2008.03.20 『パルジファル』ヴァルリコフスキ新演出ヘンヒェン指揮/パリ・バスティーユ歌劇場 | ||
RICHARD WAGNER (1813-1883) DIRECTION MUSICALE Hartmut
Haenchen Amfortas Alexander
Marco-Buhrmester ORCHESTRE ET CHOEURS DE L'OPERA NATIONAL DE PARIS --- 今日はハンブルク9:00発のイージー・ジェット直行便でパリ・シャルル・ドゴールに飛ぶ。18時からはバスチーユ・オペラにてクシシュトフ・ヴァルリコフスキ新演出、ヘルムート・ヘンヒェン指揮の「パルジファル」を見た。同じくバスチーユで見たヴァルリコフスキ新演出のヤナーチェク「マクロプロス」は、アンジェラ・デノケの素晴らしさとあいまって最高のパフォーマンスであった。今回も映画のカットを用いる手法を取り入れ、コンセプトを感じる内容だった。 冒頭、指揮者は既にピットに居て、照明が消えると同時に、暗闇の中、指揮棒先の豆電球の明かりのみが緩やかに動き始め、前奏曲が始まった。ヘンヒェンの見事な指揮さばきから、荘厳で重厚な音楽が響き渡る。そして中盤に差し掛かる頃に、ステージスクリーン一面に手が映し出される。鉛筆でAmour(愛)と書く。次に消しゴムで文字を消して、 Foi(信仰)と書く。同じく消して Espe'rance(希望)と書く。 さらに終盤にかけてスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙への旅」のエンディングのシーンが全面に映し出される。白い部屋にベッドと食卓。年老いたボーマン船長が食事をしようとして、ベッドに横たわる自分の姿を見る場面。そこに現れたモノリスが大きくクローズアップ。するとステージスクリーンが少しだけ上昇し、ステージ後方に横たわるアンフォルタスが赤い照明に染まりながら手術を受けている。そしてスクリーンが再び下りて、モノリスの場面に続く、胎児がクローズアップされる場面。ここで前奏曲が終わる。 スクリーンが下りた前面に並べられた椅子にアンフォルタスをはじめとする登場人物が座って、歌い出す。フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒのグルネマンツの神々しいまでの感動的な歌が冴え渡る。スクリーンが完全に開くと、すり鉢状になったドーム席に囲まれた場面となっている。左右に二つずつ鏡をかけた洗面台が並んでいる。ドームの中央には、白鳥を抱え上げたパルジファルの立っていて、実に鮮やかなステージ運びだ。グルネマンツとパルジファルが聖杯城に移動する場面転換は、ドームを回転させる。その外側の円筒部分は何とバスチーユ・オペラの外観に見える。ガラス面と通して内部の構造が透けて見えている。そして再びドームとなったところで、神聖な儀式が始まる。 第2幕も同様にドームを前にしてドラマが展開するが、照明と空間を上手く活用した運び。花園の乙女たちがステージ一杯に踊る場面は、沢山の椅子と照明を駆使した鮮やかなもの。クリングゾールはステージ一杯に走る十字架の光線に射止められて絶える。 第3幕開始前にスクリーン一杯に、かなり古いモノクロ映画が無声で映し出される。ヨーロッパの郊外かどこか、半ズボンの少年が歩いている場面。ここで会場から野次が飛んで騒がしくなった。映画は少年が飛び降り自殺する場面も映し出す。ついに会場からブーイングと拍手が出るといった騒ぎ。そして静かになったところで、3幕の前奏曲が始まる。幕が開くとステージ全面に設けられた菜園の花に水を撒いているのは、さきほどの映画をイメージした半ズボンの少年。なお第1幕から、謎の人物がステージ内で傍観しており、年老いたボーマンをイメージした老人かと思わせる。第3幕では物言わぬ白髪の老女が聖杯の場面を見守っていた。 以上のように斬新な展開とともに深遠な内容を描きだす。パルジファルはクリストファー・ヴェントリスに代わってスティーク・アナセンが歌った。クンドリーはワルトラウト・マイヤーでやはり素晴らしい。45分と30分の休憩が入り、23時20分まで充実かつ刺激的なパルジファルを楽しめた。 |
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