●東京の夏音楽祭2000
2000年7月12日(水)18:30/草月ホール
蘇るオペラ座の名舞台〜リーバーマンへのオマージュ
ハンブルク国立歌劇場公演(カラー/35ミリ)
ウェーバー『魔弾の射手』1968年/120分
演出(映像)=ヨアヒム・ヘス
指揮=レオポルド・ルートヴィッヒ
出演=トム・クラウゼ(ボヘミアの領主オトカール)
トニ・ブランケンハイム(護林官クーノ)
アルレーネ・ザウンダース(アガーテ)
エディト・マティス(エンヒェン)
エルンスト・コッブ(狩人マックス)
ゴットロープ・フリック(狩人カスパール)
ハンス・ゾーティン(隠者)
フランツ・グルントヘーバー(富農キリアン)
レギナ・マールハイネケ(花嫁に付き添う娘)
ベルンハルト・ミネッティ(悪魔ザミュエル)
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「魔弾の射手」は「ヴォツェック」の翌年に製作されたオペラ・フィルム作品で、
キャストもヴォツェックとほぼ同じ。この作品もオペラ公演のライブではなくて、
映画として撮影されている。ただヴォツェックでは実際の自然の野外風景などを
取りこんでいたが、魔弾の射手は全てスタジオのセットが用いられている。
序曲では紙の模型で情景を描き、登場する人物のキャラクターが紙芝居風に描き
出されて行く。序曲終了とともに賑やかな合唱の場面。いずれも極めて正統派ド
イツオペラの演出である。このオペラではテノールのマックスよりも悪魔に魂を
売ったカスパールの方が強烈な印象を与える。ということでカスパール役如何に
よって作品としての出来映えが大きく影響を受ける。その意味では、フリック演
じるカスパールは凄みがあった。貧弱なステレオ音声とはいえ、十分に迫力が伝
わってくる。最近ではザミュエルが姿を現す演出は少ないが、このプロダクショ
ンでは、幽霊のようにカスパールやマックスのやり取りを見守っている場面など
が描かれている。
最大の聞き物はマティスのエンヒェンだ。当時のマティスは美貌の絶頂期とあっ
て、素晴らしい歌声とともに、このオペラのメルヘン性も存分に高めている。も
ちろんザウンダーズのアガーテも素晴らしい。
しかしフィルム作品の特徴でもある場面転換の素早さが、ドラマを余りにも速く
展開させてしまう。ライブのオペラだとある種の間(ポーズ)が存在するのであ
るが、行きつく間もないほどのスピードでストーリーが展開するため、あまりに
もあっさりとした印象を受けてしまう。やはり「ヴォツェック」と比較すると
「魔弾の射手」では今一つインパクトが弱くなってしまったと感じる。さて明日
はストラータスの「ルル」があるのであるが、見られないのが残念。今月後半の
の「ばらの騎士」アンサンブル13の演奏付きが楽しみだ。