'97ザルツブルク音楽祭旅行記

ヤンソンス/オスロ・フィル

■#2694 芸術劇場 97/ 9/12 0:11 (ID:DAT19113@biglobe.ne.jp)
ザルツブルク音楽祭(4)ヤンソンス/オスロ・フィル tujimoto

●8月10日(日)/2日目

朝7時にウェイクアップ。熟睡のおかげで時差ボケは全くなく、すっきり快調です。さて今日からハードスケジュールの始まりです。今日はいきなりマチネーとオペラの2本だて。果たして11演目を消化できるかどうか多少心配です。ゆっくりと朝食を取り、10時にはホテルを出ました。今日も凄い快晴で日差しが強そうですが、午前中はとても爽やかです。

途中の横断歩道で信号待ちしていると、米国人女性二人組に道を聞かれました。ここの住民と勘違いされたようで、彼女たちはミラベル公園を通って旧市街に行くとのこと。ではということで途中までおしゃべりしながら、ご一緒しました。のんびり歩いて30分前には会場に着きました。おしゃれをした人々が既に集まってきています。マチネーなのにブラックタイのタキシードの方が数名見受けらたのは意外。女性の方はかなり派手なドレスで楽しまれている様子。

祝祭劇場 まだ時間があるので祝祭ショップを覗いて、会場に入りました。通常入口でチケットの半券を切られるか、手で切れ目を入られるものですが、ここではチケットを確認するようなことはしないようです。地下鉄の切符と同じで、お互い信頼関係にあるという奥ゆかしさを感じました。それと会場ではゆっくりと優雅に振る舞わなければなりませんね。決して急いだりしてはいけないのです。ということでここのゴルデナー・ヒルシュのビュッフェでカフェでも飲んで開演を待ちましょう。

♪ORCHESTERKONZERTE
Sonntag 10 August,11:00 Uhr Grosses Festispielhaus

Beethoven Klavierkonzert Nr.4 G-Dur op.58
Buruckner Symphonie Nr.7 E-Dur
Solist Leif Ove Andsnes, Klavier
Dirigent Mariss Jansons
Oslo Philharmonic Orchestra
---------------------------------------------------------------

●ベートーヴェン/ピアノ協奏曲4番

ヤンソンス/オスロフィルをライブで聴くのは今回で2回目となります。前回はサントリーホールでベートーヴェンのピアノ協奏曲4番とブラームス交響曲1番を聴きました。今日のプログラムもあの時と同じアンスネスが登場し、ベートーヴェンの協奏曲4番です。ヤンソンスはこの組み合わせによほど自信があるのでしょう、期待できます。

第一楽章の冒頭、ピアノの響きを聴いて、その素晴らしいタッチにまず耳を奪われました。祝祭大劇場はどちらかと言えば、それほどライブではなく、むしろサントリーホールの方が響くようです。かと言って、デッドでもない。二階前方の座席でも、ピアノに質感があって、十分なエネルギーが伝わってきます。響きが消え入る瞬間と次のタッチのつながりがとてもクリアーで、息づかいすら聞こえるようでした。

この曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲中で一番好きな曲です。それは穏やかでも、神々しい美しさの中に秘められた強靱なパワーを感じさせてくれる為です。そのような期待を抱いてアンスネスのピアノを聴いたわけですが、神秘的というよりも、あくまでも自然な音楽を感じました。何と言おうか、とても素直な演奏です。ピアノの響きも十分で抑制も十分。ヤンソンス/オスロとの対話、特にフルートとのアンサンブルも美しいものでした。

伸びやかで自然な第1楽章に対して、第2楽章はとにかく緊張しました。とても言葉では表現できない静寂の緊張がみなぎっていました。ここで溜められたエネルギーは第3楽章で解きほぐされます。解放感に満ちた主題が全奏。カデンツァにいたってはアンスネスの強烈な左手アタックと同時に右手のとても軽やかなメロディとの対比が見事。ここは音だけでなく視覚的にもひとつのクライマックスでした。それとオーケストラのレスポンスがとても良いのです。機敏な音作りは正にベルリンフィルのようなヴィルトーゾ・サウンドです。

終わってからのカーテンコールが凄く、観客が足で床を鳴らし始めました。そこでアンコール。おそらくショパンのマズルカだと思いますが、曲名まで分かりませんでした。物音ひとつない超静寂の中で、大劇場の視線の全てを集めてしまうアンスネスのソロは本当に見事でした。

●休憩

音楽祭での休憩は劇場の外に出るのがお勧めです。爽やかな風が吹いていて、景色の眺めが最高! 今日はとても良い天気で、ホーエンザルツブルク城が綺麗に聳えています。通りには華やかに着飾った方々が溢れて、独特の豪華さた漂っています。なんとなくリッチな気分に仲間入りです。通りでもシャンパンとカナッペ類が売られていて便利ですね。外からロビーに入ると急に暗く感じますが、ここは空いています。同じくビュッフェも空いていて日本のような混雑が無いのはうれしい。

●ブルックナー/交響曲7番

この交響曲は巨匠達の名演奏が沢山あり、ヤンソンス/オスロフィルが果たしてどのような演奏するのか期待するところです。

結果は第1楽章から最後まで素晴らしい集中力が支配した名演奏でした。ヤンソンスはとにかくあわてず、ゆったりと音楽を進めていきます。すべての主題および展開は必然性を持っていて、納得できる展開でした。ブルックナーのような長大な交響曲は時々ボーと聞き流してしまうことがあるのですが、今日の演奏は細部にわたって最初から最後まで手答え十分でした。ベタ褒めになりますが、ではどこが良かったかと言うと・・・

  • 細かなパッセージがよく磨かれていて、かつ全体の流れが自然。ミクロとマク ロを掌握しきった演奏とはこのことでしょうか。
  • 音色の変化が自在で、立体的。ヤンソンスのタクトを持たない両手がしなやか に振られると、それに反応してフィルタを被せられたような優しい音色に変わ り、テンションに応じてブリリアントな音色に変わる。
  • そして何よりも生命力に溢れ、初めて聴く曲のような新鮮さを感じました。

アンサンブルも完璧で、特に弦の各パートは明瞭。金管は決してケバケバしくならず、ブルックナーの幽玄な響きも十分。宗教的敬虔さがことさら強調されている訳ではありませんが、じっくりと熟成する音楽で祝祭劇場が大伽藍と化しました。

前回の来日公演の時は睡眠不足でヤンソンス/オスロに臨んだため、今一つの印象だったのですが、今回はベストコンディション。正直いって今日のメインは「ペレアスとメリザンド」なので、マチネーは前菜程度に適当に聞き流そうかと思っていました。ところがここまで充実した演奏が聴けるとは驚きました。

やはりここザルツブルクの決してあわてない優雅なリズムがコンサートを楽しむのにプラスになっていますね。ここでは観光よりも音楽に徹することが必要条件と実感しました。

なおオスロフィルは私と同じホテルに滞在していました。オスロフィルのザルツブルク公演は二日間だけで、翌日にはもう帰ったようです。

                               tujimoto

---- end of this page ----

メインページへ戻る