ベルリンからのモバイルコンピューティング(5)


ウィーン>国立歌劇場/ローエングリン     2.26 tujimoto


Mittwoch, 26 Februar 1997 STAATSOPER

Lohengrin

Musikalische Leitung        Simone Young
Regie                       Wolfgang Weber
Ausstattung                 Rudolf und Reinhard Heinrich
Chorleitung                 Dietrich D. Gerpheide

Heinrich der Vogler,Koenig  Alfred Muff
Lohengrin                   Peter Seiffert
Elsa von Brabant            Cheryl Studer
Friedrich von Telramund     Peter Weber
Ortrud                      Waltraud Meier
Heerrufer des Koenigs       Georg Tichy
Vier brabantische Edle      Erich Wessner
                            Peter Fraiss
                            Walter Zeh
                            Nikolaus Simkowsky
Vier Edelknaben             Silvia Panzenboeck
                            Felicitas Equiluz
                            Karin Wieser
                            Martina Parzer
Vier Kammerfrauen           Renate Gutsch
                            Gretchen Eder
                            Elisa Zurmann
                            Hyun-Sook Back
Herzog Gottfried            Dominik Binder

Pause                       nach dem ersten und zweiten Akt
Beginn                      18 Uhr
Ende                        22.15 Uhr
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今日はウィーン三日目になります。二月末ですが、十数度と非常に暖かい天気が
続いています。実はこの日の昼、嵐が吹き荒れました。ちょうどケルントナーを
歩いていたら、突風と豪雨が一時的に襲ったのです。もう春一番が来たのかと驚
きました。さて昨日のメフィストフェレの興奮覚めやらぬ状態で、ウィーンフィ
ル97年シーズンプログラムを求めて楽団事務所に行ってきました。まだ発行さ
れてなかったので、とりあえず郵送を依頼。この時、何やら派手な音楽が聞こえ
てきます。ムジークフェラインでリハーサルをやっているようです。そう言えば
今日はフェドセーエフ指揮のウィーン交響楽団があるのです。プログラムはショ
スタコーヴィッチ「ムツェンスク群のマクベス夫人」からベイズナー編曲による
5つの管弦組曲。おもしろそうな演目で、聞きたくなりますが、今日はローエン
グリンを見なければと我に還りました。やはりウィーンは音楽で潤っている街で
すね。

さてローエングリンを指揮するのはシモーネ・ヤングさん、女性指揮者です。
95年のベルリン国立歌劇でトリスタンとイゾルデを指揮するのを聞いたことが
ありますが、豪快な演奏で、とても女性だとは思えませんでした。モーさんもヤ
ングさんの「リゴレット」を聴かれたことを旅行記に書かれていますね。ヤング
さんは四月にもウィーン国立で新演出の「エフゲニ・オネーギン」を振るそうで
、実力を評価されているようです。今回のローエングリンでは、チェリル・スチ
ューダ、ワルトラウテ・マイヤー、ペーター・ザイフェルトと重量級歌手を相手
に、どのような指揮されるのか楽しみです。

◆本日の座席はパルケット7列目とかなり前の方です。多少見ずらい感じです。
でもオペラグラス無しで、表情はバッチリ見えそうです。ヤングが指揮棒をしな
やかに振り始めました。神秘的な前奏曲のあと幕が開くと、どこかで見た舞台。
これはビデオで見た90年のアバド指揮のローエングリンと同じ舞台です。演出
はウォルフガング・ウェーバー。多少がっかりしました。というのは、この舞台
とても殺風景なので、余り好きではないのです。昨日の「メフィストフェレ」が
余りにも強烈な印象だったので、このローエングリンとても貧弱に見えます。ほ
とんど金が掛かっていない舞台装置と衣装。王の伝令の衣装は、例の道路工事の
表示と同じ黄色と黒の縞模様。そろそろ新しい舞台にして欲しいと不満を思いな
がら、ワーグナーの音楽を聞いていました。やっぱりワーグナーの音楽は次第に
引き込まれていきます。特にローエングリンのようなドイツ音楽を聞いていると
、舞台のことは忘れて人物によるドラマに没頭できそうです。むしろこの場合は
素朴で質素な舞台の方が、高貴な神話の世界に適しているかもしれませんね。

