●ミラノ・スカラ座特別演奏会/ヴェルディ『レクイエム』
2000年9月23日(土)19:00/NHKホール
指揮 :リッカルド・ムーティ
合唱指揮:ロベルト・ガッピアーニ
ソプラノ :ミリアム・ガウチ
メゾ・ソプラノ:ヴィオレッタ・ウルマーナ
テノール :ファビオ・サルトーリ
バス :ロベルト・スカンディウッツィ
ミラノ・スカラ座管弦楽団/合唱団
先ほどのクレルヴォ交響曲とレクイエムの間は少し時間が空くので自宅に戻り、
再びコンサート会場へ。ここで沢山の知人の方にお会いしたが、新国のトスカか
ら来られた方も多いようだ。ヴェルディのレクイエムといえばオペラ来日公演で
良く演奏されるが、強烈に印象的だったのはチェリビダッケ&ミュンヘンフィル
だ。ガスタイクを揺るがさんばかりの迫力は今でも忘れられない。そんなドイツ
勢の演奏に対して、今日のイタリア勢も素晴らしい演奏だった。
C3列の座席にはステージから容赦無く強烈なエネルギーが押し寄せてくる。特
に合唱は衝立壁のように広がっているため、その迫力たるや凄まじい。加えて木
目の細かなハーモニーも美しく、敬虔なレクイエムを十分に感じさせてくれた。
そういえばヨーロッパではコンサート会場ですらレクイエムの時には手を組んで
祈りながら聴かれる方が多い。もちろん教会であればなおさら敬虔な気分は盛り
上がる。今日は、スカラという豪華な看板を掲げながらも、レクイエム本来の意
味がひしひしと伝わってきた。
もっともヴェルディのレクイエムはオペラティックさを本領とするが、そういっ
た聴き所も十分に満足させてくれる。歌手と合唱の存在感も素晴らしかった。ソ
プラノのガウチはムーティの「メフィストフェレ」で素晴らしかっただけに期待
していた。今日の彼女は本当に感動的だった。ウルマーナは5月のヨーロッパ・
コンサートぶりに聴くことができたが、やはり彼女も素晴らしい。サッバティー
ニは風邪でキャンセルしたが、代わりに登場したサルトーリも申し分なく良かっ
たし、スカンディウッツィも迫力あるバスを聴かせた。こんな歌手の出来映えが
どうだこうだという書くのははっきり言って、今日のレクイエムには余り意味が
ない。それほどにムーティ&スカラが描くレクイエムは包容力があって、全てを
ダイナミックな祈りの世界へと導くと感じた。空気をも支配するのではと思うほ
どの集中力に満ちていたし、楽曲間の休止ですら息を凝らして聴く。こんな時に
咳払いは止めてほしいとすら思えてくる。
さらに贅沢を言わせてもらえば、これを東京カテドラルなんかの教会で聞きたい
ということ。唯一、チェリビダッケ&MPOの方が圧倒的なサウンドに聞えた。
これは明かにホールの違いによる。NHKホールでは「怒りの日」などの響きが
どうも薄くなってしまう。しかし今日の出来映えは、こんな不満も吹き飛ばすく
らい良かった。