ザルツブルク音楽祭’98

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■#3164 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/ 1 0:55
ザルツブルク音楽祭’98       tujimoto

今年も行くことになりました。チケットは例によってwebで買っていました。

8/1 (成田〜フランクフルト〜ザルツブルク)
8/1♪アシュケナージ/ベルリンドイツ響(21時開演)
8/2♪モーツァルト・マチネー(モーツァルテウム管弦)
8/2♪マリナー指揮ウィーンフィル演奏会
8/3♪『パルジファル』初日/ゲルギエフ指揮ウィーンフィル
8/4♪ミュージカル『SOON』/ハートレー
8/5♪『マハゴニー市の興亡』/Rデイヴィス指揮ORF
8/6♪『くるみ割人形』マリオネット劇場
8/6♪『カーチャ・カバノーヴァ』/カンブルラン指揮チェコフィル
8/7♪『ドン・カルロ』初日/マゼール指揮ウィーンフィル
8/8 (ザルツブルク〜フランクフルト〜
8/9 成田着)

ということでもう寝なければなりません。今回泊まるホテルからはPCVANはおそらくアクセスできないので、レポートは帰国後になると思います。ではおやすみなさい・・・今朝は5時起きです。

                         tujimoto

■#3165 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/ 1 23:16
ザルツブルク音楽祭>今フランクフルトです      tujimoto

●8月1日

先ほどフランクフルトに着きました。ルフトハンザのビジネス・ランウンジから書き込んでいます。3Cコミュニケーションズのカード電話が便利で、携帯端末で簡単に接続できました。TYMNET接続であれば直通で 5076736 を指定すればOKです。5分程度で5マルクくらいです。 ここならゆったりと端末に打ち込んだりする仕事も快適にできそうです。

17時になったらザルツブルク行きに搭乗し、今晩は早速アシュケナージのピアノと指揮を聴きます。今日は曇りで気温はとても涼しいです。

                                tujimoto

■#3180 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/ 9 14:52
ザルツブルク音楽祭’98速報            tujimoto

本日帰国しました。ザルツブルクの平均気温は25度程度で多少肌寒いくらいでした。それでも四日ほど前から快晴になり、ようやく夏らしくなってきました。さて今回、見た演目について詳細を書くに未だ時間が掛かりますので、まずは速報を・・・

●アシュケナージ/ベルリン・ドイツ響(8/1)

最初はベルリンドイツ交響楽団で、指揮とピアノはアシュケナージ。モーツァルトのニ短調のコンチェルトとシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」という面白いプログラムでしたが、モーツァルトではコントロールが効き過ぎていて、音楽のもつ生命力が感じられなかったのが残念。シェーンベルクは叙情豊かなものの、あまりにも断片的演奏になってしまい全体の流れを感じるほどではありませんでした。

●フィッシュ/モーツァルテウム&シェーンベルク合唱団(8/2)

モーツァルト・マチネーはモーツァルトの交響曲「パリ」とアリア集、さらにハイドンの「ハルモニ・ミサ」という魅力的なプログラムでした。こちらはシンディア・シーデンが素晴らしいアリアを歌い、会場を沸かせました。透き通った歌は天使そのもの。シェーンベルク合唱団とのミサも圧倒的で、シーデンのソロと合唱団の凄さを目の当たりに出来たのは思わぬ収穫でした。

●マリナー/ウィーンフィル(8/2)

モーツァルト・マチネーがあった夜は同じくモーツァルテウムでのウィーンフィル。指揮はマリナーでハイドンの交響曲「奇跡」、モーツァルトの協奏交響曲にベートーヴェンの交響曲2番。比較的地味なプログラミングにも係わらず、実に多彩で驚異的な演奏を繰り広げてくれました。ハイドンの生命力、モーツァルトの透明感、ベートーヴェンの躍動、いずれをとっても世界最高のアンサンブルを実証したかのような出来栄えでした。特にモーツァルトの協奏交響曲では管楽四重奏を最前列にレイアウトし、指揮者がオーケストラの真ん中に立つという面白い演奏。プルトを減らした小編成でもその強力なアンサンブルは驚くばかり。

●パルジファル(8/3)

ショルティ追悼演奏会の初日で、最初に総監督モルティエの挨拶がありました。続いてショルティのザルツブルクでのドキュメンタリーが上映。フィデリオをリハーサルしている場面で、ショルティとザルツブルクとの関係が忍ばれました。さて演奏のほうは最も感動的なパルジファルと言って良く、ゲルギエフ/ウィーンフィルさらにはサルミネンを筆頭とする歌手陣は最高の舞台神聖祝典劇を繰り広げたのです。音楽はどこまでも敬虔であり、むしろ新しい生命力さえ感じられました。それにベルリン国立のパルジファルでも記憶に新しいマイヤーはさらに凄い歌唱を聞かせてくれましたし、ドミンゴのパルジファルも十分見事でした。演奏会形式といってもステージをアートグラフィック調の照明効果を加えるなど、舞台要素を重視した演奏だったので楽劇を聞いたという充実感があります。

●ミュージカルSOON(8/4)

ザルツブルクから車で30分のハラインで公演されました。会場はペルナー・インゼルという工場を利用したもので、そこまではバスの送迎付きでした。巨大ガラスを駆使して、衝撃的な電子音楽とともに人類最後へのドラマが繰り広げられました。ミュージカルといってもかなり前衛に位置し、ザルツブルク音楽祭が世界初演とのこと。こういったジャンルは初めて見ましたが、舞台芸術として十分質の高い内容だと感じました。

●マハゴニー市の興亡(8/5)

カーチャ・カバノーヴァとともに今年の新演出オペラ。滅多に上演されないのでとても貴重でした。はっきり言ってこれほど面白いオペラがあったのかと思うほどで舞台を楽しむという面では最高の出来でした。ギネス・ジョーンズの新しいジャンルへの意欲も十分。マルフィターノとハードリーの歌と演技も気合いが入っていました。最前列から見た舞台は超パノラマで圧倒的。超仮想都市マハゴニーを西部劇と古代バビロニアとNYの自由の女神をごちゃ混ぜにして作りあげたアイデアは一見の価値ありです。これはBSで生中継されるようですが、かなり際どいシーンがあるので、果たして日本で放送できるのかどうか・・・

●カーチャ・カバノーヴァ(8/6)

昨年、アバドのヴォツェックで話題となったデノケが素晴らしい歌と演技を見せてくれました。舞台にはヴォルガ河は無く、集団住宅で囲まれた中庭に噴水があるだけ。これで最初から最後までしかも休憩無しで演奏されたのです。これはBSで生中継されたようですが、私が見たのは最終公演でした。何と言ってもカンブルラン指揮のチェコ・フィルが冴えわたり、祝祭小劇場を素晴らしい音楽で埋め尽くされました。悲劇の底辺にも常にヤナーチェックの叙情性が絶えまなく流れ、実に魅力溢れる演奏でした。

●ドン・カルロ(8/7)

これは早々とチケットが完売になった超人気公演で、プレミエを見ました。マゼールの自信に満ちた指揮がウィーンフィルを唸らせ、極めて緊張感の高いヴェルディを聞かせてくれました。先日のパルジファルではドイツ的な側面をフルに発揮したウィーンフィルは、ここではイタリア物の解放感を発揮。オケの音色は常に悲劇性と憂いを帯びており、劇的な表現は天下一品。そのパワーの炸裂には圧倒されました。 舞台は例によってヴェルニケの巨大オブジェが登場します。全幕を通して長方形に組まれた柱が横長舞台に林立します。これらが形を変えながら、その場その場でのドラマとしての象徴を与えているようです。特にボリスゴドノフで見せたような立体的な合唱の取り扱いと左右一列に動きのある演出など巨大さを表現したドン・カルロでした。歌手ではレイミーがやはりキャンセルし、代役はルネ・パーペ。本来ルネ・パーペが歌う役にはロバート・ロイドが起用されました。ついでにドン・カルロ役に予定されていたボータはセルゲイ・ラリンに代わっていました。しかし主役を差し置いて最高のブラヴォーだったロドリーゴ役のアルバレスでした。

以上が音楽祭の演目で、総じてウィーンフィルの活躍が目立った印象を受け、やはりこのオーケストラの凄さを実感させられました。またチェコフィルやデイヴORFなど日頃からオペラを演奏していることの少ないオーケストラであっても素晴らしいオペラ演奏してくれたことは印象的でした。指揮者ではゲルギエフが実力を見せつけると同時にマゼールの上手い指揮ぶりが際立っていました。カンブルランはもうザルツブルクの顔になっていて申し分ない実力派。デイヴィスもこういった現代物ではのりの良さを見せるようです。こうした中でアシュケナージ/ベルリンドイツ響は今一つパンチ力が弱かったように見受けられました。

●その他

音楽祭の時期は街のいたるところでコンサートがあり、開いている時間に聴くチャンスは結構あります。そのんな中、ハイドン記念館が主催する5時コンサートとノイエ・レジデンツでのモーツァルト・マチネーを聴きました。いずれもプロの演奏家たちが繰り広げるもので、質の高い演奏内容でした。また演奏会場は宮殿なんかの室内がほととんどで、室内楽としての音響的充実感は十分。まさに街全体が音楽に彩られていることを体験できました。その他にはマリオネット劇場での「くるみ割り人形」も結構見応えがありました。

●来年の演目

1999のプレビューによると来年は「ファウスト」が特集されるようです。ブゾーニの「ファウスト博士」、ベルリーズの「ファウストの劫罰」それにF@UST VER 3.0 というドラマも取り上げられるようです。今年のドン・カルロと昨年大ブーを浴びた「魔笛」が再演され、新演出としてマゼールの「ドン・ジョバンニ」なんかがリストに挙がっています。一時期噂されてたアバドの「トリスタン」は夏の音楽祭には登場しないようです。詳しくはまた別途・・・

                                tujimoto

■#3208 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/23 22:31
ザルツブルク音楽祭(1)’98プロローグ      tujimoto

ザルツブルク

●今年もザルツブルクへ

今年のザルツブルク行きを決めたのは昨年11月頃。 郵送されてきたプログラムを見てまず驚いたのは「パルジファル」がリストアップされていたこと。しかもゲルギエフ/ウィーンフィルとあっては是非とも聴いてみたくなりました。「アッシジの聖フランチェスコ」も見たいところですが、これは日程が合いません。12月にインターネット上でもジェネラル・ブッキングが開始されると同時にボタンを押したのが始まりでした。

で、今回の音楽祭ではオペラ四つ、オーケストラ三つ、それにミュージカル一つを聴きます。それに室内コンサート二つとマリオネット劇場を加えた合計11演目となりました。オペラは昨年の七つに比べると、やや物足りなさを感じますが、パルジファルと三つの新演出に期待したいところです。

●8月1日/出発〜祝祭劇場

朝6時前に自宅を出発。渋谷まで10分ほど電車に乗ってから、銀座線に乗り換えて上野まで。スカイライナーで成田には8時頃着きました。ところでルフトハンザは今年3月から第2ターミナルへ移動しました。それとANAがパートナーとなった為でしょうか、ANAのラウンジが利用できました。ここで軽い朝食を済ませて、周囲を見渡すとビジネス・ブースがありました。そういえば未読メールがあったので、モバイルギアをモジュラージャックに接続。しかし何故か繋がりません。 もう余り時間が無いので搭乗ゲートへ向かいます。

ルフトハンザでは4チャンネルのクラシック放送をたっぷり聞けるのが何よりの楽しみです。特にチャンネル2では「オルフェとエウリディーチェ」全3幕が放送。ジェニファー・ラモーア(オルフェ)、ドーン・アップショウ(エウリディーチェ)という豪華な競演に暫し耳を奪われました。シートモニターでは何本かの映画が放送されていましたが、「仮面の男」がとても面白かったです。

少し熟睡した後、起きるともうノルウェー上空。フランクフルトに着いても頭はすっきりしています。そのままルフトのラウンジへ行き、PCVANを接続したり、電話を掛けたりしていると3時間はあっという間に過ぎていきました。

さていよいよザルツブルクへのフライトですが予定よりも1時間も遅れました。昨年はラウダ航空でしたが、ルフトハンザの傘下から外れたそうで、いわゆる通常のルフトで飛ぶことになります。45分の間に食事も出され、とても慌ただしい感じです。フランクフルトは曇りでしたが、ザルツブルクは快晴。飛行機の窓からホーエンザルツブルク城が太陽の光を浴びて白く輝いているのが見えました。あ〜やっぱり夏はいいなぁと実感が込み上げてきました。お城が見えるともう着陸です。 ここからタクシーでほんの少しで街に着きます。

祝祭劇場今年は昨年よりも涼しいように感じられます。結局ホテルに着いたのは夜7時半をまわりました。今日は9時から演奏会なので、ジャケットに着替えて祝祭大劇場へ向かいます。未だ外は明るくて夕方になったばかりという感じ。それにしても到着日というのは眠いものですが、何故か今日はすっきりとした爽快な気分です。さて到着早々、演奏会に行きますが今回のメニューは下記のようになりました。

●今回の日程
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8月1日(土)LH711→フランクフルト→ザルツブルク

