気味と思うほどの落ち着きを見せ、内に秘めた情熱が見え隠れするような節
度あるベートーヴェン演奏。しかもとてもフレッシュで内面から躍動させるよう
な魅力に満ちていた。
後半はシューベルトの即興曲。これはさらに磨きが掛かり、もう宝石のような美
しさだった。軽やかなピアノタッチから迫力ある強靭な畳み掛けの対比も素晴ら
しい。決して重くならない音楽はとても逞しかった。さてリストでは前回の来日
公演でびっくりさせてくれたテクニックが彷彿としていて、思わず息を呑む。機
敏で豪快なピアニズムに暫し唖然とした。アンコールはショパンを含めて2曲が
演奏された。