●竹澤恭子&シュテファン・ヴラダー/デュオ・リサイタル
「エポックに聴くヴァイオリンとピアノの名曲」
2000年10月3日(火)19:00/東京オペラシティコンサートホール
(演奏)
竹澤恭子(ヴァイオリン)
シュテファン・ヴラダー(ピアノ)
(プログラム)
ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント
ベートーヴェン :ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調op.30−2
−休憩−
J.S.バッハ :シャコンヌ〜無伴奏ヴァイオリンパルティータ2番より
武満 徹 :悲歌
R.シュトラウス :ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調op.18
(アンコール)
ワーグナー :ロマンス
ガーシュイン :プレリュード
クライスラー :愛の悲しみ
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先月の初めチョン・ミュンフンと素晴らしいコンチェルトを聴かせた竹澤が登場
するとあっては聞き逃せない。ピアノは今年の2月にコンセルトヘボウと共演し
たヴラダーが弾く。プログラムの多彩さは目も眩むばかりであるが、今日は2時
間半近くに及ぶ充実したリサイタルとなった。
ストラヴィンスキーでは目まぐるしく変化するパッセージと音色の鮮やかさに釘
付けとなる。激しいリズムかと思えば、突如として抒情豊かな音楽に移り行く魅
力的なディヴェルティメントであるが、竹澤&ヴラダーのデュオはとても自然に
ダイナミックかつ美しいストラヴィンスキーを展開してゆく。最初の一曲目でク
ライマックスを迎えてしまった。続くベートーヴェンのパッションに満ちたソナ
タ。クロイツェルに一歩手前のソナタと言われているそうだが、構築美とロマン
の対を堪能させてくれるような素晴らしいデュオだ。前半だけで通常のリサイタ
ルの充実さに匹敵するほどの手応えがあった。
後半はバッハのシャコンヌで始る。これも何と素晴らしい演奏なのだろうか。バ
ッハだからという力みなどは一切なくて、演奏という次元の奥にバッハの超越性
が見えてくるような演奏だ。しかし今日はこれで終わっても良いくらいに高揚し
てしまっている。この次ぎに武満の悲歌がデュオで演奏された。バッハの崇高さ
から転じて、武満の音楽はシンプルでも多彩さに満ちている。とても短い音楽な
がらも、その集中力にのめり込む。
最後のR.シュトラウスは圧巻中の圧巻。よくもここまで凄い演奏が可能なもの
だと驚いてしまった。寸分の無駄もなく、音楽が最適なバランスで奏でられる。
ロマン的という面ではストラヴィンスキーとも共通性を見せるし、とにかくたっ
ぷりと歌われる音楽が美しすぎる。このソナタではピアノ・パートの雄弁さも特
徴となるが、竹澤とヴラダーのデュオがかなりヒートアップした演奏となった。
今日は予感した通りの名演奏を聴けてとても嬉しかった。