♪ベルリン・ドイツ交響楽団演奏会/祝祭大劇場
指揮&ピアノ:ウラディミール・アシュケナージ
 ・モーツァルト:ピアノ協奏曲20番ニ短調K466
 ・シェーンベルク:交響詩「ペレアスとメリザンド」
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8月2日(日)

♪モーツァルテウム管弦楽団演奏会/モーツァルテウム大ホール
 指揮:アッシャー・フィッシュ
 独唱:シンディア・シーデン(S)/ノリーヌ・ブルゲス(Ms)
    スティーブ・ダウィスリン(T)/フランツ・ハウラタ(Bs)
合唱:アーノルト・シェーンベルク合唱団
 ・モーツァルト:交響曲31番ニ長調
 ・モーツァルト:コンサート・アリア集
 ・ハイドン:ミサ曲変ロ長調「ハルモニ・ミサ」
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♪ウィーンフィルハーモニー管弦楽団演奏会/モーツァルテウム大ホール
 指揮:ネヴィル・マリナー
 ゴットフリート・ボイジッツ(ob)/ノルベルト・トイブル(cl)
 ラルス=ミヒャエル・ストランスキー(hrn)
 シュテパン・トゥルノフスキー(fg)
・ハイドン:交響曲96番「奇跡」
 ・モーツァルト:協奏交響曲変ホ長調
 ・ベートーヴェン:交響曲2番
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8月3日(月)

♪ワーグナー楽劇『パルジファル』演奏形式・初日/祝祭大劇場
 (ゲオルク・ショルティ追悼)
 指揮:ワレリー・ゲルギエフ
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団
 フランツ・グルントヘーバー/フランツ・ヨーゼフ=ゼーリヒ
 マッティ・サルミネン/プラシド・ドミンゴ/ニコライ・プチーリン
 ワルトラウト・マイヤー
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8月4日(火)

♪バロック・コンサート/ハイドン記念館
 演奏:レ・ネイションズ・ザルツブルク
 ・ジェミニアーニ:チェロとチェンバロの為のソナタ3番
 ・J.S.バッハ:オーボエとチェンバロの為のソナタBWV1020
 ・J.フロベルガ:チェンバロの為の組曲第6番
 ・J.S.バッハ:チェロ独奏の為の組曲第1番
 ・T.ヴィンセント:オーボエの為のソナタ第2番
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♪ミュージカル『SOON』世界初演/ペルナー・インゼル
演出:ハル・ハートリー/舞台美術:スティーヴ・ローゼンツヴァイク
 音楽:ハル・ハートリー/ジム・コールマン
 ジェイ・ライアン/エリーナ・ローヴェンゾーン/ミホ・ニカイドウ
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8月5日(水)

♪ヴァイル歌劇『マハゴニー市の興亡』新演出/祝祭大劇場
 指揮:デニス・ラッセル・デイヴィス/演出:ペーター・ツァーデック
 ウィーン放送交響楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団
 ギネス・ジョーンズ/ウィルバー・パウリー
 キャサリーン・マルフィターノ/ジェリー・ハードリー
 デイル・ドュージング/ハリー・ピーターズ
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8月6日(木)

♪ノイエ・レジデンツ/モーツァルト・マチネー
 演奏:メロス・アンサンブル・ザルツブルク 
・モーツァルト:オーボエ四重奏曲KV370
 ・ハイドン  :弦楽四重奏曲 作品74−3
 ・モーツァルト:オーボエ五重奏曲ハ短調 KV406
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♪チャイコフスキー『くるみ割り人形』/マリオネット劇場
音楽:アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団/録音
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♪ヤナーチェク歌劇『カーチャ・カバノーヴァ』新演出/祝祭小劇場
指揮:シルヴァン・カンブルラン/演出:クリストフ・マルタラー
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
 アーゲ・ホークランド/デイヴィッド・キューブラー
 ジェーン・ヘンシェル/ウーベルト・ドゥランボワ/アンジェラ・デノケ
 ライナー・トロスト/ダグマ・ペコヴァ/フレデリック・カトン
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8月7日(金)/ザルツブルク〜ヘレン・キーム・ゼー城(往復)

♪ヴェルディ歌劇『ドン・カルロ』新演出プレミエ/祝祭大劇場
 指揮:ロリン・マゼール/演出:ヘルベルト・ヴェルニケ
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団
 ルネ・パーペ/セルゲイ・ラリン/カルロス・アルヴァレス
 ポール・プリシュカ/ロバート・ロイド/アンドレア・グルーバー
 ドローラ・ザージック
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8月8日(土)ザルツブルク→フランクフルト→LH710
8月9日(日)→成田
                               tujimoto

■#3210 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/24 23:45
ザルツブルク音楽祭(2)アシュケナージ/ドイツ響  tujimoto

♪ORCHESTERKONZERT
Grosses Festspielhaus, Samstag, 1.August 1998, 21.00 Uhr

Wolfgang Amadeus Mozart:
Konzert fuer Klaviewr d-Moll KV466
(Pause)
Arnold Schoenberg:
Pelleas und Melisande op.5

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
Drigigent und Solist:
Vladimir Ashkenazy
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ザルツァッハ

今日の演奏は夜9時開演。9時に始まるのが他にも幾つかありますが、これは祝祭小劇場と開演をずらせるのが理由のようです。おそらく同時に開演すると劇場前が混雑する為でしょう。もう一つの理由はオペラとコンサートを立て続けで上演される場合。例えば8/15の祝祭大劇場は11時からウィーンフィル、17時からフィデリオ、21時からキーシンのリサイタルとフル回転のようです。

今年のザルツブルクではアシュケナージ・プロジェクトが企画されました。4回シリーズのうちの一つが本日の演奏会。座席は1階の6列目中央で、真正面にピアノが見えます。反響板が外されて、ピアニストがオーケストラに向かうレイアウト。アシュケナージはとても性急で、ステージに登場したと思ったら、もうピアノに向かい両手を振り上げていました。すぐさまモーツァルトのコンチェルトが始まったのです。振り上げた両手は既に鍵盤を狙ったかのように開かれていたのが印象的です。

さて彼の弾き振りが聞き物でしたが、今一つ唸るような演奏では無かったのが残念です。オーケストラをコントロールし過ぎていて、音楽が殻に閉じ籠ってしまったようです。第2楽章のテンポはとてもゆっくりしていて、息苦しさを覚えてしまいました。会場が暑かったせいかも知れません。第3楽章に至ってようやくモーツァルトらしい伸びやかさが感じられましたが、エンジンがかかるのが遅すぎたと思います。

ここで10時頃まで休憩になります。外に出るとさすがに涼しくて気分爽快。客の入りはほぼ満席に近い盛況ぶりで、通りはシャンパン片手の方で溢れていました。 今日、日本を発ってもう祝祭劇場に居ることが、とても不思議な感じがします。 この時やっと夏休みだという実感が込み上げてきました。

シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」は好きな演目のひとつで、今年は大友&東響で聴いています。アシュケナージがこれをどのように演奏するのか興味があります。さて演奏のほうは、指揮者アシュケナージとしての力量はなかなかの物でした。全体に個々の旋律を克明に歌わせ、満ち足りないロマン的叙情を常に湛えていました。しかし個々の旋律をゆっくりと歌わせ過ぎたせいでしょうか、流れに欠けて全体が良く見えない演奏になったように思います。オーケストラのテクニックは特に不満な点はなく、ヴィオラ・ソロや木管群はとても良かったようです。

昨年のヤンソンス/オスロフィルは祝祭大劇場を鳴らし切ったのが強く印象に残っている為か、今日のコンサートはちょっと響きが乏しいように感じました。帰国後KAZUさんから伺ったお話では、フィルハーモニーで聴くアシュケナージ/ドイツ響は重厚でベルリンフィルを凌ぐほどとのことなので、ザルツブルクでは勝手が違ったのかも知れません。

演奏が終わったのは11時すぎ。到着初日にしては遅くなったので、今日はこのままホテルへ戻りました。さぁ、明日はモーツァルトマチネーとウィーンフィルの二本立てです・・・
                               tujimoto

■#3211 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/26 0:29
ザルツブルク音楽祭(3)モーツァルト・マチネー   tujimoto

魔笛の小屋

♪Morzart-Matinee
 Morzarteum-Grosser Saal, 2.August 1998 11.00 Uhr

Wolfgang Amadeus Mozart
Symphonie D-Dur KV297,"Pariser"
"Borrei spiegarvi, oh Dio",Arie fuer Sopran KV418
"Mentre ti lascio, o figlia", Arie fuer Bass KV513
(Pause)
Joseph Haydn
Messe B-Dur Hob.XXii:14,"Harmoniemesse"

Mozarteum Orchester
Arnold Schoenberg Chor
(Solisten)
Cyndia Sieden, Sopran
Norine Burgess, Mezzosopran
Steve Davislim, Tenor
Franz Hawlata, Bass
Dirigent Asher Fisch
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日は変わって8月2日の日曜。音楽祭期間中の土日はモーツァルト・マチネーがあり、いずれも週単位でプログラムが替わります。ザルツブルクに来たらこれは聴き逃せないコンサート。さてミラベル公園から少し歩くと、そこはもうモーツァルテウムです。開場とともにビュッフェに上がり、中庭に出ます。ここはとても明るくて爽やかな場所。日差しが強い時は木陰もありますから、とても涼しく過ごせます。それにモーツァルトの魔笛の小屋もひとつのポイント。今日はすぐ隣のミラベル公園から野外ブラスアンサンブルが聞こえていました。

モーツァルテウムさてそろそろ開演時間なので席に向かいます。平土間2列目右よりの席でした。 最初の交響曲パリはとても精彩あるアンサンブルでモーツァルテウムの大ホールが鳴り響いたという感じです。やはりこのオーケストラはモーツァルテウムの響きを知り尽くしていて、小編成のオーケストラでも厚みのあるサウンドを楽しませてくれます。メンバーは昨年とほぼ同じで、ファゴットとヴィオラは日本人の方でした。指揮者フィッシュのタクトさばきも手際良く、とても機敏。モーツァルトの交響曲はモーツァルテウムくらいのホールで聴くのがベストですね。

モーツァルトのアリアではまずシンシア・シーデンの目の醒めるような素晴らしさに驚嘆しました。彼女はシェーファーのように小柄の美人歌手。まず歌声が美しくて高音域までよく伸びたソプラノはとても魅力的。オペラティックな身ぶりも自然でした。演奏では指揮者を挟んで左にソプラノ、右にオーボエが並びました。オーボエソロとソプラノの掛け合いも見事で、短いアリアでも最高に感激。もうここで拍手喝采で歓声が上がったのです。

こうなると次のハウラータが、シーデンの出来栄えに隠れてしまいました。それでも結構ハウラータの持ち味が生かされていました。彼は昨年の「後宮からの誘拐」でオスミンを演じましたが、今日の夜も後宮に出るようです。オスミンではかなりおっちょこちょいの役でしたが、目がねを懸けてコンサートステージに上がると結構インテリタイプで、あのオスミンを想像できないくらい真面目。しかし地声はやはりバス・ブッフォで、オスミンに聞こえるから不思議でした。

後半はハイドンのハルモニ・ミサ。昨年はネルソン・ミサを聴いて感動したのですが、今日も最高に感動してしまいました。とにかくシェーンベルク合唱団が凄い。ハーモニーがひとつにまとまって深みと力強さは言うに及ばず、繊細さも自由自在といた感じで、とにかく素晴らしい合唱でした。ステージは前半に比べてやや手狭というほどの密度でレイアウトされ、それがまた大きな音源となってホールを響かせます。

ミサではシーデン、ハウラータに加えてブルゲス、ダウィスリンも歌います。彼ら四人のソロの完成度は高くて、中でもシーデンのソプラノは群の抜く出来栄えでした。合唱とオーケストラのフルサウンドにおいても決して負けないパワーを持った美しいソプラノです。ブルゲスはアップショウに雰囲気が似ていて、彼女の歌も良かったです。今日の演奏を盛り上げたのは指揮者フィッシュで、彼の指揮はとても安定していてメリハリがしっかりしていました。しかしマチネーでこれだけ素晴らしい演奏を聞かされると、夜のウィーンフィルは大丈夫だろうかと心配になってきました。
                                tujimoto

■#3213 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/26 22:59
ザルツブルク音楽祭(4)マリナー/ウィーン・フィル tujimoto

♪WIENER PHILHARMONIKER
Mozarteum-Grosser Saal/ Samstag,2 August 1998, 19.30 Uhr

Joseph Haydn:
Symphonie D-Dur Hob.I;96,"The miracle"
Wolfgang Amadeus Mozart:
Sinfonia concertante Es-Dur KV297b
fuer Oboe,Klarinette,Horn,Fagott und Orchester
(Pause)
Ludwig van Beethoven:
Symphonie Nr.2 D-Dur op.36

Wiener Philharmoniker
Solisten:
Gttfried Boisits, Oboe
Norbert Taeubl, Klarinette
Lars-Michael Stransky, Horn
Stepan Turnovsky, Fagott
Dirigent Sir Nevelle Marriner
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モーツァルテウム

