●グローブ座の音楽家たち『シェイクスピアの音楽』
2000年7月9日(日)15:00/三鷹市芸術文化センター風のホール
(出演)
フィリップ・ピケット(音楽監督、リコーダー)
ジョアン・ラン(ソプラノ)
エイドリアン・チャンドラー(ヴァイオリン)
トム・フィヌケン(シターン)
ジェイコブ・ヘリングマン(リュート)
エリザベス・パレット(バンドーラ)
キャサリン・フィニス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ジョン・バランジャー(道化)
(プログラム)
作曲者不詳(大英図書館写本) :ストローベリーの葉
トマス・モーリー:エア第1集(1600) :彼氏と彼女が(お気に召すまま)
作曲者不詳 :セリンガーズ・ラウンド
作曲者不詳(伝統的なバラッド) :ウォールシンガム
作曲者不詳 :どうしたら真の恋人を(ハムレット)
ロバート・ジョンソン :5尋の深い海底に(テンペスト)
ロバート・ジョンソン :蜂が蜜を吸うところで(テンペスト)
モーリー・コンソート・レッスン(1599):彼女は過ちを許してくれるだろうか
ロバート・ジョーンズ:第1歌曲集 :さようなら、恋人よ(十二夜)
ジェイムズ・ローダー(1600頃) :わが主君マーチのパヴァン
作曲者不詳 :ガリアード
ジョン・ウィルソン:ボドレイ写本:その唇を持ち去って欲しい(尺には尺を)
ロバート・ジョンソン :聴け聴けヒバリの歌を(シンベリン)
作曲者不詳:大英図書館写本 :哀れなその子は泣きながら(オセロ)
作曲者不詳 :ワトキンズおばさんのエール
−休憩−
モーリー・コンソート・レッスン :ああ、いとしい君
トマス・モーリー :ああ、いとしい君(十二夜)
作曲者不詳(マリナーブック1560頃) :ラ・ブネット
作曲者不詳(マリナー・ブック) :ラ・ドゥーヌ・セラ
作曲者不詳(マリナー・ブック) :ラ・ミ・ミズ
作曲者不詳 :トゥルシーナ
リチャード・ニコルソン :ユダヤ人のダンス
作曲者不詳(ホームズ・コンソート) :ナッツメグとジンジャー
モーリー・コンソート・レッスン :ラ・ヴォルタ
作曲者不詳 :ダフネ
モーリー・コンソート・レッスン :私の窓から行きなさい
トマス・モーリー :いまこそ花摘みの季節
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最近イギリスから来日した古楽アンサンブルではザ・ハープ・コンソートが印象
に残っている。今回、同様な古楽アンサンブルとしてグローブ座の音楽家たちが
来日した。編成はバロック・ヴァイオリンにリュートやダ・ガンバなどを加えた
シンプルなものであるが、ジョアン・ラン嬢のバロック・ソプラノをメインとし
て雅情緒ゆたかな古楽が存分に楽しめた。
音楽だけでなく、シェイクスピア劇場らしく道化役のバランジャーが面白おかし
くマジックや大道芸も楽しませるという趣向だ。そのためか客席とステージの隔
たり感はなく、会場全体にアット・ホームな雰囲気が漂う。アンサンブルではバ
ロック・ヴァイオリンがバグ・パイプ的な響きを描いたり、リュートとソプラノ
の得も言えぬ美しさが絶品だった。ラン嬢の透明でリリックなソプラノを聞けた
だけでも今日は最高だ。素晴らしい抑揚と陰影にとんだソプラノ。それにここの
ホールの響きも格別で、超ピアニッシモのソプラノでも色焦ることなく、会場を
包み込む。特にオセロでのデスデモナが歌う「柳の歌」が圧巻。彼女はガーディ
ナー指揮の「アルチェステ」で絶賛されたというから、今後も大いに期待できる
歌手だと思う。
ちなみにプログラムにはグローブ座の構造などが紹介されているが、O字型木造
劇場の内側の構造がユニークだ。ちなみにウィーン国立でのウッド演出「オテロ」
はこのグローブ座劇場の構造をアイデアとしている。