●ヨーゼフ・エトヴェシュ/ギター・リサイタル
2000年9月20日(水)19:00/東京オペラシティ近江楽堂
(プログラム)
ヨハン・セバスティアン・バッハ
リュート組曲イ短調BWV997
リュート組曲ホ長調BWV1006a
−休憩−
ゴルトベルク変奏曲(J.エトヴェシュ編曲ギター独奏版)
Aria, var.1,2,3,4,5,6,7,9,13,18,26,28,30,Aria
(アンコール)
ショパン :ノクターン作品9の2
マズルカ
今年21回目に聴くバッハ・プログラムはギター版のゴルトベルク変奏曲。ハン
ガリー出身のヨーゼフ・エトヴェシュはリスト音楽院で学ばれ今回初来日だそう
だ。何でもゴルトベルクの編曲の構想は1987年まで遡るらしい。当初2台の
ギター版を考えたが、パートナーがいないため独奏版を編曲したとのこと。なお
編曲はパリ国立図書館所蔵のバッハ初版譜に基づいているそうだ。
プログラムはゴルトベルク全曲ではなく、前半にリュート組曲を二つ。後半にゴ
ルトベルクの抜粋で構成されていた。近江楽堂というアットホームな雰囲気の中
で、最初にエトヴェシュの挨拶があり、リュートが演奏された。リュート組曲を
ギターで演奏することは良くあることで、とても素直にバッハが響き渡る。リュ
ートほどではないがデリケートなニュアンスがストレートに伝わってくる感じだ。
一つ目の組曲が終わった時点でエトヴェシュのコメント・・・とても暑いので少
し待ってくださいと、タキシードの上着を楽屋へ。そういえば近江楽堂は演奏中
は冷房が止められる。何時も思うことは夏場は冷房が止まるので暑くて息苦しい
こと。おそらくエトヴェシュは演奏に熱中するためかなり暑いものと察しする。
2つ目のリュートはとても有名な作品で、軽快なプレリュードがとても素晴らし
かった。
後半のゴルトベルクはさすがに良く練られた編曲で、あのゴルトベルクの味わい
深い世界がギターで再現している。もっともチェンバロの音の広がりや多彩さを
ギター1本で表現するのは無理があるが、バッハの真髄となる音楽はギターでも
普遍を感じさせる。トリルを上手く入れたり、音の連なりで声部を上手く浮き上
がらせる当たりは見事。インテンポからルバート気味に呼吸を整えて、全体にゴ
ルトベルクの響きが上手く作られていた。途中、演奏ミスが連続することもあり、
演奏はかなり難しい様子。というよりも暑さで一瞬に気の緩みも見られ、やや集
中力が途切れたのは残念だ。しかし後半は持ちなおして多種多様の変奏を経てバ
ッハの素晴らしさを堪能できた。
アンコールはショパンのノクターンが演奏された。つづいて会場にリクエストを
聞いてマズルカまで演奏されるというサービス振り。何故かショパンのほうが乗
りの良さがあって、技巧といい、音楽性といい素晴らしい演奏だった。