同じ日にコンサート二つはざらにあることですが、これが同じホールでというのは珍しいことです。モーツァルテウムも昼と夜の顔は違っていますが、夜といっても開演が7時半はまだ夕方の明るさ。昼間と同様、また中庭で開演を待つことにしました。さすがに夕方ともなると涼しくなりとても爽やか。もう魔笛の小屋は扉が閉まっていました。この時、ホルンの音鳴らしが聞こえてきましたが、それはフィデリオ序曲でした。これがまた滑稽な音色で、ウィーンフィルの方はちょっと冗談がお好きなようです。

今度の席も昼間とほぼ同じあたりで、3列目の右サイド。ここは右よりの席でもステージが良く見渡せます。ステージは例によって木造の椅子が並び、右奥にはウィーンフィルのあの古めかしいティンパニーが置かれていました。今までに海外でウィーンフィルを聴いたホールはムジークフェラインと祝祭大劇場だけ。今回モーツァルテウムで聴けるとは何と贅沢なことかと期待が高まります。なぜならここはムジークフェラインと良く似た響きでとてもコンパクトなのです。床も木で作られていて、ステージのアーチ状の構造は大聖堂の一部分であるかのようで、さぞかし素晴らしい響きが楽しめるのではと予想されます。

そんな期待はぴたりと的中。ハイドンの交響曲「奇跡」はまさしく奇跡的な演奏で音楽の素晴らしさは表現しがたいほど。マリナーの指揮に上手く操られているというよりもマリナーのほうが操られているのではと思うほど、メンバー全員が積極的な演奏を展開しました。コンサートマスターはヒンクさんで、いつもながら乗りに乗っています。第1楽章のハイドンらしい落ち着いた佇まいから、ウィーンの弦でしか表現できないような粋の良さが迸る感じです。右奥から響くティンパニの連打も超ハイファイサウンドで響き、モーツァルテウムの音の良さを改めて実感。やはり何といっても生命力ある活力など、さすがウィーンフィルは昼間に聞いたモーツァルテウムと比べて格段にハイレベルであることは明らか。

続いて演奏されたのはモーツァルトの協奏交響曲で普通はヴァイオリンとヴィオラのヴァージョンが有名。今回は管楽器によるもので、意外や意外、レイアウトはあたかも管楽四重奏かと思わせてしまいます。すなわちソロのクラリネット、ファゴット、オーボエ、ホルンが二人どうし向かいあってステージの一番前に座ります。しかもオーケストラは第1ヴァイオリン=6、第2ヴァイオリン=4、ヴィオラ=4、チェロ=3、コントラバス=1に管楽器少々という室内編成。指揮者はちょうどアンサンブルの真ん中に取り囲まれる形となったのです。

┌───────────┐
│   木管・金管   │
└───────────┘
┌────┐  ●  ┌───┐
│2nd Vn  │ 指揮者 │Vc Ba│
│1st Vn  │ Fa Hr │Va  │
└────┘  Cl Ob └───┘

このレイアウトの指示はマリナーによることは明らかですが、これは面白い演奏になりそうです。結局マリナーは、ソリスト達のほうに向かって左右のアンサンブルにタクトを振り始めました。もちろん振り返って、管楽器奏者たちにも指揮をします。時々譜面台を見ながら指揮する姿はちょっとユーモラスでした。これはひょっとしてモーツァルト時代の演奏スタイルだったのでしょうか。おそらくマリナーはそれなりに研究して今回の演奏に臨んだものと思われます。

レイアウトの効果はソロ楽器が醸し出す微妙な音色の変化とかアンサンブルの息づかいがストレートに客席に伝わることでしょう。四人のソリスト達は時に室内アンサンブルであったり、時に外側のオーケストラとのコンチェルトだったりします。この変幻自在さは音楽に流れをもたらし、極上の響きを楽しませてくれました。そして何よりもプルト数を減らした室内アンサンブルは楽器の持つ響きがクリアーになって、しかも決してフルオーケストラに負けないほどの強力なアンサンブル。ヒンクをはじめ弦楽合奏のパートの弓使いは何時にも増して迫力がありました。コンチェルトでこれだけ踏み込んだ気迫ある演奏は本当に初めての体験でした。もうこんな演奏は滅多に聴くことができないでしょう。

ここで休憩です。夜9時前ですが、まだ外は薄明るくて夏の夜の長さを感じさせてくれます。さてここで気がついたことは、ちょうど前に座っている女性の方はマイヤーさんにそっくりでした。オケのメンバーもそうではないかと時々視線を投げかけていました。

後半はベートーヴェンの2番。なかなか渋いプログラムで、前半のハイドンといいモーツァルトいい極めて優れた演奏だったので後半の演奏がどうなるのかと心配しました。というのは今日はもう前半で感動しすぎたからです。ところがこのベートーヴェンがまた凄い演奏で嬉しい悲鳴をあげたくなるほどの出来でした。

端正なトゥッティと木管の甘い響き、それに弦の吹き上げるようなアンサンブルは強烈にインパクトがありました。常に前進する推進力もさることながら少数精鋭に絞った弦楽アンサンブルは弦が切れるのではと思うほどの気迫のこもったもの。それでいて透明感とか木目の細かさが損なわれないのはさすが。マリナーのテンポも中庸を行く手堅さで、ぐいぐいとオーケストラをドライブして行きます。このベートーヴェンの躍動感は凄かったです。 本当に今日は完全燃焼してしまったような充実感を味わうことが出来ました。 拍手は何時までも鳴り止まぬほどの大歓声が続きました。最後はマリナーがコンサートマスターを引っ張って退場しました。
                               tujimoto

■#3219 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/28 2:43
ザルツブルク音楽祭(5)楽劇『パルジファル』初日  tujimoto

♪ "PARSIFAL"
Buehneweihfestspeil in drei Akten
Grosses Festspielhaus, 3. August 1998 17 Uhr

Musicalische Leitung: Valery Gergiev
 Choreinstudierung : Winfried Maczewski
Amfortas : Franz Grundheber
Tituerl : Franz-Josef Selig
 Gurnemanz : Matti Salminen
Parsifal : Placido Domingo
Klingsor : Nikolai Putilin
Kundry : Waltraud Meier
Blumenmaedchen : Olga Trifonova, Anna Netrebko,
Tatyana Pavlovskaya, Irina Dzhioeva,
Lia Shevtsova, Nadja Michael
Gralsritter : Ferdinand Seiler, Jewgenij Nikitin
Knappen : Christiane Oertel, Alexandra Petersamer,
Toby Spence, Daniel Kirch
Stimme aus der Hoehe: Nadja Michael

Wiener Philharmoniker
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Buehnenorchester der Oesterreichischen Bundestheater
 Toelzer Knabenchor
Szenishces Arrangement:Joachim Rathke
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祝祭劇場とお城今年の夏はショルティ自身の指揮で「パルジファル」が大分前から計画されていたようですが、ちょうど約1年前、ダイアナ妃の後を追うようにショルティも天国に召されました。そして今日がショルティの追悼演奏会となったのです。冒頭に行われた総監督モルティエの演説によると、今日の特別演奏はショルティ夫人が夫の夢を叶えたいとドミンゴやウィーンフィルに話を持ちかけたことによって実現したそうです。それにしても夏のザルツブルクでワーグナーが演奏されるというのは初めてのこと。しかもバイロイトを差し置いて「パルジファル」というのはかなり思い切った決断だったのに違いありません。

結果は大成功で、これほど感動したパルジファルも初めてでした。成功の中心人物はやはりゲルギエフ。昨年のボリス・ゴドノフでウィーンフィルと圧倒的な成功をあげたことからも、今年も間違い無しと予想した通りでした。野獣のような激しい指揮ぶりに対して、ウィーンフィルはあくまでも冷静で、しかも熱く燃焼しました。それにパルジファルとしてこれ以上の敬虔さがあるだろうかと思うほど感動的。ゲルギエフ/ウィーンフィルという新しい息吹も感じることができました。もうコンビは世界最強といっても言い過ぎでは無いかも知れません。

●ショルティ追悼

オーケストラはオペラと同様にピット内で演奏します。ステージには譜面台が横一列に並べられ、すぐ後ろには巨大なスクリーンがありました。このスクリーンにショルティの短いドキュメンタリーが上映されたのです。ザルツブルクでのフィデリオをリハーサルしている場面で、彼のどこまでも精力的な姿が印象的。ステージで歌手達に細かな指示を与えて何度も練習を繰り返しているシーンは老境にあっても常に若々しさを感じさせました。何となくホールは厳粛な気分に包まれました。

●第1幕

10分ほどのドキュメントが終わると、巨大スクリーンが上がり、通常のコンサートステージが現れます。何時もと違うのは反響板の中央が大きく開き、巨大な長方形の空間が淡いコバルト・ブルーに光っていることです。演奏会形式といっても照明の演出付きでした。座席は平土間5列目のやや右よりでゲルギエフの指揮と舞台がよく見渡せます。コンサートマスターは昨晩と同様ヒンクでした。

彼の指揮は独特でした。ゆるやかに指揮棒が回されると、深々とした金管群が朗々と響き、さらに指揮棒の細かな振動が弦の美しいヴィブラートを誘います。時折、唸り声とか「フーッ」という呼吸がこちらの席まで聞こえてきて、彼の気合いの凄さが良く分かりました。ゲルギエフが渾身の力を込めてウィーンフィルを奮い立たせながら、インスピレーションを授けているようです。もちろんウィーンフィルもこれに応えます。 当然、そこから響く音楽は圧倒の連続でした。

淡い照明は朝靄の立ちこめる雰囲気を演出し、中央に開かれた空間にグルネマンツと騎士達の姿がシルエットとなって登場しました。朝の雰囲気は十分で、感謝の念に満ちたグルネマンツの歌は感動的。グルネマンツは今年2月のN響パルジファルでも歌ったサルミネンで、今回はひときわ威厳に満ちて立派です。その声量は実に豊かで、広い祝祭劇場を引き締めています。マイヤーは黒のドレス姿でクンドリーが良く似合っていました。彼女だけが暗譜で歌っていたのはさすがです。舞台右の片隅に腰を掛けている時も独特の存在感を放ち、黙っていてもクンドリーという感じでした。

グルントヘーバーも素晴らしいアンフォルタスを演じました。水浴びの場面と聖杯の場面とで聞く歌はいずれも真に迫るもの。特に水浴の場面ではウィーンのあの甘いオーボエが朝の感動を克明に表現し、アンフォルタスにも一抹の希望が感じられました。この時、ゲルギエフが醸し出した音楽は実に瑞々しく生命の尊さがひしひしと伝わります。また一方で聖杯城でのアンフォルタスは激しく葛藤する様子が実に痛ましい。

さて聖杯城への場面転換では照明がコバルトブルーから暗黒に変化し、シンセサイザーによる鐘が鳴り響くなか騎士たちが左右から登場しました。音楽の鳴りは最高潮に達しティンパニと金管の炸裂さらには重厚な弦のアンサンブルは厳かな儀式へと招きます。特に印象的なのはウィーンフィルの弦の素晴らしさでした。

聖杯の場面でも照明は黒で、聖杯が開かれる時だけは客席が完全に真っ暗にされました。舞台だけが照明を浴び、そしてより照明を増すことで聖杯の輝かしさを演出するのです。神々しい少年合唱が高い天井から聞こえてきましたが、どうもテルツ少年合唱団が舞台裏に控えていてその合唱がスピーカーを通し聞こえて来るようでした。最初は違和感を感じましたが、オーケストラとのバランスが良くてまさに天上からの合唱に聞こえます。

かくして、第1幕が厳粛に終わりました。 今日はショルティ追悼でもあり、しかもバイロイトでは拍手禁止の「パルジファル」です。ここは拍手したくはありません。 ゲルギエフもしかり。 彼は静かに指揮棒を降ろすと観客席に振り返らずに、静かに静かに忍び足でピットを去ってゆきました。 でもここはザルツブルクで華やかさが売りの音楽祭です。拍手はあちらこちらから大きく広がってゆきました・・・

●第2幕

25分ほどの休憩の後はクリングゾルの世界が始まりました。ここでは第1幕の真っ暗な窓空間からスタートします。プチーリンのクリングゾルもなかなのものでしたが、周囲のキャストが豪華すぎて今一つ印象に残りません。第2幕はパルジファルとクンドリーがもっとも焦点を浴びるわけですが、ドミンゴのパルジファルもなかなか立派でそれなりの歌と演技でした。活躍のピークはすでに過ぎてはいるものの今回は力演だったと思います。

マイヤーは最初黒のドレスでしたが、花の乙女達と現れる時は黄色のドレス姿でした。胸元まで大きく開かれ、まさに花を思わせる姿がとてもセクシーです。背景の長方形空間は真っ赤に変化し、クンドリーの黄色がさらに鮮やかに冴えわたりました。視覚的にも魔界を感じさせるものでしたが、その歌は最高に素晴らしいもの。パルジファルを誘惑する微妙な心理がごく自然にしかもリアルに伝わってきます。彼女は歌ばかりでなくクンドリーとしての役柄にはまりきっていました。

