2008.05.02 『ワルキューレ』マクヴィカー新演出レトーニャ指揮シャルボネ/ストラスブール・ハーン | ||
Direction musicale
Marko Letonja Siegmund
Simon O'Neill Figuration Orchestre philharmonique de Strasbourg Duree totale: 5h environ STRASBOURG OPERA 今日は、フランクフルト発12:05のICE、途中カールスルーエでTGVに乗り換え、ストラスブール定刻14:13に到着した。DBのサイトからTGVを含めたチケットが格安でプリントアウトできるのが非常に便利だ。旧市街からやや離れたヒルトンにチェックインした。部屋からは青空にそびえる大聖堂が望める。18:30からは国立ハーン・オペラ(ストラスブール・オペラ)で新プロダクション「ワルキューレ」を見た。デイヴィッド・マクヴィカー演出、マルコ・レトーニャ指揮による演奏。マクヴィカーの演出はザルツブルク「ホフマン物語」、シャンゼリゼ「ポッペアの戴冠」、グラインドボーン「ジューリオ・チェザーレ」など多彩な趣向が興味深かったが、今回のワルキューレも是非見たいプロダクションのひとつ。 第1幕、嵐の場面では炎が燃えるシーンから始まり、右手にそびえるトネリコの大木、中央奥深くメタリックな板で伸びる空間が印象的。フンディングは、胸に鎧をつけた僧兵といった感じで日本刀と槍を持っている。10名ほどの従者を従え、彼ら達も黒装束風で日本刀を携えている。切れ味の鋭い身のこなしがステージを引き締め、ジークムントとの出会いを緊迫感あるれる展開としている。そしてジークリンデとの愛の場面、一度閉じた中間壁が再び開いて開放感あるステージに青い月光が輝く。素晴らしい情景だ。コバルトグリーンのオーロラのような光線が揺れ動く。視覚的にも音楽的にも最高の陶酔感を描き出す。サイモン・オニールは神々しいまでのヘルデンさで、ヴェルゼの長い持続音にも揺るがない強靭さ。オルラ・ボイランのジークリンデは長身美女で劇場すみずみまで通る美声が良い。早くも圧倒的な第1幕に劇場が大いに沸き立った。 第2幕もステージを引き締めるセットデザインが注目。中央に巨大なアルミ板を湾曲させたステージを作り出す。2枚のつながった板は、左側がステージに向かって凹面、右側が緩やかな傾斜でステージ奥に延びるが、先端はデコボコになっている。そしてステージ右手にギリシャ悲劇を思わせる巨大な王のような仮面が傾いて設置。これは傾きつつある神々を象徴しているかのよう。そして、ステージ左手上部には各種の仮面が釣り下げられている。仮面は上段2面、中段3面、下段1面にレイアウトされており、中断中央が白く女性を思わせる。ドラマに登場するキャラクターを象徴したかのようであり、非常に興味深い。人格をも規定する仮面はドラマの相関関係を象徴しているようでもあり、日本の能面のように多彩な表情意図を示しているようで面白い。以上のステージ・デザインは全体として、微妙な均整感となっており、ヴォータンの複雑なもどかしさを比喩しているかのようであった。 それにしてもブリュンヒルデの馬は金属パイプで作った馬の頭部とジャンピングする竹馬のようなものを上半身裸の男性ダンサーが装着して演じる。その飛び跳ねる荒馬ぶりはダイナミックで、見るものを驚かせる。フリッカは羊の頭部を付けた男性ダンサーを馬車代わりに従え、鞭を振りかざす。ヴォータンは、アフリカ原住民の長であるかのようで、片方の目を中心に仮面をつけている。長い槍に付いた飾りつけはインディアンをも連想させる。ジークムントとジークリンデが登場する場面では、オブジェの仮面も消えて、荒涼としたステージに雷の閃光が放たれ、中央の湾曲したアルミ板にブリュンヒルデが登場する。第2幕もドラマと一体となったステージに見入った。 第3幕では、中央に巨大な女性の顔を形どったマスクが横たわる。それは山のようになっていて、ワルキューレ達が各自、金属パイプとジャンピングの荒馬を引き連れ、豪快に走り回る。まさにステージ狭しといった感じで、エネルギッシュな展開に目が離せない。ブリュンヒルデが眠りに付く場面では、巨大マスクが3分割され、その間に寝かされる。まさに仮面の中に同化していくような感じだ。そして炎をが燃え盛り、ヴォータンは衣装を脱ぎ捨て、さすらい人のマントに着替える。真っ赤な炎は青い炎に変わり幕となった。以上とても見ごたえのあるステージで、的確に響く演奏も重厚間満点で素晴らしい。全幕を通して日本風、アフリカ風、ギリシャ風など各種の様式を違和感なく統一し、強いドラマとして纏め上げた手腕はさすが。演奏もキャストも驚くほどの出来栄えで面白かった。 |
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