東京シティ・フィル『ラインの黄金』
●オーケストラル・オペラ
ワーグナー『ラインの黄金』
2000年9月2日(土)15:00/東京文化会館
指揮:飯守泰次郎
演出:高島 勲
ヴィジュアル・アドヴァイザー:ヘニング・フォン・ギールケ
(キャスト)
ヴォータン :勝部 太
ドンナー :大島幾雄
フロー :成田勝美
ローゲ :近藤政伸
アルベリヒ :島村武男
ミーメ :松浦 健
ファーゾルト :長谷川 顕
ファーフナー :高橋啓三
フリッカ :小山由美
フライア :岩井理花
エルダ :竹本節子
ヴォークリンデ :羽根田宏子
ヴェルグンデ :田中三佐代
フロースヒルデ :手嶋眞佐子
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ステージはオーケストラを全面に押し出すかのようにレイアウトされていた。こ
れには工夫があって、打楽器群と金管楽器群を左右、逆ハの字に伸びるように配
置されている。ちょうどそれに挟まれた空間は段を高くして、ここが楽劇の舞台
となる。ちょうどヴィーラント・ワーグナーがバイロイトでやったような円形舞
台のミニチュアとも見て取れる。それに伸縮自在の四角いテントが背景スクリー
ンの役目をしていた。ワーグナーの楽劇論によればオーケストラは出きるだけ舞
台の下に隠すのが望ましいとされるが、逆にオーケストラをここまで強調するこ
とで管弦楽の醍醐味を存分に発揮するのと同時に歌・ドラマとの一体感が増すよ
うに感じた。
世界の混沌と称せられるラインの始りでは全て照明が落とされてから、次第に淡
い照明とともに低弦が響き始める。ちょうどザルツブルクのトリスタンも真っ暗
にして演奏していたことを思い出した。さらに面白いことにオーケストラにも青
い光りが照らされ、ラインの川底を彷彿とさせる。四角いテントにも水の流れの
青い光りが照らされるといったように、本公演では照明が巧みに使われていた。
それと映像が四角いテントに映し出されていたのも効果的だ。光り輝く黄金や、
アルベリヒの隠れ兜からカエルにいたるまで、全く自然な舞台セットとともにス
ムーズに楽劇が流れて行く。
登場人物たちをはじめオーケストラも飯守の指揮も全て満足できる出来映えで、
8000円という格安料金でワーグナーのリング前夜祭を大いに楽しませてくれ
た。オーケストラル・オペラという言葉を初めて聞いたが、これは紛れも無くワ
ーグナーの楽劇を上演できる立派なスタイルだと思う。来年はワルキューレを是
非とも見たいと誰しもが思うところではないだろうか。