6人の乙女たちもそれぞれカラフルなイブニングドレスを着てマイヤーの左右に3人づつ並びました。乙女達は若い美女ばかりを選んだようで、とても華やかです。それに後ろにならんだ女性合唱もそれぞれカラフルな私服姿で、衣装の色彩が花園を演出していたのは面白いアイデアでした。

第2幕後半からはクンドリーの独断場で、オーケストラの激しい演奏と火花を散らし、観客はただ圧倒されるだけ。とくに第2幕でこれほど驚異的なクンドリーは初めての体験。昨年のリンデン・オーパー日本公演でも彼女が演じたクンドリーは凄かったですが、それを遥かに凌ぐ凄さでした。第2幕が終わった時、怒濤の大喝采となったのは彼女への賛辞としてごく自然ななりゆきです。もうここで第1幕でのあの拍手を自粛するといった雰囲気は全く消えていました。

●第3幕

第2幕の終盤、花園が消え去る時は背景のスクリーンが黄色から淡いコバルトブルーへと変化しました。第3幕はその照明から開始されます。前奏曲が進むに従い、照明は鮮やかなクリーンに変色し、森の場面を演出。ここからはサルミネンが圧倒的なグルネマンツを演じます。ドミンゴも清らかなる愚者から救済者への変化を上手く表現し、それにまして聖金曜日の音楽は極めて崇高でした。

場面転換は第1幕と同様の照明演出で進展し、いよいよ最も感動的な儀式を迎えます。もうこれは演奏形式を遥かに超越しオペラ以上にドラマティックでした。簡単な照明効果と名歌手たちの歌と演技はまさにワーグナーが理想とした楽劇に近いていたと思います。ザルツブルクではいわゆるワーグナー音響は不可能ですが、ゲルギエフ/ウィーンフィルは場面ごとにモノトーンとカラフルな音色を使い分け、我々を壮大で荘厳な音響宇宙へ招きます。それに大音響にも決して負けない歌手達が織りなすドラマは神々しいまでの感動を与えてくれたのです。

パルジファルに下手な舞台は要らないとは良く聞く言葉ですが、今日は本当にその言葉が当てはまった演奏だと思います。ドラマが昇華すると演出は象徴的なものを求め、さらにはそれはアートグラフィックや照明だけだったりします。さてパルジファル初日のカーテンコールは言うに及ばず盛大に盛り上がり、特にマイヤーが登場した時はピット越しに大きな花束が投げ入れられました。もちろんゲルギエフにも大きな拍手が浴びせられていました。

(PS)
この日の深夜12時半頃のORFチャンネル2では早速この日の模様が報道されました。ちょうどマイヤーへの花束の場面もテレビに写っていて、またあの興奮が甦ってきます。今回夏のザルツブルクでワーグナーが上演されたのは特別なことであって、今後ともワーグナーは容易く上演されることはないでしょう。そういう意味でも今回はとても貴重な体験ができました。
                               tujimoto

■#3228 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 8/31 1:16
ザルツブルク音楽祭(6)バロック・コンサート    tujimoto

♪KONZERT in der Johan-Michael-Haydn-Gedenkstaette
am Dienstag 4.August 1998,17.00 Uhr / Erzabtei St.Peter

"Les Nations Salzburg"
Birgit Meisenburg, Barockoboe
John Lutterman, Violincello
Lorna Peters, Cembalo

・Francesco Saverio Geminiani(1687-1762):
Sonata Nr.3 in C-Dur fuer Violoncello und Cembalo
・Johann Sebastian Bach(1685-1750):
Sonata fuer Oboe und Cembalo g-moll,BWV 1020
・Johan Jakob Froberger(1616-1767):
Suite Nr.6 C-Dur fuer Cembalo
・Johann Sebastian Bach(1685-1750):
Suite Nr.1 G-Dur fuer Violoncello solo
・Thomas Vincent(1720-1783);
Sonate Nr.2 a-moll fuer Oboe, Violoncello und Cembalo
----------------------------------------------------------------------

ハイドン記念館ポスターハイドンといえば通常、ヨーゼフ・ハイドンが有名ですが、弟のミヒャエル・ハイドンも作曲家でした。彼は大半をザルツブルクで暮らしてオルガン奏者として活躍したそうです。彼はセント・ペーター教会の中庭に連接する建物の一角に住んでいました。そんなことから現在の教会の中庭を隔てた対面の一角にミヒャエル・ハイドン記念館が出来ています。

ここでは毎週木曜を除く毎日、夕方5時から1時間程度のコンサートが開催されます。これを知ったのは昨日の午前中、レジデンツ美術館へ行く途中にペーター教会横で見つけたポスターのおかげでした。たしか昨年も同じポスターを見たことがありましたが、あまり時間も無かったので気に止めていませんでした。しかしよく見ると、とても面白いプログラムが並んでいました。

ポスターが示す矢印の方へ行って行見ると、小さな半地下の一室があります。ここがコンサート会場で、そこから少し離れたところが受け付け。とりあえず明日8月4日のチケット(120シリング)を買いました。チケットを買うとノートに名前を書くようにと言われました。購入者の名前を書いたカードを当日の座席に置いておくそうです。面白い座席指定方法ですね。

日は変わって演奏会当日の夕方、のんびりとザルツァッハ河畔を歩いてペーター教会へ向かいます。やはり日が差すと暑いので日陰側を歩くことにします。夕刻になると日が少し傾き、ホーエンザルツブルク城の威容がとても立体的です。紺碧のザルツァッハとのコントラストが鮮やかで、素晴らしい眺めでした。

会場は五角形の小部屋でやや広いコーナーにステージがあります。既に女性の方がチェンバロを調律中でした。この方はペーターズさんといって今日のチェンバロ奏者。レ・ネイションズ・ザルツブルクという古楽アンサンブルはモーツァルテウム出身の音学家たちが作る古楽アンサンブルで、今日はペーターズさんの他に女性オーボエ奏者のマイセンベルクさんに、チェロのルッターマン氏が出演します。

最初の曲はジェミニアーニのチェロ・ソナタ。バロック・チェロは床に固定する支柱が無く、膝で支えて演奏するのですね。見ているとちょっと不安定なようにも見えましたが、ルッターマンは軽々と演奏します。ピッチは高めでかなり弓が擦れる音が刺激的でした。時々、音程が上ずっているようですが、チェンバロとの響きがとても優雅です。コーナーで演奏しているせいか、強い反響が狭い室内に響きます。バロック楽器は小さな音かなと思っていたのですが、こんな環境で聞かされると充実感があります。壁にはハイドンとか家族の肖像もあって、遠い昔をイメージするには十分な雰囲気です。特にマイセンベルクさんは昔の衣装で出演されたので、ハイドン時代の光景を思い浮かべました。

大司教銅像そのマイセンベルクさんが演奏したのはバッハのオーボエ・ソナタで、ストレートな音色に微妙なニュアンスも加わり、とても美しい演奏でした。古楽は滅多に聞くチャンスが無いので、このような場で聞けることはとても嬉しいです。

演奏はソロもまじえて進み、最後のヴィンセントのソナタが三重奏となります。四楽章形式の結構立派な曲で、古楽アンサンブルらしさでは一番良かったです。アンコールにはバッハのオーボエ協奏曲が三重奏で演奏され、終了したのは午後6時を少しまわりました。さて今日の夜はミュージカル「SOON」を見ます。会場までは送迎バスが出るので、これから軽く食事でもしてからバス・ストップへ向かいます。バスは7時出発なので余りのんびりとは出来ません・・・

                               tujimoto

■#3237 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 9/ 2 8:17
RES#3234>ザルツブルクのワーグナー     tujimoto

Ωさん
>ところで、ザルツブルクでのワーグナー演奏ですが、
>夏の音楽祭に関しては、記録を見てみますと、
>戦前には上演されているようです。


>タンホイザ−
> 1938(4回) クナッパーツブッシュ指揮

>トリスタンとイゾルデ
> 1933(3回) ワルター指揮
> 1934(3回) ワルター指揮
> 1935(1回) ワルター指揮
> 1936(1回) ワルター指揮

>マイスタージンガー
> 1936(4回) トスカニーニ指揮
> 1937(3回) トスカニーニ指揮
> 1938(4回) フルトヴェングラー指揮

>いずれも豪華な指揮者陣で、全曲の録音が残されていればなぁ
>と思わされます。

貴重な情報ありがとうございました。戦前にワーグナーが夏のザルツブルクで上演されているというのはΩさんの情報で初めて知りました。 とても参考になります。

それにしても凄い指揮者が並んでいるものですね。これでタンホイザー、トリスタン、マイスタージンガ、パルジファルと4つ上演されたことになりますが、さすがに指輪を夏のザルツでというのは難しそうですね。

>ですが、ショルティはザルツブルク復活祭音楽祭で1995年に
>マイスタージンガーを上演したがっていたそうですね。
>ところが、夏の音楽祭での上演に関しては、モルティエからあっさり
>断られ、結局、お流れになり、ショルティ自身も、イースターの

実に惜しい話ですね。モルティエは音楽祭にある種のテーマを持たせようとしますから、指揮者とか演出家と折り合いがつかないのかも知れませんね。貴重な情報ありがとうございました。
                       tujimoto

■#3238 芸術劇場 (ID:HTC99447@biglobe.ne.jp) 98/ 9/ 2 9:38
ザルツブルクのトスカニーニ  ダノン

>Ωさん

>マイスタージンガー
> 1936(4回) トスカニーニ指揮
> 1937(3回) トスカニーニ指揮
> 1938(4回) フルトヴェングラー指揮

>いずれも豪華な指揮者陣で、全曲の録音が残されていればなぁ
>と思わされます。

 トスカニーニの録音は結構残っております。

 まずは1936年8月8日
  第1幕   LP:UORC 257
  第3幕抜粋 CD:Eklipse EKR 54
    Hans Hermann Nissen,Lotte Lehman,Charles Kullman

 1937年8月5日
  全曲 CD:Eklipse EKR 54
    Hans Hermann Nissen,Maria Reining,Hermann Wiedermann
 1937年8月20日
  全曲 LP:MRF16
    Hans Hermann Nissen,Kerstin Thorborg,Maria Reining

 ただこの1937年の録音は同じ日の物ではないかと言われています。

                               ダノン

■#3241 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 9/ 4 12:41
ザルツブルク音楽祭(7)ミュージカル『SOON』  tujimoto

●"SOON" MUSICAL PLAY BY HAL HARTLEY
Urauffuehrung ・Perner-Insel Hallein / 4. AUGUST 1998 20.Uhr

Text / Inszenierung : Hal Hartley
Musik : Hal Hartley
: Jim Coleman
Buehnenbild / Kostueme : Steve Rosenzweig
Licht-Design : Jim Clayburgh
Sound-Design : Andrew Russ
Associate Producer : Sophie Haviland
Production Manager : Lisa Porter
Choreographie : The Company
Zusaetzliche Choreographie: David Neumann
mit
Gretchen Lee Krich
Elina Loewensohn
D.J.Mendel
Chuck Montgomery
David Neumann
Miho Nikaido
Thomas Jay Ryan
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カルテンビューローザルツブルク音楽祭でミュージカルが取り上げられるのは初めてで、モルティエもついにここまで手を伸ばすのかと驚きました。昨年発表されたプログラムによると、「SOON」とは世界終末に備えて聖書を説く預言者たちの物語と説明されていました。さらにこれは1993年のテキサス、ワコーで起きたキリスト教徒福音の事件にヒントを得たものだそうです。これだけではどんな内容なのか不明ですが、とりあえずミュージカルも見てみたいと思いました。

●ペルナー・インゼルへ

会場のペルナー・インゼルはザルツブルクの南のハラインという町にあり、そこまでは送迎バスが出ますが、バスの発着所が分かりません。音楽祭のカルテン・ビューローに聞いたところ、メンヒスベルクのトンネルを越えて右折したところが発着所だと教えてくれました。ちょうどそのビューローから歩いて5分程度の所です。

バス出発の7時少し前に行ってみると大型バスが2台並んでいました。バスの中は英語がよく飛びかっていたので、米国の人がかなり乗っているようです。夏の午後7時はまだ昼間の明るさで、緑一色の草原が太陽に輝いています。ザルツカンマーグートの山々が昼間に比べてよりくっきりと神々しく感じられました。

ハラインという町はデュルンベルク岩塩坑が近くにあります。バスはザルツァッハ支流の川沿いの道に入り込み、町をさらに通り抜けます。このあたりは山間部のリゾートという雰囲気で川で水遊びしている人々の姿が見えました。道はデコボコのジャリ道に変わり、砂ぼこりが飛びかう広場に出ましたが、ここはザルツブルク郊外とはとても思えない荒野。西部劇に出てきそうなお粗末な建物が目の前にあります。建物は巨大な平屋という感じで工場のよう。壁に大きなポスターが掲げられていました。これはウィスコンシン州立歴史ソサイティというタイトルが付けられた写真で、写っているのは開拓時代のとある5人家族。これが今日のミュージカルにどう関係するのか全く分かりません。

