●ウィーン室内管弦楽団
2000年6月30日(金)19:00/サントリーホール
指揮:クリストフ・エーバーレ
クラリネット:シャロン・カム
フルート :エミリー・ベイノン
(プログラム)
モーツァルト
歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲
クラリネット協奏曲イ長調K.622
−休憩−
フルート協奏曲第2番ニ長調K.314
交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
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ウィーン室内管弦楽団と聴けばアントルモンの指揮を連想してしまうが、現在は
エーバーレが主席指揮者を務める。彼の指揮を今日始めて聴いたが、素晴らしい
音楽を聞かせてくれた。ドン・ジョバンニ序曲でのバランスの良さ、オペラを彷
彿とさせる軽快さなど、小編成という限られたアンサンブルから実に豊かな音楽
を醸し出す。これは次のクラリネットコンチェルトにも当てはまる。
アンサンブルはやや渋い古楽風の演奏方法で、ウィーン情緒を感じさせるしなや
かさも備わっている。ソフトなタッチを感じさせるが、中低域がしっかりしてい
るので、落ち着いた佇まいも十分。これにシャロン・カムのクラリネットが溶け
合う。その音色の良さといい、音楽の歌わせ方といい、全く素晴らしい。彼女は
東京カルテットとのアンサンブルで聞いたことがあるが、こういったコンチェル
トとなると持てる力を最大限に発揮できるようだ。モーツァルトを聴く喜びを十
分に楽しませてくれた。
同様にベイノンのフルートも見事すぎる。ふたりの美女が連続して登場するコン
サートも珍しいが、今日は極上のモーツァルトを立て続けに聴かせてくれる。ち
なみに彼女はコンセルトヘボウの主席奏者で、最近の来日公演が思い出される。
フィナーレはモーツァルトのジュピター。とてもリズミカルなテンポで爽快さ一
杯のモーツァルト演奏だ。メロディをひとつのパッケージとして捉え、これをさ
らっと流すという感じの演奏法。語尾は消え入るような軽快さで空間を漂う。と
ても軽快で、音楽に絶妙な流暢さが加わる。活気と慎ましさが共存した調和の良
さとでも呼ぶべき名演奏だと思う。しかしコンチェルト二つにシンフォニーひと
つの取り合わせは結構な充実感があった。