まず最初にワーグナーを聴いていると感じさせてくれたのは、ムフが歌うハイン
リヒ王です。深々と力強いバスはまさしくドイツ魂。聴いていて壮快です。

スチューダーのエルザはビデオで見ていた通り、透明で良く通る歌声はとても安
定していました。特に「エルザの夢」では管弦楽にのって、希望に満ちた歌と表
情が印象的でした。ヤングも両手を大きく振り上げてオーケストラをぐいぐい引
っ張っています。歌手や合唱にも、細かな指示を与えています。女性とは思えな
い職人的指揮です。

マイヤーのオルトルート第1幕ではほとんど歌いませんが、舞台右側に立って表
情による演技はとても存在感ありました。マイヤーの顔だちがとても怖かった。
むしろ威圧感を感じました。

伝令が騎士を呼んで、エルザが期待に胸ふくらませている場面。大きな両翼を広
げた白鳥が舞台中央に映し出されます。ビデオでは良く解らなかったのですが、
白鳥は舞台前面に降ろされている薄いメッシュ膜に映されていたのです。オペラ
グラスで見ると細かなメッシュが見えます。実はこれ、第1幕の最初から最後ま
で舞台を覆っているのです。そしていよいよ待望のローエングリンが登場。

>特にザイフェルトは新国の『ローエングリン』も歌いますし、
>今やバリバリで生きのいいワーグナー・テナーといえば彼でしょう。

BMWさんのおっしゃる通り、とても素晴らしいテノールでした。ザイフェルト
を初めて見ましたが、とても背が高く立派です。舞台に立つだけで、オペラが引
き締まるようです。ドミンゴのローエングリンはなんとなく重い感じがしますが
、ザイフェルトのヘルデン・テノールは適度の軽さがあり、とても高貴で神々し
い。彼のトレード・マークは口髭だと思っていましたが、今回のローエングリン
では髭を剃っていました。髭が無いザイフェルトは、とても若々しく、想像以上
にハンサムです。凛々しい姿はローエングリンにぴったりで、女性ファンが増え
ること間違い無しです。

◆第2幕冒頭は城壁があるだけの単純な舞台。それだけにドラマの善し悪しは歌
手と管弦楽で決まる難しい場面です。いよいよマイヤーが本領を発揮し始めます
。ウェーバーが演じるテルラムントを足で踏みつけ、罵る演技、怖いオルトルー
トです。特にヴォータンへの復讐の誓いは、マイヤーの絶叫とオーケストラとの
緊迫したアンサンブルで凄みを見せました。

◆第3幕では、何と言ってもザイフェルトの「聖杯の物語」がとても神秘的で美
しかった。どんどんドラマが進行してゆき、ザイフェルトの輝かしい歌が名残惜
しい。もう一度聞きたくなります。さてゴットフリートが白鳥から元の姿に戻る
場面、私の席からはゴットフリートだけ全く見えません。舞台奥で左右に広がっ
た合唱に遮られた為です。

単純で動きの少ない演出と素朴な舞台でしたが、このワーグナーは音楽の質で勝
負に出た感じです。歌手で一番印象に残ったのはザイフェルトです。スチューダ
ーはベテランすぎるのでしょうか、新鮮さは余り感じませんでしたが、大らかで
自然な演技と歌とても魅力的でした。マイヤーのオルトルートも上出来でしたが
、「イゾルデ」のように主役で歌う方が威力を発揮しそうですね。今年5月のM
ET公演「カルメン」楽しみにしてます。そう言えば、本日ベルリンオペラフェ
スティバルの案内来ましたが、ワルキューレとヴォツェックも聴きたいところで
す。(優先申込みするかどうか迷っています)

カーテンコールに現れた指揮者ヤング、意外に小柄で、長身のザイフェルトとの
コントラストが印象的。でもオケ・ピットのヤングさんはとても勇猛果敢に指揮
されておりました。

P.S. オペラ・レポートこれでウィーンが終了です。あとはクプファーの
   問題作(???)マクベス残すのみとなりました。

                               tujimoto

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