●読売日本交響楽団・定期演奏会
 2000年3月6日(月)19:00/サントリーホール
 指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
 ピアノ=マルク・ラフォレ
 コンサートマスター=デヴィッド・ノーラン
(プログラム)
 モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
 ショパン  :マズルカ、子犬のワルツ(アンコール)
 −休憩−
 ブルックナー:交響曲第9番ニ短調(ノヴァーク版)
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さすがスクロヴァチェフスキのブルックナーは凄い。これほど明快で高揚するブルックナーはそうざらに体験できるものではない。第1楽章の厳かな始まりから捉えて離さない緊迫感と大きな音楽の流れ。全体のトーンも素晴らしく統一され、細かなパッセージを極自然に際立たせるあたりなどは始めて聴くような新鮮さを感じさせてくれる。同時にブルックナーのスコアを浮き彫りにするような演奏でもあった。やや荒削りぎみなところもブルックナーの魅力を醸し出しているように感じた。あの絶妙なティンパニの強打は渇が入るのと同時に次ぎに押し寄せる波に備える心構えを与えてくれる。

第1楽章のゆったりとしかも部分部分かなりアクセルをふかす場面もあり,スリリング感も十分。とにかく大きな高まりへの邁進には凄いものがある。この高揚は第1楽章終盤に向け頂点に達し、第1楽章を一気に一筆書きしたような展開には納得させられた。

驚くべきは第1楽章で迎えたクライマックスがそのまま第2楽章に引き継がれたこと。かなり戦闘的なスケルツォでありその弦の激しいリズムには快感を覚える。第3楽章も白鳥の歌というアダージョに留まらず大きく高揚する。全体を通して持続する緊張感のためか、アンサンブルの善し悪しを超越した世界を見せてくれたように感じる。