●新日本フィルハーモニー交響楽団/トリフォニー・シリーズ
 2000年9月15日(金)14:30/すみだトリフォニー・ホール
 指揮・演出:井上道義

マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」
 トゥリッドゥ :ニコラ・マルティヌッチ
 サントゥッツァ:佐藤元子
 アルフィオ  :稲垣俊也
 ルチア    :与田朝子
 ローラ    :杉野麻美
 合唱     :栗友会合唱団
 合唱指導   :栗山文昭
 
レオンカヴァッロ:歌劇「道化師」
 カニオ    :ニコラ・マルティヌッチ
 ネッダ    :タマーラ・ジャヴァシュヴィリ
 トニオ    :松本 進
 ペッペ    :村上敏明
 シルヴィオ  :細岡雅哉
 村人     :谷川佳幸、山下浩司
 合唱     :栗友会合唱団
 合唱指導   :栗山文昭
 児童合唱   :TOKYO FM少年合唱団
 合唱指導   :太刀川悦代、米屋恵子


トリフォニーでコンサート形式のオペラを聴くのは若杉&NJPの「ヘンゼルと
グレーテル」以来のこと。今日は特に「カヴァレリア」と「道化師」という定番
オペラという演目、マルティヌッチが歌うということで絶対に見逃せない公演だ。

オーケストラの後方の段とオルガン・バルコニーのラインが舞台となる。オルガ
ンに多少のイラストを施した布を被せただけのシンプルなセットながら、今月始
めの東京シティフィル「ラインの黄金」と同様、想像力豊かなオペラが展開した。
全体を通してオーケストラの演奏がとにかく素晴らしい。井上の指揮もカヴァレ
リア、道化師といったオペラを一気に描くように聴くものを惹きつけて放さない。

オペラハウスで聞くオーケストラの響きよりも魅力的かも知れないと感じた。
歌手ではマルティヌッチが二つのオペラで、彼の魅力を存分に発揮したし、キャ
ストのひとりひとりが個性的だったのが素晴らしい。前半のマスカーニで普通の
コンサートくらいのヴォリュームと満足感であるが、これに後半のパリアッチが
続く。前半を聞く限り、オーケストラ・コンサートとしての魅力も感じられるほ
ど管弦楽の充実が印象的だ。これに負けない歌手たちも素晴らしい。

後半は前半をさらに上回るほどの集中力でオペラを見せてくれた。オルガン・バ
ルコニ−のライン右側に簡単なカーテンを設けて、ここが劇中劇のステージとな
り、左側の観衆との対比が行われる。トリフォニーのとても狭い空間を有効に活
用しつつ、緊迫したドラマがとてもリアルに見えた。とにかくジャヴァシュヴィ
リとマルティヌッチの最後の幕切れには圧倒されてしまった。前半後半ともに合
唱も素晴らしく、特にドラマを自然に演じていたのは印象的だった。単なるコン
サート形式だと合唱は後方に座ったままというのが多いが、コンサート・オペラ
形式ともなれば、ドラマの進行に従って合唱も動かすところにオペラを動的とす
るメリットが生まれていたようだ。今後、井上&NJPでこうした趣向で珍しい
オペラをやっていくというのだから大いに期待してしまう。