●サマーフェスティバル2000<前衛の時代>
 2000年8月28日(月)19:00/サントリーホール
(演奏)
 指揮 :井上道義
 管弦楽:東京交響楽団
(プログラム)
 B.A.ツィンマーマン   :一楽章の交響曲(1950)
 E.ヴァレーズ       :《砂漠》管弦楽とテープのための(1950-54)
 W.ルトスワフスキ     :管弦楽のための協奏曲(1950-54)
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音楽の20世紀がテーマとなるサマーフェスティバルのオーケストラ編に行って
きた。このフェスティバルは<世紀の夜明け><前衛の時代><音楽の現代>の
3つのパートからなるが、今日は1950年代の前衛の時代となっている。プロ
グラムも比較的馴染みのある作曲家の代表作品が集められていた。

ツィンマーマンは東響定期でも良く取上げられる作曲家であるためか、演奏もか
なり踏み込んだものだ。突然ヒステリックに叫ぶようなアンサンブルの開始に度
肝を抜かれた。ブラスの炸裂と弦の響きがとても充実していたし、井上の掌握力
が冴え渡っていた。

2曲目のヴァレーズの「砂漠」もかなり面白い作品だった。管楽器とパーカッシ
ョンにテープ音楽が組み合わせられる。それにヴァレーズといえばかなりパワフ
ルな作品を書くが、この砂漠もブラスとパーカッションの咆哮にエネルギーを感
じた。途中に3回ほどテープ音楽が演奏されるが、井上は指揮台から降りてテー
プに合わせるかのようなジェスチャーを行う。時にステージをさ迷い歩いて、ス
テージ奥に腰を降ろされた。テープが終わるころ指揮台に走りより、演奏を開始
するといったとてもユーモラスな一面もあった。こんな場面は大分前、彼の指揮
で見たことがあるのを思い出した。演奏ではアコースティックなアンサンブルと
テープの連なりはとても自然で耳を楽しませてくれた。さすがヴァレーズの作品
は素晴らしいと感じた。

後半はルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲。この曲は今までコンサートで結
構良く聴く作品だ。バルトークを意識したという作品ながら、豪快なアンサンブ
ルが楽しめる。井上氏の熱気こもる指揮で東響もかなり燃焼していたし、メリハ
リのある伸びやかな演奏に満足できた。

さて8月も終盤だが昨年でモーストリー・モーツァルトが終わってしまったのが
寂しいところ。9月からはオペラ・フェスティバルが始り、室内楽やオーケスト
ラが目白押しの秋となる。