●鈴木&読響定期『マタイ受難曲』
2000年9月9日(土)19:00/サントリーホール
(演奏)
鈴木雅明(指揮)
ゲルト・テュルク(福音書記&テノール)
多田羅迪夫(イエス)
釜洞祐子(ソプラノ)
白土理香(アルト)
浦野智行(バリトン)
合唱 :バッハ・コレギウム・ジャパン
東京芸術大学声楽科有志
合唱指揮:大谷研ニ
少年合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:長谷川冴子
管弦楽 :読売日本交響楽団(プログラム)
J.S.バッハ :マタイ受難曲(メンデルスゾーン編曲1841年版)
今年8回目に聴くマタイ受難曲はメンデルスゾーン編曲というとても珍しいもの。
なんでもロンドンの図書館にある彼の楽譜が今日演奏されるというのだから貴重
だ。始めての蘇演では大幅なカットが成されているとのことだが、1841年版
ではカットの一部が復活したらしい。それでも1時間近く短縮されているという。
実際、今日の演奏では第1部が55分。第2部が60分だったから、通常のマタ
イというイメージよりも、淡々と流れるようなドラマ性を感じてしまった。やは
りコラール部分が少なかったためか、厳粛で深遠なマタイというイメージは薄れ
る。しかしながら、アリアやコラールが減った部分、コアとなる楽曲のひとつひ
とつのインパクト度は増したようにも感じた。まずオーケストラと合唱が大編成となり、普段聴くような古楽アンサンブル、少
数精鋭の合唱とは趣きを異にする。その分ハーモニーの厚味がマタイ受難曲の壮
大感を増しているようでもあり、サントリーのあの大オルガンが鳴り響くことで、
迫力あるマタイに仕上がっていた。特にメンデルスゾーン版では62番コラール
が無伴奏で歌われたが、これは素晴らしいアイデアだと感じた。透明なハーモニーがより敬虔さを増している。ところが63番のエヴァンゲリストの下りでは通
奏低音が弦楽アンサンブルに置きかえられているが、ここは通奏低音のほうが緊
迫感があると思う。個々にはこのような細かな賛否両論があるかと思うが、概ね
マタイの啓蒙を目的としたメンデルスゾーン版もまぎれもなく、マタイであり受
難の物語を体験できた。オルガンが鳴った時はつい教会の響きを思い出した。や
はりこのメンデルゾーン版もザンクト・フローリアンなどの壮大な伽藍で聴いて
みたいと・・・