SOON会場に入るとそれは集会場のような工場のような訳のわからない所です。いちおうザルツブルク音楽祭らしく仮設のビュッフェとかバーはあるようです。プログラムを買ってあらすじを読みます。なにしろ事前の知識は一切ありません。それによると、あらすじは次のようなものでした。

●あらすじ

信仰について語り合っていた人々は終末を予言する聖書を見つけた。そこから神の憐れみにより144,000 人だけ助かることを知る。 しかし終末はやってこない。ある若い女性は集会にて彼女の夢を説く。ある男性も彼の夢を説こうとするが、彼は追放される。

若い女性は放浪の伝道師と彼の弟子達をからかうが、伝道師は彼独自のコミュニティを作り始める。しかし彼は死ぬ。 若い女性は彼と結婚していたので、皆は彼女を新しい預言者にしようとする。彼女は拒否するが、夫が夢に現れ、預言者になるよう勧める。

預言者になった彼女には息子がいるが、彼は挫折して信仰に疑問を持つ。見知らぬ人がやって来て、次第に彼女と恋に陥る。皆は彼の変わったヴィジョンに感銘するが、預言者との恋について告訴する。しかし彼女は失意のうちに死ぬ。次はあの見知らぬ人が預言者となり、全ての女性を彼の妻にしてしまう。そして彼はピストルの商売を始める。

世間はこの集団を怪しいと思い始める。預言者は子供たちを集会から開放することを約束した。しかし法律のもとに襲撃が開始される。 預言者は降参することを皆に説くが、集会は降参しないようにと預言者に懇願する。

以上があらすじで、これはテキサスで実際に起こったBranch Davidian によるカルト事件を題材にしているとのこと。なぜこんな危ない題材をミュージカルにしたのか、しかもザルツブルク音楽祭に世界初演として上演するのかはよく分かりません。ハル・ハートレイは主に映画制作で活躍していて、冷静な視点で描写するのが得意なので、このような身近に起こった題材を選んだのかもしれません。

●上演内容

SOONペルナー・インゼルの中は広く、高い天上にはクレーン用のレールが引かれていました。やはりここは何かの工場のようです。 正面には巨大なガラスの屏風が床から天上まで伸びています。ところどころ照明がガラスの向こう側から照らされていて、幻想的な雰囲気が漂っていました。

衝撃的な音楽でドラマが開始され、登場人物たちがドラマを演じて行きます。全体に身のこなし方が独特で、ロボットのように無機的な雰囲気を感じました。彼らの中にも狂信的な者、冷静沈着なリーダーなど個性の寄せ集めのようでした。

彼ら全員は、長い棒に取り付けられたマイクを持っていて、お互いにマイクを向け合って会話を交わしていました。これは聖書を翻訳し合っていることを強調する為でしょうか。また最後の審判ならぬ世界の破滅に恐れを示すなど、人間をあからさまに描こうというポリシーも感じます。ストーリーは良く分からない取り留めもないものですが、強烈な電子音楽と演技上の振付が見事でした。シンプルな舞台と象徴的な演出はなかなかのものでオペラにも通じるものがありました。

ガラスの屏風は何カ所で回転扉のように開閉できて、照明効果が加わることで、いろんな場面を描写しているのは面白いアイデアです。またいわゆる歌といったものが一切なくて、音楽とセリフ、演技だけでストーリーが展開されます。1時間45分と休憩なしで演じられたミュージカルはかなり異色なものでした。終演後は再びバスでザルツブルクに戻りますが、ここでかなり強い雨となりました。30分ほどで帰ってきましたが、この時はもう雨が上がっていました。
                                tujimoto

■#3250 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/ 9/14 0:30
ザルツブルク音楽祭(8)歌劇『マハゴニー市の興亡』 tujimoto

♪Kurt Weil,"AUFSTIEG UND FASS DER STADT MAHAGONNY"
Oper in drei Akten ,Text von Berolt Brecht
Grosses Festspielhaus, 5.August 1998 20. Uhr

Musikalische Leitung: Dennis Russell Davies
Inszenierung : Peter Zadek
Buehnenbild : Richard Peduzzi
Kostueme : Norma Moriceau
Licht : Dominique Bruguie`re
Choreographie : Verena Weiss
Choreinstudierung : Winfreied Maczewski

Leokadja Begbick : Roy Cornelius Smith
Dreieingkeitsmoses : Wilbur Pauley
Jenny Smith : Catherine Malfitano
Jimy Mahoney : Ferry Hadley
Jakob Schmidt : Udo Holdorf
Sparbuechsenbill : Dale Duesing
Alaskawolfjoe : Harry Peeters
Tobby Higgins : Toby Spence

Radio Symphonieorchester Wien
Konzetverinigung Wiener Staatsopernchor
Neun Maedchen : Annabell von Arnim,June Card, Sona MacDonald,
Stella Fuerst, Barbara Hannigan,Zazie de Paris,
Jo Ann Pickens,Michaela Pilss, Annett Renneberg
Acht Maenner : Hudson Shad, Peter Becker, Mark Bleeke,
Timothy Leigh Evans Hugo Munday,Marc Schreiner,
Joel Frederiksen, Nathaniel Watson, Eric Edlund
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今日はオペラ1本だけで、しかも開演が20時なのでゆっくり出来そうです。たまには遠出でもしようとヘレン・キームゼーへ行こうと計画していましたが、この日は朝から雨になってしまいました。結局、ザルツブルクでのんびりとした訳ですが、昼からは信じられないくらいに晴れ渡りました。

マハゴニー「マハゴニー市の興亡」は滅多に聞けないオペラです。KAZUさんはMETでご覧になられたそうですが、メジャーオペラハウスでも上演されることは珍しいようです。さて今年の音楽祭ではアートグラフィックを特徴とするオペラが2本上演されますが、そのうちのひとつが「マハゴニー」で、もうひとつは「アッシジの聖フランチェスコ」。またマハゴニーはバビロンを舞台に現代社会を描写した設定になっていました。

演出家ペーター・ツァーデクの語るところによると、クルト・ワイル作曲のこの作品は「三文オペラ」よりもずっと面白く、仮想都市マハゴニーは我々の世界だそうです。ストーリーはこの世は全てお金で回っていて、お金を持っていないことは最大の犯罪というもの。しかもお金を払えない者は抹殺されるという大胆な内容です。現代社会も実はマハゴニーとそっくりで、ツァーデクはその縮図をマハゴニーに見ることができると指摘します。

●あらすじ

(第1幕)
マダム・ベグビック、三位一体のモーゼス、ファッティの三人組はおたずね者で警察に追われて逃げのびて来ました。ここで快楽の都市マハゴニーを作って一儲けしようと企みます。そのうち売春娘たちが住みつきマハゴニーの評判が広まりました。アラスカで金を稼いできたジム、ジャック、ビル、ジョーの四人組もマハゴニーへやって来ました。ジムは売春婦のジェニーと良い仲になりますが、彼は退屈な生活に飽きてきました。マハゴニー市には細かな禁止令が沢山あって、彼は法律の堅苦しさに不平不満を爆発させます。ついにマダム・ベグビックから自由に振る舞って良いとの許可を得ました。

(第2幕)
台風さわぎがあったものの、マハゴニーは大いに繁栄します。食べて、セックスしてボクシングを楽しむという快楽を求めて男たちが群がり、ますますマダム・ベグビックは金持ちになります。ある時、調子にのったジムはマダム・ベグビックの店で皆に酒をおごりまくりましたが、金が無くて支払えませんでした。ジムは逃げようとしますが、モーゼスに捕まってしまいます。

(第3幕)
マハゴニー市の裁判ではマダム・ベグビックが裁判官、モーゼスが検事でファッティが弁護士。ここの裁判はちょっと変わっていて、賄賂を裁判官に払えば無罪になります。殺人犯のトビーは金を持っていたので無罪になりましたが、ジムはどうしても金を工面出来ませんでした。結局、間接殺人罪、騒乱罪、婦女誘惑罪などの罪状が読み上げられ、とどめは飲み代を支払えなかったことで死刑が宣告されてしまいます。ジムが電気椅子で処刑され後、マハゴニー市の物価は上がり街は混乱してきました。プラカードのデモが出没し、マハゴニーの没落を暗示してオペラは終わります。

●舞台について

以上のように取りとめもないストーリーですが、これがまたとても面白いオペラでした。  ものでした。座席は最前列でステージに近い分、横長ステージがさらに横長になった超大パノラマが楽しめました。ペドゥッツィによる舞台セットはアートグラフィックを基本にして、すっきりと広大なステージでスペクタクルさを楽しませてくれます。特にザルツブルクの横長舞台を使いきるのは難しいと思いますが、「WELCOMETO MAHAGONNY」の垂れ幕をステージ幅一杯に広げる演出は見事!他にもステージ狭しと縦横無人に駆け抜ける演出に圧倒されました。ヴェルニケの「ボリス」やシュタインの「ヴォツェック」にも匹敵するアイデアだと思いました。

第1幕ではおたずね三人組がおんぼろトラックでやってくる場面ですが、トラックなどは省略して、必ずしもト書の通りではありません。照明効果と垂れ幕に描いた絵を巧みに駆使し、すっきりとシンプルな舞台が展開します。また舞台の左側にはバーが出現し、建物が左右から移動してきて、場面転換はスピード感あるものでした。これはちょうどパトリス・シェローの「ヴォツェック」なんかに手法が似ています。

それと面白いのはスフィンクスならぬ巨大な像が左右に置かれ、さらにバビロニアを思わせるオブジェが登場しました。ベグビックによるとマハゴニーは砂漠に作ったほうが儲かるらしいです。川のある都市よりも砂漠の都市の方がオアシスとしての価値が高い為でしょう。ツァーデクはこれをバビロンで表現しようとしたのでしょう。KAZUさんの指摘によるとバビロニア時代のこの付近は砂漠ではなくて、緑が茂るオアシス地帯だったはずとのこと。さすがにツァーデクはそこまで考えなかったようで、舞台は青空に砂漠色を基調としていました。街を作った三人組はスーツ姿のヨーロッパ風で、流れ者たちはジーパンのアメリカ風という対比も面白いと思いました。

舞台で不可解なものはバビロンに突然現れたNYの自由の女神。時々舞台の奥で左右に移動する様子は愛嬌があって滑稽でした。自由の女神は資本主義の象徴でもあって、これをマハゴニーに登場させたのは現代とマハゴニーは同じだと言いたい為でしょう。さて自由の女神て何時作られたのでしょうか?ひょっとして1930年代には既に建てられていたようにも思えます。もしワイルが今日の舞台を見たならば、きっと笑いこけるに違いありません。今日の最終場面で「自由の女神」が宙に浮き上がってしまいましたが、何を言いたいのか大体想像がつきます。それにしても大胆な演出でした。

●音楽について

歌手ではマルフィターノとハドレーが素晴らしかったです。マルフィターノはロイヤルオペラでのサロメが有名で、何でも太股を見せる演出が好評だったとか。今日もそれに違わず、ちょうど真正面でチラチラしていました。それにしても彼女の声量は立派で安定したソプラノでした。ハドレーは多少荒っぽい役柄にぴったりの歌手だと思いました。大きな胸板からはいくらでも歌を吐き出すことが出来そうなくらいパワフル。それにちょうど座席の右側近くでオーケストラピットの壁にのし上がり客席へ流れ込みましたが、すぐ側で歌われると耳にガンガン響くほどの声量でした。

何と言っても今回の話題はギネス・ジョーンズの登場だと思います。ワーグナー歌手としてではなくて、よりによってマハゴニーのマダム・ベグビックとは誰も想像できなかったに違いありません。ホテルに置いてあったホテル・マガジンには彼女のインタビューが載っていましたが、彼女は面白いことを言っています。

ジョーンズは小さな頃からベックのニックネームで呼ばれていたそうです。だからベグビックという名前に何となく愛着があるとのこと。さらに父親は「乙女の祈り」という曲をピアノで弾いて、毎日彼女に聞かせていたそうです。ジョーンズはマハゴニーのスコアを見て、その旋律が使われているのを知って驚いたそうです。父親が忍ばれそうで、何となくマハゴニーに惹かれるものがあるとか。そんな訳もあって、ここは新しいジャンルへ挑戦しようということになったそうです。ちなみに「乙女の祈り」のピアノピースは第1幕9景で演奏されますが、ツァーデクの演出では自動ピアノで演奏されました。

さてデーヴィスの指揮とORFによる音楽はこれまたダイナミックで素晴らしかったです。全員、私服姿でどこかのオーケストラ練習風景程度にしか見えませんでしたが、これがなかなかの演奏でした。丸い胴体のギターのような楽器のバンジョを指揮者の前に配置し、これがまた独特の雰囲気を作っていました。なんとなく怪しげな響きをもちながら1900年代初頭の何となく退廃的なイメージも十分でした。

音楽的に素晴らしかったのは第2幕、売春宿での場面でした。ここでは舞台右側のバンダが大活躍し、現実と虚構が交錯するようなスリル感に溢れていました。この時ピットのオーケストラは暇な方が多く、手の開いている人は皆ステージのヌーディスト達をじっとご覧になられていました。それとこのオペラはほとんどコメディなのでオーケストラの人もドラマを見ながら笑っていました。

