●チョン・ミュンフン/シンフォニック・プログラム
 2000年9月1日(金)19:00/オーチャードホール
(演奏)
 チョン・ミュンフン(指揮・ピアノ)
 フランソワ・ラバット(コントラバス)
 竹澤恭子(ヴァイオリン)
 桐朋学園オーケストラ(管弦楽)
(プログラム)
 プロト     :カルメン幻想曲
 メンデルスゾーン:ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ニ短調
 −休憩−
 ブラームス   :交響曲第2番 ニ長調Op.73
(アンコール)
 ブラームス   :ハンガリー舞曲第1番


今日はチョン・ミュンフンがピアノを弾き振りし竹澤が共演する。しかもメンデ
ルスゾーンのヴァイオリンとピアノのための協奏曲という貴重なプログラミング
とあっては絶対に聞き逃せない。桐朋学園のオーケストラも是非聴いてみたいと
ころ。

最初の演目はプロトの珍しい作品。ラバットのために作曲されたそうで、彼のコ
ントラバスの妙技に堪能した。コントラバスのソロはアンプリファイするように
指定されているそうで、ホールが共振するほどのエネルギーが伝わってくる。淡々
とした抒情、スペインのカスタネットも彩りを添え、夢のような30分が過ぎて
行った。

さて待望のメンデルスゾーンの協奏曲ではピアノが中央斜め向きに置かれ、指揮
台付近に竹澤が立つ。周囲に弦楽オーケストラを並べ、管と打は無し。14歳で
作曲したというが、とても素晴らしい作品だ。ミュンフンの指揮で桐朋オーケス
トラが歯切れの良いリズムを刻む。なかなか素晴らしいオーケストラだ。これに
竹澤のソロが始ると俄然引き締まる。彼女のヴァイオリンは何時もながら素晴ら
しすぎる。ミュンフンのピアノとのデュオも絶妙で、これほど贅沢な音楽がある
だろうか。弦楽5部にソロ・ヴァイオリンとピアノだけというシンプルな編成な
がらとても多彩な演奏を繰り広げる。全体で40分ほどの大作が手応え十分に聞
けた。

後半は桐朋オーケストラの実力を試すかのようにブラームスの名作が演奏された。
これも実に素晴らしかった。アンサンブルのまとまりの良さと各パートの上手い
演奏が見事なブラームスを聴かせてくれた。特に弦の深い味わいは格別で、牧歌
風のこの曲の良さを上手く引き出していたし、何よりもミュンフンの素晴らしい
コントロールがオーケストラを熱く燃焼させた。アンコールのハンガリー舞曲も
さらにドイツ的な響きで、まさに快演といった趣き。そういえば最初のカルメン
幻想ではエキゾチックさ、メンデルスゾーンでは聡明な調和を、交響曲2番で牧
歌風、ハンガリー舞曲で郷愁と情熱が描かれるという多彩さが最も印象深い。こ
れら4曲の音色の変化もまた格別であった。