●W.シェイクスピア原作 B.ブリテン作曲
 歌劇『真夏の夜の夢』全3幕
 2000年8月6日(日)13:30
(スタフ)
 指揮:若杉 弘
 演出:加藤 直
 美術:レギーナ・エッシェンベルグ
 照明:伊藤多恵
(キャスト)
 オベロン   :菅 有実子
 タイタニア  :森 麻季
 ライサンダー :星 洋二
 ハーミア   :永井和子
 ディミトリウス:黒田 博
 ヘレナ    :佐々木典子
 シーシアス  :長谷川 顕
 ヒポリタ   :竹本節子
 クインズ   :峰 茂樹
 フルート   :近藤正伸
 スナウト   :牧川修一
 スターヴリング:松井康司
 スナッグ   :筒井修平
 ボトム    :池田直樹
 くもの巣   :愛甲久美
 からしの種  :小林菜美
 豆の花    :原くにこ
 蛾      :浅野美帆子
 パック    :内田紳一郎
合唱     :二期会合唱団
管弦楽    :東京フィルハーモニー交響楽団


ブリテンの「真夏の夜の夢」はシリアスな「ピーター・グライムズ」とは対象的
にとても楽しいオペラだ。演出も幻想的なシンプルさで、まさに真夏の夜の夢を
描いていた。ステージレイアウトも実にユニーク。大きな円環がステージにセッ
トされ、その半円周部がオーケストラ・ピットを覆う。この円環上でドラマが演
じるためか、舞台と観客の距離感はぐっと縮まる。さらに円環内に設けられた円
形舞台がドラマの中心となっていた。特に第3幕の劇中劇もここで演じられ、ド
ラマがまるで求心力を帯びたかのように進んで行くようだ。ちなみにシェイクス
ピアが演じれるグローブ座も舞台と観客席は円形となっていることから、劇をイ
メージするにも円形が最適なのかもしれない。

こういったステージ・レイアウトに加えて、天上から柱のようなオブジェが何本
か下りてくるのも面白かった。これらは時にX文字を描いたり直立したりするが、
意味は不明。演出家の加藤氏のプログラム解説からは、これらは「森」をイメー
ジしていると思われる。あとは大きな月が月食から三日月へ変化したりと、とて
も簡素ながらセンスの良い舞台に仕上がっている。

ブリテンの音楽も素晴らしいが、若杉氏の絶妙な指揮と東フィルの演奏も素晴ら
しかった。歌手達との溶け合いも見事。左側に弦楽器群、右側に管楽器を振り分
けたレイアウトの響きはとても透明感溢れていたし、左のチェンバロと右の打楽
器のかけあいはとても立体的な音楽を聞かせてくれた。歌手たちのレヴェルも高
くて、歌を意識させないで、オペラを聞いている満足感を与えてくれた。特にフ
ィナーレの展開は感動を覚えた。円形の背後に並んだ合唱も素晴らしかったし、
歌手と演奏者の一体感は見事だった。久しぶりに良いオペラを見て満足した。

                           (2000.8.6 21:10)