アラバマの月とかの名曲やジャズもあったりする不思議なオペラでしたが、ミュージカルの乗りで凄く楽しいドラマでした。カーテンコールの喝采も盛大で、マイナーなオペラをこれほど面白く、しかも音楽的にも圧倒する迫力を感じさせてくれたのは素晴らしい。8時から始まり、途中1回だけの休憩をはさんで2幕と3幕は連続して上演されました。終わったのはちょうど11時です。
                               tujimoto

■#3266 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/10/ 3 2:46
ザルツブルク音楽祭(14)フェストシュピーレマガジン tujimoto

モーツァルト像●FESTSPEILE MAGAZIN 98

グロッケンシュピールからゲトライデ通りへ向かうのにユダヤ通りを歩いていると露店で雑誌とか新聞が売られているのを見かけます。ちょっとここで、音楽関係のものが無いかと見ていると、フェストシュピーレ・マガジン98というのを見つけました。45シリングで夏のヨーロッパの音楽祭のスケジュールとか情報が満載で、今年の出演者のインタビューや特集が沢山組まれていて結構おもしろい内容でした。

●DIE BESTEN

雑誌の一番最初に企画されていたのはベスト演奏家のリストです。これは今年の音楽祭に登場するアーティスト達について、評論家、音楽マネージャー、音楽関係者などから票を集計し、ベスト・ランキングに並べたもの。絶対的な評価ではなくて、昨年の評価を基にして予想した人気度ランキングとのことで、下記のように記載されていました。

   (女性歌手)           (男性歌手) 3大テノール除く
1.ルネ・フレミング         1.ブリン・ターフェル
2.ヴェッセリーナ・カサローヴァ   2.ニール・シコフ
3.チェチーリア・バルトリ      3.サミュエル・レイミー
4.ワルトラウト・マイヤー      4.ラモン・ファルガス
5.エディタ・グルベローヴァ     5.トーマス・ハンプソン
6.マリア・グレギーナ        6.ヴィンセン・ラ・スコーラ
7.バルバラ・フリトーリ       7.ホセ・クーラ
8.ナタリエ・デッセイ        8.ルネ・パーペ
9.チェリル・ステューダー      9.ロベルト・アラーニャ
10.カリタ・マッティラ        10.ウラディミール・チェルノフ
11.クリスティーネ・シェーファー   11.ジェリー・ハドレー
12.アンネ・ゾフィ・フォン・オッター  12.ペーター・ザイフェルト
13.シルヴィア・マクネイヤー     13.イアン・ボストリッジ
14.バーバラ・ボニー         14.ボー・スコヴハス
15.ユゥン・ファン          15.ミヒャエル・シェーデ

  (指揮者)             (演出家)
1.リッカルド・ムーティ       1.ピーター・セラーズ
2.ニコラウス・アーノンクール    2.ヘルベルト・ヴェルニケ
3.サイモン・ラトル         3.ペーター・シュタイン
4.ヴァレリー・ゲルギエフ      4.アヒム・フライヤー
5.マリス・ヤンソンス        5.ロバート・ウィルソン
6.ジョン・エリオット・ガーディナー  6.パトリス・シェロー
7.フランツ・ウェルザー・メスト   7.ペーター・ツァーデク
8.クリスティアン・ティーレマン   8.ペーター・ブルック
9.クラウディオ・アバド       9.カール・エルンスト・ヘルマン
10.ロジャー・ノリトン        10.リュック・ボンディ
11.ズービン・メータ         11.ヨハネス・シャーフ
12.ジュゼッペ・シノーポリ      12.イェロメ・サヴァリ
13.ケント・ナガノ          13.クラウス・ペイマン
14.ロリン・マゼール         14.ハリー・クップファー
15.ローザー・ツァグロセク      15.ユルゲン・フリム

レイミーが人気ランキングにあがっていましたが、結局今年の音楽祭もキャンセルしてしまったのはとても残念。早く復帰できることを期待します。指揮者ではやはりムーティがすごい人気のようです。

●STARS & STORIES

ランキングにリストアップされた歌手や指揮者の簡単なインタビューと写真で綴った「スター&ストーリー」も面白い内容で、普段余り見かけないスターたちの一面が紹介されていました。マイヤーがバイロイト祝祭劇場の木の下に座り込んでいる場面、ターフェルが山歩きしている姿、イラストレーターとなったボータやゴルファーになったハウラータなどなど。皆さんそれぞれ夏休みを楽しんでいるようです。

●PHILHARMONISCHER SOMMER

ザルツブルクに長期滞在するウィーンフィルのメンバーたちの生活ぶりも紹介されていました。サッカーな好きな人は音楽祭ロゴユニフォームに身を固めて汗を流したり、ウォルフガングゼーなどの郊外や牧場で暮らしたりと自由に楽しまれているようです。中には書斎ごとザルツブルクに持ち込み、本に囲まれた生活に没頭する方もおられ、パイプをふかしながらの読書姿は滑稽・・・

さてザルツブルク滞在もあと僅かとなりましたが、前半に比べて天気が安定してきました。今日はこれから昼のコンサートに出かけます。
                                tujimoto

■#3267 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/10/ 3 2:47
ザルツブルク音楽祭(10)メロス・アンサンブル    tujimoto

♪MELOS ENSEMBLE-SALZBURG
Groriensaal Residez-Neugebaeude, 6.August 1998 12.15 Uhr

Gottfried Linsinger, Oboe
Eberhard Staiger, Violine
Heidi Staiger, Violine
Claudia Knapp, Viola
Herbert Pascher, Violoncello

W.A.Mozart Quartett fuer Oboe, Violine, Viola
und Violoncello in F-Dur,KV370
Joseph Haydn Quartett fuer 2 Violinen, Viola und
Violoncello in g-moll, Opus74,3 "Reiterquartett"
W.A.Mozart Quintett fuer Oboe, 2 Violinen, Viola und
Violoncello in c-moll, KV406
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メロスアンサンブルいよいよザルツブルク滞在も終盤。今日のカーチャ・カバノヴァーと明日のドン・カルロで今回のメニューが終わってしまいます。なんと時間の経つのが早いことでしょう。今日は夕方に人形劇をみるので2本立ての予定でしたが、ここは貪欲にもっと演奏会、できれば室内楽を聞いてみたくなりました。今朝のザルツブルガー・ナハリヒテンのコンサート案内を見ていると、ちょうど手ごろな室内楽があります。ノイエ・レジデンツでのモーツァルト・マチネーでメロス・アンサンブルとなっていました。昼食前の耳慣らしにぴったりです。

少し早くホテルを出てマリオネット劇場に立ち寄り、インターネットで予約した「くるみ割り人形」のチケットをピックアップ。路地を歩いてモーツァルト広場に出ると、有名なグロッケンシュピールの建物がすぐ側にあります。今日の会場はここで、とりあえず当日券を求めて建物に入ります。内部は大きな中庭になっていて、さらにコンサートのポスターの示す入り口に向かいます。途中、階上の窓から素晴らしく響きの良い弦楽アンサンブルが聞こえてきました。メロス・アンサンブルがリハーサルしているのでしょう。

チケットは200シリングで、自由席になっていました。とりあえず未だ時間があるので、階段をひとつ降りたフロアで開催されていたアンサンブル・モデルン展を見ることにします。受け付け嬢に現代音楽のアンサンブル・モデルンと何か関係があるのかと質問したところ、全く関係無いとのこと。美術展はEnsemble Moderneと綴り、音楽のほうはEnsemble Modern と"e"が有るか無いかの違いだと教えてくれました。この展示は音楽と同様、前衛でした。ペンキでいろんな色を塗っただけでも何かまとまりと躍動があって、なるほどと関心しました。絵画だけでなく別室には現代アートクラフトが飾られ、部屋全体が前衛。こんな部屋に暮らすと音楽も前衛を聞きたくなるかも知れません。

いよいよ開演が近づいたので、会場へ向かいます。宮殿というほど豪華な雰囲気はなく、飾り気のないフロアで扉が開くのを待ちます。その間、仮設バーでドリンクをどうぞと勧められました。ワインとオレンジジュースなどが置かれていて、フリーサービスでした。さて実際の会場は白塗りのシンプルなロココ風の広間です。椅子は当時のデザインで、とても座りやすいもの。壁には歴代の司教の肖像画が何枚も飾られ、雰囲気は当時へタイムトリップしたように錯覚します。

メロス・アンサンブルはモーツァルテウム出身の若手演奏家が結成するアンサンブルで、メンバーはカメラータ・アカデミカや遠くは南アフリカ歌劇場で活躍されているようです。最初のオーボエ四重奏はオーボエの甘い響きがとても心地良いものでした。弦の響きは歯切れが良く、室内に反響する音楽はとてもヴォリューム感がありました。やはりこういった室内楽を響きの良い部屋で聞く素晴らしさを実感できます。

続くハイドンのクァルテットはリズミカルで四人が歯車のようにぴったりと噛み合った演奏。それでいて音楽を楽しんでいるというリラックスさも感じます。終楽章の迫力もなかなかのものでした。

アンサンブルモデルン

休憩無しにモーツァルトのオーボエ五重奏曲が演奏されました。短調の渋みのある曲で、フィナーレを飾る充実感たっぷりの演奏でした。ハイドンでは明るく躍動に満ちた弦の響きが、やや憂いを帯た重厚なアンサンブルに変化。1時間ちょっとのコンサートでもどっしりと手応えがありました。
                               tujimoto

■#3300 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/11/21 10:53
ザルツブルク音楽祭(11)マリオネット『くるみ割り』 tujimoto

♪SALZBURGER MARIONETTENTHEATER, 6.August 1998 16.00 Uhr
"Der Nussknacker" Ballet in zwei Teilen nach dem Maerchen
Musik von Peter IIjitsch Tschaikowsky
Neufassung und Inszenierung : Klaus Gmeiner
Choreographie : Lenard Salaz
Buehnenbild : Guenther Schneider Siemssen
Kostueme : Marie Luise Walek
Orchester de la Suisse Romande unter Ernest Ansermet
Musikalische Aufnahme : Decca International, London
Musikalische Einrichtung : Guenter Engl
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チケットメロス・アンサンブルが終わったのは午後1時半ごろ。これからのんびりと昼食を取っても、人形劇まで十分時間があるので今日は少し散歩をすることにしました。最近ザルツブルクに行かれたFUKUZOさんもおっしゃる通り、ここはとても小さな街。でも散歩すると結構大きな街だったりします。お城を中心に長〜い散歩道が取りまいていて、ちょっとしたハイキングも良いですね。

さてザルツブルク名物のマリオネットは一度は見たいもの。できれば魔笛とかドン・ジョバンニなんかを。でも夜は大抵オペラかコンサートなので、マリオネットと時間帯が重なり、なかなか見ることが出来ません。

今回はたまたま「くるみ割り人形」をカーチャ・カバノーヴァの前に見ることが出来ました。もちろん、日本でホームページを調べて、チケットを予約していました。けれどもお客は結構少なくて当日券でも十分だったようです・・・

ここの劇場はとても小さなオペラハウスといった雰囲気で飾り気は全く無りません。扉の入り口でプログラムを買って座席につきます。チケットを早めに予約したせいか、最前列の真ん中。人形劇を見るのにはベストポジションです。ちょうど左隣がイタリアからの年配の方が、右隣は家族と一緒に来ている小さな男の子が座っていました。そう、ここは子供たちも沢山入っていて、なぜかこういった所に居るのが場違いのような気分もします。

アンセルメ指揮スイス・ロマンドによる音楽と同時に幕が開き、ミニチュア舞台が目の前に現れます。セットの奥行きは深くて、とても立体的です。オペラはバレエが盛んな国だからでしょうか、からくりや照明もオペラ演出と同様の丁寧さです。さて人形ですが、これは比較的大きな人形で、吊り糸が何本も見えました。それにしても良くこれだけ上手く操れるものだと感心します。

ちょうどプログラムにバックステージの様子が詳しく写真で紹介されていますが、それによると舞台上部には大きな橋桁が2列に組まれています。1列は舞台前方で2列目は後方。 ステージ左右の側面にはレールが敷かれていて、2列の橋桁は前後に移動できるようになっています。人形使い師たちはそれぞれの橋桁から人形を操るわけです。これは余談ですが、写真のひとつ、コシ・ファン・トゥッティのプローベでゲッツ・フリードリヒが写っていました。何か照明のアドバイスでもやっている様子に見受けられます。

ところで実際の「くるみ割り人形」の劇ですが、人形と思えないほどリアルでした。たしかに顔の表情が変わるのではありませんが、その場その場での感情が見事に描写できていて、さすがプロの人形師たちといったところでしょうか。カーテンコールもオペラのようにちゃんとあって、人形達がお辞儀するのは滑稽でした。そしてついにステージ上部の黒いカーテンから人形使い師たち全員が顔を見せてくれました。全員黒のユニフォームでそれぞれ手に吊り糸を持っていました。人形劇を見るのも結構たのしいものですね。もしまた見る機会があれば「ホフマン」物語なんかが面白そうです。所要時間は約1時間半で途中1回の休憩が入りました。さて「カーチャ・カバノーヴァ」は着替えないといけないので、ホテルに戻りましょう。
                               tujimoto

