●東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会
2000年7月23日(日)15:00/東京オペラシティコンサートホール
(演奏)
指揮:大町陽一郎
オルガン:ブライアン・アシュレー
(プログラム)
ブラームス:11のコラール前奏曲より
第10番「わが心の切なる願い」
第11番「おお世の人よ、われ汝より去らねばならぬ」
ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)
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二日続けてブルックナーを聞ける喜び。今日はブルックナーにかけては定評のあ
る大町&東フィルということで期待十分。しかし今日も凄い暑さだ。ようやくオ
ペラシティのロビーで汗が引いたが、ホールに入ると暑い。余り冷房が効いてい
ないようだ。最初に大町氏の解説で曲に対する期待が膨らむ。ブラームスのオル
ガンはブルックナーを聴く前の精神集中のためなのか。焦る気持ちを落ち着かせ
てくれた。
そしていよいよブルックナーの5番。冒頭のピチカートはとても豊かな響きで開
始される。今日は2階席正面ブロックだったから響きはとても素晴らしい。続い
て柔らかなブラスが響き渡り、壮大な世界が現れる。この曲のお気に入りとして
は、ハイティンク&コンセルトヘボウの来日公演が一番印象に残っている。あの
時の柔らかくやや明るい音色で構築されたブルックナーが堪らない。しかし大町
のブルックナーもまた素晴らしい。まるでブルックナーの原理を目の当たりにす
るような明快な音楽運びだ。壷を心得ているのは当然としても、当たり前の音楽
を当たり前以上に聴かせてくれる。東フィルの演奏も単調なところがなくて、指
揮者の意図を汲み取っているし、アンサンブルも優秀だ。時々、はずれることは
あっても大勢に問題はない。
この曲の魅力はその巨大な構築性にあるが、随所に現れるブルックナーの想いを
汲み取れるのが何と言っても素晴らしい。特に2楽章の心を締めつけるような悲
哀の音楽は何時も心を打たれる。大町氏はここで低弦のリズムを明快に響かせな
がら、旋律を重ね合わせながら、大きな情感のうねりを築いていく。
終楽章もとても盛り上がった。フォルティッシモで高揚した次の瞬間にはとても
柔らかいピアニッシモが続く。オーケストラはこの微妙なニュアンスを上手く表
現していたし、全般に新鮮さが溢れていた。5月のブルックナー4番を聴けなか
ったのが残念であるが、次回も機会があれば是非聴きたい。