●東京の夏音楽祭/ヒャルト・シュトラウスの映画音楽
2000年7月26日(水)18:30/紀尾井ホール
無声映画『ばらの騎士』〜復元版/生演奏付 日本初演
1926/モノクロ/サイレント/35ミリ/約105分/2371メートル
監督=ロベルト・ヴィーネ/脚本=フーゴ・フォン・ホフマンスタール
音楽=R.シュトラウス
出演=ミハエル・ボーネン(オックス)、ユゲット・デュフロ(元帥夫人)
ジャック・カトラン(オクタヴィアン)、パウル・ハルトマン(元帥)
カール・フォレスト(ファニナル)、エリー・フェリス・ベルジェ(ゾフィー)
フリードリヒ・フェ−ル(ヴァルツァッキ)、カルメン・カルテリエリ(アン
ナ−ニ)
演奏:アンサンブル13(マンフレット・ライヒェルト)
(アンコール)
テノールのアリア/観衆の出発
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R.シュトラウス作曲の映画版『ばらの騎士』が日本初演された。この作品は作
曲者自身の指揮で初演された後、永らく紛失されていたとか。さらに音楽も室内
オーケストラ版に書き換えられ、オペラとは違った曲も散りばめられているとい
う。スコアはオーストリア図書館で発見され、映画とともに1991年に復元さ
れたそうである。映画と音楽という接点においても見逃せない公演だ。
さて内容は予想以上に素晴らしかった。ステージには室内オケがレイアウトされ、
その奥やや上部にスクリーンが設置されている。弦楽アンサンブルにピアノ、ク
ラリネットとトランペットにトロンボーン。さらにティンパニという編成だが響
きは至って豊かであり、R.シュトラウスの情感豊かな音楽が余すことなく描か
れる。時折、ティンパニ意外のパーカッションやアコーディオンの響きも聞えて
きて、室内オーケストラとは思えないほどの色彩感もある。
映像も古風なモノクロでありながら、リアルな「ばらの騎士」を見せてくれたの
には驚いた。当時の無声映画では表情の微妙な変化で心理描写するなどの手法が
用いられているが、その表現力に感心した。と同時にR.シュトラウスの音楽が
見事映像と一致している。次ぎから次ぎへと湧き上がるシュトラウスの楽想の豊
かさもさることながら、オペラ以上に雄弁な場面もあって魅了されっぱなしだっ
た。アリアは無くともライヒェルト率いるアンサンブル13の高揚する音楽に感
動してしまうのである。
全体は2部構成となっていて前半は80分。後半は、映像が途中から紛失してい
るため、約50分。オリジナル2996メートルのうち最後の625メートルが
無いのである。ここはアンサンブル13の演奏とともに、その後のドラマ展開が
字幕で映し出された。欠落部分があるものの、十二分に「ばらの騎士」の素晴ら
しい音楽に堪能できた。アンコールとして音楽の美味しいところが2箇所演奏さ
れた。