●グルック作曲歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』
 2000年6月25日(日)15:00/新国立劇場(小)
 指揮:佐藤正浩
 演出:岩田達示
 オルフェオ   :栗林朋子
 エウリディーチェ:佐藤ひさら
 アモーレ    :佐藤美枝子
 新国立劇場小劇場オペラ・アンサンブル
 新国立劇場合唱団
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このオペラは名曲中の名曲でありながらライブで見る機会は少ないもの。そんな
訳で今回のチャンスを見逃す訳には行かない。と誰しも考えたためかチケットは
すぐに完売。かろうじて日曜の公演をゲットできた。

小劇場は始めてであるが薄暗くて冷房が余り効いていない。ステージの左右に蝋
燭が灯され、左右の壁に木の枠組みが舞台奥まで設置されている。上部は奥に行
くに従い傾斜していて、ステージ全体が奈落の底に吸いこまれそうな傾斜舞台を
演出している。さらに舞台上部にもスクリーン幕が上から下へ傾斜していて、遠
近法の原理で狭いステージを奥行きあるものに見せる工夫がなされている。ちな
みに客席は段々畑になっていて、雰囲気はザルツブルクでのレジデンツの客席配
置に似ている。とはいえ、ここの小劇場はとても小さいので、やや圧迫感を感じ
る。

演奏が始る前に佐藤扮するアモーレが赤いマント姿で思い悩む場面が描かれる。
ほどなく演奏が始り、客席通路からニンフ立ちが舞台に登場して合唱となる。劇
場の音響のためか合唱はやや固い響きだ。これは歌手たちにも言えるが、決して
柔らかな響きは期待できない。ドラマが進行してゆくが、どうも今一つ魅力を感
じない。この名作には名演奏のCDが沢山でているので、これらと比較すること
自体間違っているのかも知れないが。それはともかく、普段見れないオペラを見
ることが出来ただけでも収穫である。

このオペラは通常3幕となっているが、今回の公演では通常の第1幕と第2幕を
一幕として扱い、全2幕構成で上演された。すなわち地獄でオルフェオが竪琴を
奏でる場面が第1幕となる。後半の物語は前半に比べよりドラマティックのため
か、このオペラの魅力が十分に演奏されたように感じる。アリアなどの聞かせ所
よりもお芝居であることが素直に描かれていたのに好感が持てる。特にエウリデ
ィーチェに振り向けないオルフェオの葛藤が痛ましいほどに伝わってきた。後半
のオルフェオの歌は素晴らしく盛り上がりを見せた。拍手は早々と切り上げられ
1時間50分で終了した。