2008.06.28 『ジークフリート』初日/ブラウンシュヴァイク演出ラトル&ベルリンフィル /エクサンプロヴァンス・フェスティバル |
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Nouvelle production GRAND THEATRE DE PROVENCE Direction musicale
SIR SIMON RATTLE Collaboration artistique
ANNE-FRANCOISE BENHAMOU Maquillages, coiffures
KARINE GUILLEM Assistant musical
JIM HOLMES Siegfried
BEN HEPPNER Et
AMELIE KOURIM (L'OURS; MANIPULATION DE L'OISEAU) Orchestre
BERLINER PHILHARMONIKER 今日は、チューリヒからエクソン・プロヴァンスまで、ムルハウスとリヨン・パルデュで3本のTGVを乗り継いで移動した。朝7時2分に出発し、エクソン到着は予定より15分遅れての15時25分。TGVは車輌が狭いため、ファーストクラスのソロ座席をオンライン予約した。3本合わせて174ユーロで、このルートの移動としては最も安く、とても快適な旅が出来た。昨日のチューリヒは初夏の暑さだったが、さすがに南仏は雲ひとつ無い眩しい風光明媚。既に真夏並みの暑さだが、風が爽やかで乾いているのが心地よい。 17時半からはプロヴァンス大劇場にてエクサン・プロヴァンス・フェスティバル「ジークフリート」初日公演を見た。シュテファン・ブラウンシュヴァイク新演出、サイモン・ラトル指揮のベルリンフィルの演奏。ピットでは中央に4本のハープを立て、左手に4本のコントラバス。右手に打楽器群、これを取り巻くように弦と管楽器が壮観を呈する。開演前から安永徹氏も練習に余念が無い。 全ての列に段差があり、非常に見やすくて、音響が素晴らしい。プロヴァンス劇場は、モンペリエのベルリーズ劇場と似たモダンな構造で、円形ドーム風の空間は手ごろなコンパクトさが歌とオーケストラを絶妙に響かせてくれる。座席はF列であったが、D列まではピットとして取り除かれたいたので、2列目とステージに近く、臨場感がストレートに伝わってきた。 第1幕前奏曲では、ステージ左手の椅子に横たわるブリュンヒルデと背面壁が炎の映像で燃え盛る場面が展開。さらに左右に巨大な壁が出現し、四角く囲まれた閉塞空間を作り出す。ブリュンヒルデはステージから下降し、変わって右側から剣を鍛えるミーメが床から上昇してくる。ステージは鮮やかに展開し、四足で走る熊を引っ張ってジークフリートが登場するなど、オーソドックスな手法ながらも、余分なものを削ぎ落としたシンプルさがドラマを浮き彫りにする。第1幕は正面と左右の側面で作る四角空間を基本とし、第2幕では左右の壁だけをあわせた三角空間としているのが面白い。三角のつなぎ目の辺りには8本程度の細長い樹木を立てて、森をイメージ。森というよりも竹が数本立っているという風に見える。そのつなぎ目が少しだけ開口すると、その奥が赤く不気味に光るファーフナーの住処が垣間見える。第3幕冒頭では青い空間となり、ステージ奥のベッドにエルダが横たわる。次第にベッドはさすらい人の居るステージ前面まで迫り出す。ブリュンヒルデとジークフリートの出会いの場面では、第1幕前奏のときの場面に戻り、ステージは階段上に上昇し、二人の愛の世界が効果的に描き出される。幕切れクライマックスでは、開放した空間から左右の壁が迫り、四角く囲まれ、さらにステージ上部から壁が下ろされる。抱き合うブリュンヒルデとジークフリートが四角い部屋に閉じ込められてしまうのだ。その正面壁上部に開いた小さな四角い窓が印象的だった。ともかくヘルデンテノールとドラマチックソプラノが火花を散らし、強力なアンサンブルが圧倒的な陶酔に導いた。 ベン・ヘップナー(ジークフリート)が俄然素晴らしかった。カタリナ・ダレイマン(ブリュンヒルデ)も素晴らしい迫力。ヴィラード・ホワイト(さすらい人)の渋い貫禄に、ブルクハルト・ウルリッヒ(ミーメ)の巧みさ、アンナ・ラルソン(エルダ)の深みなど全てのキャストが見事に役どころを発揮した。加えて、ラトル&ベルリンフィルの底力溢れる凄い演奏。ドラマと一体化したアンサンブルはさすがと唸らされた。35分と30分の休憩を含めて、22時50分までの凡そ5時間20分に熱狂した。 |
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