■#3306 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/12/ 8 2: 4
ザルツブルク音楽祭1999>プログラム速報    tujimoto

来年のザルツブルク1999のプログラムが郵送されてきました。来年もかなり多彩で賑やかです。
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●オペラ

♪ルチアーノ・ベリオ『CRONACA DEL LUOGO』
7/24,27,31,8/3
 指揮:シルヴァン・カンブルラン
 演出:クラウス・グース
 キャスト:ベーレンス/オルセン/バチェリほか
 合唱:アーノルト・シェーンベルク合唱団/テルツ少年合唱団

♪ラモー『ラ・ボレアド』
 7/26,30,8/1,5,7
 指揮:サイモン・ラトル
 演出:カール・エルンスト・ヘルマン
 キャスト:バーバラ・ボニー/ハイディ・グラント・マーフィ/デイヴィド・
    ウィルソン・ジョンソンほか
 18世紀オーケストラ
 ヨーロピアン・ヴォイシス

♪ブゾーニ『ファウスト博士』
 8/1,7,12,19,23
 指揮:ケント・ナガノ
 演出:ペーター・ムスバッハ
 キャスト:トーマス・ハンプソン/ハウラータ/クリス・メリットほか
 ウィーン・フィルハーモニカー
 ウィーン国立歌劇合唱団

♪ベルリオーズ『ファウストの劫罰』
 8/19,21,23,25,27,29
 指揮:シルヴァン・カンブルラン
 演出:アレックス・オレ/カルロス・パドリーサ
 キャスト:ヴェッセリーナ・カサローヴァ/ポール・グローヴス/ウィリアム
 ・ホワイト/アンドレアス・マッコー
 シュターツカペレ・ベルリン
 オルフェオン・ドノスチアッラ・サン・セヴァンスチャン
 テルツ少年合唱団

♪モーツァルト『ドン・ジョバンニ』
 8/5,8,11,15,18,21,24,29
 指揮:ロリン・マゼール
 演出:ルカ・ロンコーニ
 キャスト:ドミトリ・ヴォロストフスキー/ルネ・パーペ/フリトーリほか
 ウィーン・フィルハーモニカー
 ウィーン国立歌劇合唱団

♪ヴェルディ『ドン・カルロ』(再演)
 8/13,17,20,22,26
 指揮:ロリン・マゼール
 演出:ヘルヴェルト・ヴェルニケ
 キャスト:フルラネット/ラリン/ロイド/ボロディナほか
 ウィーン・フィルハーモニカー
 ウィーン国立歌劇合唱団

♪アルバン・ベルク『ルル』
 8/20,22,26,28
 指揮:ミヒャエル・ギーレン
 演出:ペーター・ムスバッハ
 キャスト:クリティーネ・シェーファー/ハンナ・シュワルツ/ブレッヒャー
 ほか
 シュターツカペレ・ベルリン

♪ムソルグスキー『ホヴァンシチナ』
 7/29
 指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
 キャスト:ボロディナ/プチーリン/ギリゴリアンほか
 マリンスキー劇場管弦楽団&合唱団

●コンサート

《NEXT GENERATION》
7/28,8/12
指揮:カンブルランほか
演奏:クラング・フォーラム・ウィーンほか

《ウィーン・フィルハーモニカー》
 7/29,30 ベルナルト・ハイティンク/シフ(ピアノ)
 Rシュトラウス:ドン・ファン/ばらの騎士からワルツほか

 8/2,3,4 リッカルド・ムーティ
     シューベルト:交響曲5番/ブラームス:セレナーデ1番

 8/8,10 ピエール・ブーレーズ/シェーデ(T)/キーリンサイド(B)
     ベルク:3つの管弦楽作品/マーラー:大地の歌

 8/14,15 小澤征爾/シェシー・ノーマン(S)
     ワーグナー:トリスタンとイゾルデ「愛の死」
     ブルックナー交響曲9番

 8/28,29 サー・サイモン・ラトル/バンゼ(S)/レムメルト(Ms)
     ウィーン国立歌劇場合唱団
     クルターク:ステファンの墓石/マーラー交響曲2番

《カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク》
 7/25 フランツ・ウェルザー・メスト/アルテンブルガー(vl)
     ベートーヴェン:大フーガ/ルトワスキー:チェイン2番
     ベートーヴェン:交響曲6番

《18世紀オーケストラ》
 8/2,6 サー・サイモン・ラトル/チェチーリア・バルトリ(S)
     ハイドンの交響曲とカンタータイ・アリアなど

《ウィーン放送交響楽団》
8//17 デニス・ラッセル・デイヴィス
     ケージ/ベリオ他の現代曲集

《ビッツバーグ交響楽団》
 8/21 マリス・ヤンソンス
     シベリウス交響曲1番/Rシュトラウス「英雄の生涯」

《クリスティアン・ツィメルマン・アンサンブル》
 8/21 ショパン:ピアノ協奏曲1番、2番

《イスラエル・フィルハーモニック》
 8/22 ズービン・メーター/ブロフマン(P)
     ベートーヴェン交響曲1番/バルトーク協奏曲/ストラビンスキー
     「火の鳥」
 8/23 ズービン・メーター/ジル・シャハム
     メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲/マーラー交響曲7番

《スカラ・フィルハーモニー》
 8/25 リッカルド・ムーティ
     マルトゥッチ:ノットゥルノ1番/エルガー/ブゾーニ:トゥーラン
     ドット/レスピーギほか

《ベルリン・フィルハーモニー》
 8/27 クラウディオ・アッバード
     Rシュトラウス:ゲーテのテキストによる交響詩
     シェーンベルク「ペレアスとメリザンド」

 8/28 クラウディオ・アッバード/パユ/ラングラメ
     モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
     マーラー:交響曲9番

《教会コンサート》モーツァルト;ミサKV427
 7/31 レオポルド・ハーガー/ほか

《フィリップ・グラス/レクイエム》
 8/28 デニス・ラッセル・ディヴィス/ドーン・アップショウ/フント/
     シェーデ/オウエンズ/ゼーリヒ
     ウィーン放送交響楽団ほか

●ポリーニ・プロジェクト
 8/1,6,10,14,18,22,26
マルリィオ・ポリーニがピアノを弾き、シェーンベルク合唱団、クラングフォ
 ーラム・ウィーン、アンサンブル・ウィーン・ベルリン、アッカルド・クァル
 テットほか多数が参加する現代音楽の特集。中にはモーツァルトなどの曲も見
 られ、古くはパレストリーナなどもミックス。
 特に8/26はモンテヴェルディのマドリガル集でポリーニがチェンバロを担当す
 る。

●アカデミア・ピアニスティカ 8/7
モーツァルテウムにて16:30から夜23頃までピアノリサイタル、主に現代作品

●ピエール・ブーレーズを招いて
7/29,30 ブーレーズ特集

●シュトラウスとモーツァルトとシュトラウス
 7/30, 8/5,8 ノリトンがカメラータ・アカデミカを指揮。ヨハンシュトラウス
 とモーツァルトとRシュトラウスの特集

●ソリスト、リート、室内楽ほか多数・・・省略

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tujimoto

■#3334 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/12/19 11:32
ザルツブルク音楽祭(12)歌劇『カーチャカバノーヴァ』tujimoto

♪Leos Janacek,"KATA KABANOVA"
Kleines Festspielhaus, 6.August 1998 20 Uhr
Neuinszenierung

Savjol Prokofjevic Dikoi : Henk Smit
Boris Grigorjevic` : David Kuebler
Marfa Kabanova`(Kabanicha) : Jane Henschel
Tichon Ivanyc` Kabanov : Hubert Delamboye
Kate`rina(Ka`f`a) : Angela Denoke
Lehrer, Chemiker, Mechaniker : Rainer Trost
Varvara, Pflegetochter : Dagmar Pechova`
Kuligin, Freund des Kudrja`s : Fre`de`ric Caton
Glas`a, Dienstmaedchen : Ulrika Precht
Fekus`a, Dienstmaedchen : Elisabeth Starzinger
Z`ena, eine Frau : Alena
Co`kova
Ein, Mann : Ulrich Voss
Viola d`amore : Ludwig Hampe

Tchechische Philharmonie
Slowakischer Philharmonishcer Chor Bratislava
Musikalische Leitung : Sylvain Camberling
Inszenierung : Christoph Marthaler
Buehnenbild und Kostueme : Anna Viebrock
Licht : Olaf Winter
Choreinstudierung : Winfired Maczewski
Choreographie : Thomas Stache
Dramaturgie : Stefane Carp
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カーチャカバノーヴァマリオネット劇場からホテルに戻り、暫くすると再び着替えて祝祭小劇場へ向かいます。小劇場の音響は今ひとつと感じますが、舞台まで近くてオペラを見るには良い劇場です。昨年はここで「ルーチョ・シッラ」を見ました。その時の指揮者はカンブルランで、今日も彼が指揮をします。

ヤナーチェックのオペラは「女狐」を演奏会形式で2回ほど聴いただけで、ほとんどライブで接したことはありません。以前、BSでロイヤル・オペラの舞台裏シリーズが放送されていましたが、そのワン・シーンにカーチャ・カバノーヴァが紹介されていました。この映像と音楽を聴いた瞬間、何かしら惹かれるものを感じましたし、CDを聴くとますます音楽だけでも魅了されます。ということで今回、カーチャを見れるというのはとても楽しみにしていました。

ドラマは終始とある集団住宅の中庭で展開し、中央に円形リング噴水がアクセントを添えています。プログラム解説にはAnna Viebrock による写真が沢山掲載されていましたが、この噴水はブルノの街に実在するものです。それに壁に置かれたゴミ箱もブルノの通りにあるもの。これらの小道具に至るまで、ヤナーチェックの故郷から現代の素材をそっくり再現されたようです。現代をセットにしたということでテーマは昔も現代も普遍であり、ドラマをより身近なものにしているのでしょう。

さてカーチャ役には昨年「ヴォツェック」のマリー役で脚光を浴びたアンジェラ・デノケ。彼女はマリーの時のような気の強い女性とは逆の女性らしさを上手く演じていました。彼女の歌にはある種の悲壮感が漂い、ヤナーチェックが意図したドラマにぴったりのように思えます。そしてとてもスマートで、表情のひとつひとつに悲なしい女性の運命を感じます。

カーチャカバノヴァ音楽はカンブルラン指揮のチェコ・フィルハーモニーで、何といっても音楽が最高に素晴らしかったです。持続するメロディに別のメロディを重ねて、常に流れるようなヤナーチェック節はとても自然でした。カンブルランの指示はメリハリがあって音楽の吹き上がりも申し分なし。特にティンパニの強打は恐ろしいほどに緊張に満ちていて衝撃的。チェコフィルのオペラ演奏もやはり素晴らしいと実感できました。

休憩なしに1時間40分が流れるように終わってしまいました。そして今日はカーチャ・カバノーヴァの最終公演のせいでしょうか、カーテンコールにはオーケストラも勢ぞろいし、盛大に幕を閉じました。気がつくとかなり汗をかいています。この小劇場は大劇場と違って空調が無いようで、とても暑いです。さすがにタキシードでは息苦しい。

(PS)
このレポートを書き上げたのは大幅に遅れて12月となりましたが、本日19日の深夜BSにて今回の「カーチャ・カバノーヴァ」が再放送されます。その前にドキュメンタリーもあるようです。
                                tujimoto

■#3343 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/12/27 17:13
ザルツブルク音楽祭(13)ヘレン・キームゼー城    tujimoto

●8月7日、ヘレン・キームゼーへのアプローチ

今日はいよいよザルツブルク滞在の最終日となりました。たまには遠出をしようとヘレン・キームゼー行きを計画していましたが、雨で行くチャンスを見逃したままでした。さて今日は稀に見る快晴です。これを逃すと当分チャンスは巡ってきません。ホテルから歩いて駅へ向かうことにしました。

時刻表は事前にチェック済みです。 駅の案内にブースがあって、日時と行き先を言えばコンピューターで時刻表を検索してくれます。結果はプリントアウトしてくれますのでとても便利。 特に今日の夜は「ドン・カルロ」があるので、遅れない為にも帰りの時刻表は助かります。ちなみに電車のチケットはDBの売り場で買いますが、往復で約32マルクでした。

(ザルツブルク→プリーン・キームゼーの時刻表)
Oesterreichische Bundesbahnnen
Reiseverbindungen Gueltig am Mittwoch dem 05.08.1998
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VON Salzburg Hbf ab 8:36
NACH Prien a Chiemsee an 9:19
Fayrzeit : 0 Std. 43 Min.

BAHNHOF UHR ZUG BEMERKUNGEN
Salzburg Hbf ab 8:36 IR 2196 Bitte reservieren, Bistro Cafe
Prien a Chiemsee an 9:19

(プリーン・キームゼー→ザルツブルクの時刻表)
Oesterreichische Bundesbahnnen
Reiseverbindungen Gueltig am Mittwoch dem 05.08.1998
-----------------------------------------------------------
VON Prien a Chiemsee ab 16:36
NACH Salzburg Hbf an 17:23
Fayrzeit : 0 Std. 47 Min.

