●東京交響楽団定期演奏会
2000年7月22日(土)18:00/サントリーホール
指揮=ユベール・スダーン
ヴァイオリン=庄司紗矢香
コンサート・マスター=大谷康子
(プログラム)
團伊玖麿 :祝典序曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」
−休憩−
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調
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7月になってからオーケストラを余り聴いていなかったが、今日は久しぶりにシ
ンフォニーが聴ける。しかもブルックナーとなれば楽しみだ。前半は團の祝典序
曲から始る。フルオーケストラでR.シュトラウスを思わせる雄大な音楽に心が
ときめく。ブラスの厚味のあるサウンドとメロディアスな弦のアンサンブルが魅
力的だ。序曲という短い時間に押しの強い音楽で幕を明けるかのよう。
今日は、今話題の庄司のヴァイオリンが聴けるのも楽しみのひとつ。小編成のア
ンサンブルと心地よいモーツァルトを描く。たしかに庄司のヴァイオリンは冴え
ていている。が、昨日のマヌーキアンの心の音楽と力強さが印象的だったためか、
今一つ物足りなさを感じる。とはいえ、アンコールに演奏されたパガニーニの奇
想曲24番は凄かった。まるでモーツァルトでは物足りなかったことを訴えるか
のように、超絶技巧が冴え渡る。会場の喝采はモーツァルトよりもアンコールの
ほうが圧倒的であった。
東響では今まで重厚なブルックナーを聴かせてきた。かつては朝比奈の名演が懐
かしいが、指揮者が代われどもほぼ満足できるものであった。今日のスダーンも
名演奏となったことが嬉しい。冒頭から引き締まったアンサンブルと充実のサウ
ンドで聴衆を引きこんで行く。彼の指揮ぶりはまるでブルックナーの音塊の吹き
あがりを体で抱え込んではエネルギーを解放させるかのように見えた。所々アク
セントのクセも強いが、見とおしの良い指揮が十分に手応えのあるブルックナー
を描いていた。
白鳥の歌となったこのシンフォニーには畏敬に充ちた孤高の世界を期待したのだ
が、スダーンはそういった観念は念頭にないかのように純音楽的に音楽を推し進
めて行く。特に3楽章では崇高さよりもダイナミックで壮大な響きが伽藍として
描かれる。時折、弦が渋い音色に彩られて厳粛となるが、概ね速いテンポにのっ
て巨大なブルックナーが一気に演奏された。エネルギッシュで爽快感さえ感じる
ブルックナーであった。