2008.06.29 『アッシジの聖フランチェスコ』アウディ新演出メッツマッハー指揮/アムステルダムNDO


De NEDERLANDESE OPERA
Het MUZIEKTHEATER AMSTERDAM
29 juni 2008
in het kader van het Holland Festival

Oliver Messiaen
Saint Francois d'Assise
Opera en trois actes et huit tableaux
libretto van
Oliver Messiaen

Nederlandse scenische premiere

muzikale leiding Ingo Metzmacher
regie Pierre Audi
decor/licht Jean Kalman
kostuums Angelo Figus
ontwerp videoprojectie Erwan Huon
dramaturgie Klaus Bertisch
orkest Residentie Orkest
koor Koor van De Nederlandse Opera
instudering Martin Wright

Rolverdeling
L'Ange Camilla Tilling
Saint Francois Rod Gilfry
Le Lepreux Hubert Delamboye
Frere Leon Henk Neven
Frere Massee Tom Randle
Frere Elie Donald Kaasch
Frere Bernard Armand Arapian
Frere Sylvestre Jan Willem Baljet
Frere Rufin Andre Morsch

ondes martenot Nathalie Forget
Valerie Hartmann-Claverie
Bruno Perrault
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今日はエクソンプロヴァンス04:45発のバスでマルセイユ空港に05:07に到着。エールフランス(KLM共同運航)06:30発のAF8284でアムステルダム08:20着。片道だと10万円くらいかかるので、4万程度で済む往復便チケットをオンライン予約しておいた。空港のヒルトン・スキポールにチェックインし、午後にアムステルダム音楽劇場に出向いた。

13:30からはネーデルランドオペラにてオランダ・フェスティバル公演のひとつでもあるオリヴァー・メシアンの歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」全3幕を見た。ピエール・アウディ新演出、インゴ・メッツマッハー指揮によるプロダクションで、本日が最終公演となる。そもそも、この大作オペラはオランダでも初公演とのことで、メシアン生誕100年記念からして見逃す訳には行かない。上演の機会は非常に少ないものの、パリ・バスチーユでザルツブルクと同じプロダクションを見ることが出来た。ホセ・ファン・ダムのフランチェスコがさすがの貫禄だった。今回のプロダクションではボー・スコウスに似たロッド・ギルフライが端正で滋味に満ちたフランチェスコを演じた。天使役カミラ・ティリングの透明なソプラノも神々しく、修道士マッセのトム・ランドルらキャストが充実していた。

第1幕は、「十字架」、「賛美」、「皮膚病人と奇跡」の3場からなり、ステージは工事現場のような巨大な足場が組まれたスケールの大きなセット。オーケストラはステージ後方に上がり、その前方でドラマが演じられる。作品のオラトリオ的側面からも、説得力ある演奏スタイルだ。また中央には焼けた十字架が無数に積み上げられ、十字架の象徴のもと、聴衆を釘付けにしてゆく。特に正面の4層からなる足場の横方向上部3段に並んだ合唱が圧倒的な音響を作り出す。

第2幕はステージ中央の十字架の山は撤去され、ステージ左手の足場は修道院をイメージして用いられる。さらにオーケストラ上部は聖堂をイメージした建造物に取り囲まれ、ドーム状の天井部分は上空に向かって開口している。「旅人に変身した天使」では天使は杖と修道女風の頭巾と装束で現れる。白装束の五人の分身を従えている。僧院の扉を叩く音はフルオーケストラの大音響として鳴り響き、閃光が放たれる。まるで雷の嵐であるかのような迫力。「天使の演奏」では、ティリングがカラフルな和風着物をまとい、ヴィオールの代わりに赤と白に輝く弓を両手でもって演じる。それにしても天使の歌とオンド・マルトノの神秘に感銘した。ちなみにマルトノ奏者のハルトマン・クラヴリはケント・ナガノ指揮のザルツブルク公演でも演奏。「小鳥への説教」では、角材で組んだ木々を並べ、カラフルな装束の子供達に様々な鳥のモデルを手に持たせて小鳥達を擬似化する。フランチェスコの小鳥達への愛情にみちた説教も感動的。

第3幕では、ステージ中央前方に四角い壇が設けられ、その周りは焼けたような黒い十字架が無数に取り囲まれる。黒装束の修道士達がひしめき合い、フランチェスコに射られる5本の光線は床から上昇して空間で組まれる角材の十字架7本で象徴される。この時も強烈な打撃音が連打され、まるで十字架に杭で打ち込まれるキリストを連想させる。フランチェスコは痙攣し、聖人へと変貌してゆく。そして最終場では、フランチェスコがマントを脱ぎ捨て、死にたえる。修道士、修道女たちがステージに溢れんばかりに感動的に歌い上げる。壮大なオーケストラの響きは卒倒するくらいの刺激となった。パルジファルと並び称される「アッシジの聖フランチェスコ」の深遠なる祈りの世界に導かれる。この時、オーケストラ上部のドームには星空が眩いばかりに輝いていた。またメッツマッハーとオーケストラの奏でるメシアンの響きは独特。風が吹くかの如く、サウンドが空間を飛び交い、色彩感の鮮やかさ、重層的なインパクトが変幻自在に鳴り響く。キャスト、合唱、演奏、演出が一体となった素晴らしさだった。5時間半におよぶ公演は全く時間を感じさせない集中度で、神秘の世界にのめり込んだ次第。圧倒的な喝采が長く続いた。



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