●東京の夏音楽祭2000
 蘇るオペラ座の名舞台〜リーバーマンへのオマージュ
 2000年7月9日(日)11:00/草月ホール
 ラモー『プラテ』
 パリ・オペラ座公演(仏国営テレビ放送作品/カラー/116分)
 1977年7月9日放送
 ・プロローグ付き3幕のオペラ・バレエ(1745年初演)
 台本=オトロー&バロ・ド・ソヴォ
 音楽=ジャン=フィリップ・ラモー
 演出=アンリ・ロンス
 製作=ピエール・デフォン
 美術・衣装=ベニ・モンレゾール
 振付=ピエール・ラコット
 指揮=ミシェル・プラッソン
 出演=ミシェル・セネシャル(プラテ:プラタイアイのニンフ)
    ジャン=マリー・フレモー(キタイロン:プラタイアイの王)
    スザンヌ・サロカ(ジュノン:ジュピターの妻)
    ロジェ・ソワイエ(ジュピター:天空神)
    ダニエル・シュロスタヴァ(ラムール:愛の神)
    エリアーヌ・マンシェ(フォリ:快活の象徴)
    エリアーヌ・リュブラン(タレイア:喜劇の神)
    ルネ・オファン(クラリン)
    イヴ・ビッソン(モミュス:嘲笑の神)
    クロード・メローニ(サテュロス)
    ジャン・デュプイ(テスピア)
    シャルル・ビュルレ(ハープシコード)
    ジャクリーヌ・ライエ(エトワール・ダンサー)
    パリ・オペラ座管弦楽団/合唱団/バレエ団
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昨日はリーバーマンがハンブルクの監督をしていた時に作られた「ヴォツェック」
を見たが、今日はパリ・オペラ座時代に手がけたプロダクションとしてラモー作
曲の「プラテ」を見る。実のところ昨年の春にパリ・オペラ座(ガルニエ)での
プラテを見たこともあり、いろいろと比較する上でも興味深いものがあった。

ラモーのこの作品はストーリーの奇抜さから舞台仕掛けは自ずと神話めいたセッ
トを作らざるを得ないが、昨年のペリー演出によるプラテは超モダンなものであ
ったが、さすがに23年前のプロダクションとなれば、オーソドックスな古さを
感じる。とはいえオペラ自体は全く古さを感じさせない。それどころか現代のド
ラマとして我々に語り掛けてくるようなところも感じた。元来、このオペラは全
くのコミックではあるのだが、プラテという道化師的存在が現代にも共通するよ
うなところがあって面白い。

このプロダクションはパリ・オペラ座のライブを収録したもので、若い頃のプラ
ッソンの指揮ぶりも見れた。合唱は舞台左右のバルコニー席に陣取り、舞台を有
効に活用した演出。映像にはガルニエ内部も映し出され、まるでオペラを見てい
る臨場感を掻きたてる。カラー映像はデジタル処理で修復されたそうであるが、
とても美しい。特にフランス宮廷バレエも見所でカラフルである。ステレオ音声
も良好であるが、高音域にエネルギーが偏っている。これはラモーの音楽の特徴
でもあるが、驚いたことにはガルニエの響きがちゃんと聞えてくる。

舞台設定はオーソドックなものであり、ラモー独特の神々を演出する基本パター
ンが随所に見られる。すなわち地上に対して天空高くから神々が降りてくる演出
と、舞台奥に伸びる階段などは、その後のラモー・オペラの演出のお手本になっ
ているようだ。それにしてもプラテを演じたセネシャルは魅力一杯の歌と演技で
見るものを惹きつける。特にマンシェ演じるフォリの歌には魅了された。オペラ
・バレという形式も見ごたえ一杯に、2時間が極上の気分にさせてくれた名プロ
ダクションだった。それにしても今日は日曜の朝とあってか観客席は閑散として
いて実に勿体無いと思う。こんなに素晴らしい映像を紹介してくれた東京の夏に
感謝。それとBSでも放送してくれないかと切に願う。さてこれから昨日と同様、
青山一丁目から四谷経由で三鷹へ向わねばならない。今度はシェークスピアの音
楽を聴く。