●日本の作曲・21世紀へのあゆみ/新世代の登場
2000年9月29日(金)19:00/紀尾井ホール
(プログラム)
三善 晃:フルート、セロとピアノのためのソナタ 1955
フルート:木ノ脇道元 チェロ:植木昭雄 ピアノ:稲垣 聡
諸井 誠:室内音楽第3番 1951
フルート:斎藤和志 オーボエ:柴山 洋
クラリネット:西澤春代 ホルン:丸山 勉
ファゴット:井上俊次 ヴィオラ:守山ひかる 指揮:板倉康明
−休憩−
松平頼暁:ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための変奏曲 1957
ヴァイオリン:野口千代光 チェロ:植木昭雄 ピアノ:稲垣 聡
松村偵三:クリプトガム 1958
フルート:斎藤和志 オーボエ:柴山洋 クラリネット:西澤春代
ホルン:丸山勉 トランペット:高橋敦 トロンボーン:桑田晃
打楽器:松倉利之 和田光世 クラヴィオリン:小島策朗
ミュージカル・ソー:荻原誠 ピアノ:松永加也子
ヴァイオリン:城戸喜代 チェロ:山本裕康
指揮:板倉康明
今日は虎ノ門に居たのでJTアートホールでの「フィレンツェの思い出」を聴き
たくなった。電話で確認したところ6時から10枚ほど当日券が出るという。そ
こで5:40にホールに行ってみると、当日券待ちの方はちょうど10名に達し
たばかりと係員から教えられる。何と残念。一歩出足が遅かったか。他に聞きた
いコンサートはほとんど無いが、とりあえず紀尾井へ向かうことにした。
6:10頃、紀尾井に到着。ここの当日券はたっぷりと余っているようだ。とい
っても全席自由席の2500円。なぜか余り人気がなさそうなのが気になるが、
プログラムは日本の作曲家をテーマにしたもの。そういえば日本の作曲家の音楽
は最近、ほとんど聴いていない。かつてはN響定期で毎年3月はお決まりのよう
に聞かされていたのが懐かしい。
三善晃の室内楽は完全なコンテンポラリではなくて、実体を把握しやすくて耳に
も心地良い。音の実在感といったような響きが印象に残る。続く諸井の室内音楽
は管楽器を主体とした作品で、対位法によるフーガに焦点が当てられている。弦
はヴィオラ1本だけで管楽器とのバランス感覚も面白い。
後半からはコンテンポラリを強く感じさせる作品が続く。松平のヴァイオリン、
チェロ、ピアノのためのヴァリエーションはセリーを主体に、ウェーベルンの作
風に似ている。音は余り持続せずに、短い音の響きが各楽器から放たれるが、こ
れらは空間を飛び交って、全体で音のテクスチャーが楽しめる。単音で響く音は
何とも美しくてエネルギーに富んでいることかと驚いた。
松平のクリプトガム(隠花植物)は今日のプログラムで最も編成が大きくて室内
オーケストラ版といってもおかしくはない。後方に各種打楽器群にいろんな楽器
が加わる。特にクラヴィオリンという鍵盤楽器にスピーカを接続したような電子
楽器はユニークな音色を醸し出す。他にミュージカル・ソーといって、のこぎり
のような長細い板を弦楽器の弓でこすることで、ハーモニックスの掛かったよう
な響きが出るのも面白い。木管に加えて金管群の充実したサウンドが迫力で、ク
リプトガムという前衛音楽に聞き入ってしまった。ちなみにこの作品が1950
年代の欧米に前衛音楽に拍車をかけたとか。いずれにしても今日は1950年代
の4作品を聴ける貴重な体験だった。