BAHNHOF UHR ZUG BEMERKUNGEN
Prien a Chiemsee ab 16:36 IR 2197 Bitte reservieren, Bistro Cafe
Salzburg Hbf an 17:23

列車に乗り、開いているコンパートメントに入ります。途中の景色は夏らしくて緑一色の草原と紺碧の青空。このコントラストに湖水がキラキラと輝く景色は見事です。やはり列車はいいなぁと実感できる瞬間です。美しい景色を眺めながらドイツ国境を越えます。

電車に乗ること40分余りでプリーン・キームゼー駅に到着しました。ホームから見渡すとSL列車が止まっているのを発見。もしかしてあれが船着き場へ行くための交通手段かと近づきます。チケット売り場で確認し、ヘレインゼルまでの往復チケットを買いました。SLと船がセットになっています。 SLの客席は屋根が付いたオープンカーになっていて、昔の馬車を機関車が引っ張るといった具合で小さな子供が喜びそうです。さてチケット売り場でもらった時刻表によると

《Chiemsee-Bahn》 Prein/Bhf (ab 9:40)-Prien/Stock (an 9:48)
《Schiff 》 Prien/Stock (ab 9:50)-Herreninsel (ab 10:10)

程なく発車という時、私の隣にバイエルン風の年配の男性が座りました。向かい側にはその方の娘さんのようです。 すぐにヤーパナー?とかなんとかしゃべりかけて来て、そこからなぜか会話が弾みます。英語とドイツ語を織り混ぜながら、お互い世間話に納得しあうのは面白いものです。娘さんも常に笑顔で応じてくれました。ミュンヘン郊外から列車で来られたそうで、このあたりは夏に良く遊びにくるとか。船に乗ってからもずっとおしゃべりが続きました。東京はどんな街だとか、かなり日本に興味を持たれていました。さて島に着きました。 私はここで降りますので、ここで別れることになりました。とても短いおしゃべりでしたが、お互い別れるのは何となく名残惜しさを感じます。

●王城ヘレン・キームゼーとルートヴィッヒ博物館

ヘレン・キームゼー城島に上陸して坂を少し登ると、そこからは見事な草原と森の世界。まぶしい太陽が注してきますが、とても爽やかな夏です。歩道とは別に馬車道があり、ときおり観光客を乗せた馬車が走っていきます。

暫く歩くと有名なヘレン・キームゼーの城に到着です。まず噴水の美しさに目を奪われ、その噴水の奥にとても長い宮殿が見えました。ノイシュバンシュタインのような華麗さはないものの、横長の建物はパノラマ写真の画角を遥かにオーバーしてしまいます。

ずはツアーガイドのチケットを買ってから順番を待ちます。10分ほどしてからガイドの開始です。ドイツ語のガイドで例によって詳しい説明を沢山聞かされます。それだけじっくりと各広間、寝室などを回っていきますが、とにかくノイシュバンシュタインと同様、ヘレン・キームゼーの豪華さ驚きます。ルートヴィッヒの贅沢さは言葉が出ないほどの徹底ぶり。ほとんど黄金で作られた儀式用寝室からヴェルサイユを意識したという「鏡の大回廊」までとにかく驚嘆します。

とても丁寧なガイドツアーが終わりましたが、入場券はルートヴィッヒの博物館も込みになっています。正面玄関右側が博物館で、ルートヴィッヒが赤ん坊だったときの衣装から王であった時の物まで沢山の展示されていました。特にワーグナーとの係わりに焦点を当てタンホイザー模型た展示が興味深いものがあります。当時の舞台セットのミニチュアがいくつも並び、目を引きます。時代順にオランダ人からパルジファルまでじっくり見ていると時間を忘れそうです。 特に圧巻はバイロイト祝祭劇場の模型。模型の一部を切り開き、オケピットとステージ、客席まで立体的に良く分かる展示になっていました。

階段を上がると中二階も展示ブースになっていて、ちょっとした温室風のブースでは池が造られていて、そこにゴンドラが浮かべてありました。リンダーホーフの地下水道でルートヴィッヒがのった白鳥のゴンドラかも知れません。とにかくこの博物館はルートヴィッヒもさることながらワーグナー博物館と言っても良いくらいで、興味が尽きません。

さて見学してから城の正面噴水に面してカフェテリアがあり、ここで昼食を取ることにしました。ここは島ですから遠くに湖水が見えてとても良い景色です。帰りものんびりと散歩をしながらプリン・ストックから船で戻ります。途中、沢山のヨットが走っていて、いかにも夏のリゾート。ザルツブルクには少し早めに戻り、午後4時にはホテルに着きました。今日の夜は「ドン・カルロ」のプレミエで期待が高まります・・・
                                tujimoto

■#3346 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/12/30 1: 5
ザルツブルク音楽祭(14)歌劇『ドン・カルロ』初日  tujimoto

♪Giuseppe Verdi "DON CARLO"

Musikalische Leitung : Lorin Maazel
Regie, Buehnenbild und Kostueme : Herbert Wernicke
Dramaturgie : Albrecht Puhlmann
Choreinstudierung : Winfried Maczewski

Filippo II, Re di Spagna : Rene Pape
Don Carlo, Infante di Spagna : Sergei Larin
Rodrigo, Marchese di Posa : Carlos Alvarez
II Grande Inquisitore : Paul Plishka
Un Frate ( Carlo V ) : Robert Lloyd
Elisabetta di Valois : Marina Mescheriakova
La Principessa Eboli : Dolora Zajick
Tebaldo, paggio d'Elisabetta : Maria Costanza Nocentini
Una Voce dal Cielo : Desiree Rancatore
La Contessa d'Aremberg : Ursula Pfitzner
II Conte di Lerma : Ilya Lewinsky
Un Araldo Reale : Gwyn Hughes Jones
Deputati Fiamminghi : Souren Chahidjanian, Riccardo Novaro,
Michael Volle, Hannes Lichtenberger,
Wolfgang Scheider, Friedrich Springer
Wiener Philhamoniker
Konzertvereingung Wiener Staatsopernchor
Buehnenmusik: Mozarteum Orchester Salzburg
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ドン・カルロヘレン・キームゼーから戻り、しばし休憩してから祝祭大劇場へ向かいます。今日はプレミエですから、劇場前は何時にもましてとても華やかです。 やはり初日は公演の出来栄えに関する情報がゼロですから、とてもワクワクします。

今回、昨年に引き続きザルツブルクへ旅した理由は、ゲルギエフの「パルジファル」とマゼールの「ドン・カルロ」を聴く為でした。ところで「ドン・カルロ」は「パルジファル」と同様、すぐに完売となった超人気演目です。

演出は「ボリス・ゴドノフ」で圧倒的なオペラに仕立てたヴェルニケ。彼はドイツ物が得意で、イタリア物はたしか今年の冬にウィーンで演出した「シチリア島の夕べ」が記憶に新しいところです。とにかく巨大なオブジェが得意のようで、ボリスの巨大な鐘や時計、それにシチリアの巨大階段などなど。ですから今回のドン・カルロも一体どんな大きなものが飛び出すか楽しみです。

マゼールの指揮はとても明快そのもので、オーケストラの鳴らし方がとても上手いです。音のメリハリがしっかりしていて、祝祭大劇場を音で埋め尽くすことのできる指揮者というか、慣れているというか、とにかく安定しています。音楽の盛り上がりがスムーズで、時にウィーンフィルを上手く引っ張っています。彼のオペラ作りも上手いものがありますが、音楽の歌わせかたが独特で、時に次の展開が読めてしまうところもあります。いずれにせよ、ゲルギエフとは違うエキサイティングさを感じました。

ウィーンフィルは「パルジファル」で見せた敬虔な響きから一転し、ヴェルディの豪快さを如何なく発揮。とにかくオーケストラが凄いと感じる瞬間の連続で、パワーが炸裂する圧倒的な音響空間に満足できます。あれだけのフルパワーでアンサンブルが乱れず、しかもウィーンフィルのしなやかさを保ちながら重厚なヴェルディを表現・・・ゲルギエフの「パルジファル」も驚異的でしたが、改めてウィーンフィル恐るべしといったところでしょうか。

ステージは白い短冊状の板が何枚も床から天井まで延びていました。中央にカルロ5世の棺があるようで、これは変形した短冊のオブジェで囲まれています。左右から電極のような長い針が延びて、舞台の中央を指していました。ザルツブルクのパノラマステージがオブジェで埋まっていて手狭と感じるほどです。歌手たちはオブジェの林をくぐり抜けるように、ポジションをかえながら歌っていきました。しかし今回の演出はやや静的なものでした。ボリス・ゴドノフで見せたダイナミックな動きが見られません。

舞台で唯一動きが感じられたのは第2幕のスペインの王宮での行進。ここではヴェルニケらしいアイデアが発揮されます。真っ赤な絨毯がステージの左右に敷かれ、第1幕からの短冊オブジェは正面に向かって2列に整列。さらに窓に相当するところから赤と黒の垂れ幕が掛けられ、シンプルなスペイン王宮が出来上がります。右から左へ行進する場面がひとつの見どころです。赤と黒の配色はオブジェだけでなく人物の衣装にも施され、色彩感覚はまさにスペイン。こういったあたりがヴェルニケが演出から装置、衣装に至るまですべて一人で担当している強みなのでしょう。合唱も短冊オブジェの窓に並び、空間を有効に利用した音楽とドラマのミックスはさすがに天才的でした。

歌手についてはサミュエル・レイミーがルネ・パーペに代わるなどかなりのキャスティング変更がありました。たしかドン・カルロもボータからラリンに変更。歌手で良かったのはアルバレスが歌うポーザ公でした。とにかく圧倒的な拍手を浴びていました。あとエボリ公女のチャージックも素晴らしい歌でした。ルネ・パーペはイタリアものよりドイツものの方が良いのでしょうか、今一つ迫力が無かったようです。

終演後、劇場の出口でプレビュー99というチラシが配られていました。大きな目玉がデザインされていて、見開きを開くと何と来年はファウスト特集! 期待していたアバドの「トリスタン」がリストに挙がっていません。やはりイースターと夏を連続するのは難しいのかと多少がっかりしました。 さて明日はいよいよ帰国です。約1週間の滞在中はいろんな演目を見ましたが、やはり時間の経過はとても早いですね・・・
                            tujimoto

■#3347 芸術劇場 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp) 98/12/30 2:10
ザルツブルク音楽祭(15)エピローグ(最終回)    tujimoto

●8月8日(土)〜9日(日)

ドン・カルロ初日のニュースは昨晩の深夜TVで早速放送されました。翌日、朝食時に新聞ザルツブルガー・ナハリヒテンを見ると、何ともう大きな写真入りで記事になっています。深夜の内に編集して書き上げたのでしょう。ちなみに公演初日の模様が記事になるのにふつう二日くらいかかります。

ホテルのレストランで食事していると昨年お会いした方にばったり会いました。なんでも昨晩ザルツブルク入りして、今日はゲルギエフの「パルジファル」最終公演を見られるとのこと。

SALZBURGER 1999さて何時ものことですがオーストリアからの帰国は午前中にフランクフルトへ移動し、午後2時頃のフルトハンザで飛びます。ホテルをチェックアウトし、あとはタクシーにのるだけ。メンヒスベルクのトンネルを越えるのに、祝祭劇場の横を走ります。 ここを通り過ぎる時の心境はさて来年はどうしようかと思いを巡らすこと。来年の演目はある程度把握できたので、さて来年はどうしようかと悩みます。 ラトルが指揮する「ボレアド」の噂は2年ほど前から聞いていて興味がありますし、ナガノ指揮ウィーンフィルの「ファウスト博士」も期待できそうです。それにフライヤーの「魔笛」ももう一度見たいなぁとか何とか思っているとタクシーは草原を走っていました。

早くもザルツからフランクフルトに到着し、ビジネス・ラウンジで電子メールのチェック。こんな時、仕事のメールが飛び交っていると気分はダウンしますね。それはさておき、後は旅の疲れで良く眠れそうです。今回は往復とも壁に面した1列目でゆったりできました。通路を挟んで右側には指揮者の井上道義さんが座っておられました。時折、鉛筆書きの楽譜をご覧になられてました。

適当に映画を見ていると眠くなり、朦朧とした状態が続きます。帰りはやはり日本に着くのが早いと感じます。後は成田でスーツケースを宅配便に出し、電車に乗るだけです。いつもスカイライナーを愛用していて、上野からは日比谷線で一眠りすることに決めています。これだと時差ボケもだいぶ緩和されます。

昼間は自宅で昼寝し、夜は新宿でKAZUさんとΩさんにお会いしてベルリン談議を楽しませて頂きました。とても充実した帰国日です。 さて明日から仕事だと思うと時差ボケが心配になってきました・・・

やっとこのシリーズを年内に書き上げることができました。だいぶ時間もたっているので、記憶も怪しいところがあったりします。 やっぱり今回はゲルギエフの「パルジファル」が一番良かったかなぁと思います。 ではここで終わりとさせていただきます。
                               tujimoto

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