2007.12.12 『パルジファル』ティエッツィ新演出&フィッシュ&フォークト/ナポリ・サンカルロ | ||
Parsifal Personaggi e interpreti direttore Asher
Fisch Orchestral, Coro e Coro di Voci
Bianche 今日12/12はミラノ・マルペンサ9:45発のアリタリア便で飛び、ナポリに11:15に到着した。アリ・バスにてムニチピオ広場に移動し、メルキュールにチェックインした。前回のナポリではジョリー・ホテルに泊まったが、メルキュールの方が安くて部屋も広々として綺麗。劇場にも近い。午後はリストランテで魚介を中心にナポリ味覚と美酒を楽しむ。天気は昨日のミラノから晴れており時々曇る程度。気温もミラノより温かい。城から港まで散策する。ベスビオ火山を望む開放感が素晴らしく、ヴェネチアと並ぶ風光明媚に時間を忘れた。 さて、午後5時からはサンカルロ劇場にてフェデリコ・ティエツィ新演出、アッシャー・フィッシュ指揮のパルジファルを見た。チケットはchartaのオンライン予約だと余り良い席が無いため、事前に劇場に予約を入れておいた。パルケット前方の非常に見やすい席でステージ全体を俯瞰できる。ステージセットは遠近法デザインをベースにした開放的なもの。昨日見たシェロー演出と対極するかのような印象を受けた。シェロー演出では青白く暗いモノトーンをベースとしていたが、ティエッツィ演出では淡い色彩に彩られた美しさがコントラストする。 第1幕ではクリスタルに輝くステージ床に格子状のラインを引き、中央に2対のヘラクレス像を左右対称に並べ、とても清楚な広がりを感じる。聖杯の場面では円卓ではなく、横一線に広がるテーブルとベンチを設えて、背景には7本のドーリア調の柱が立つ。下部で切れて柱の上部は宙に浮いている。7という数字は中世ルネサンスのいにしえより、聖母マリアを象徴し、マリアの7つの悲しみと同時に7つの喜びを意味する。その敬虔な祈りが本日の演出と演奏にも符号しており、実に素晴らしい展開だ。第2幕ではビデオ映像を駆使し、背景の暗黒に円形空間と木星や土星など太陽系宇宙が描かれる。そして長大な裾を持った華麗な衣装を纏ったクリングゾールとクンドリーが登場。花園の場面では、青一色の背景をベースに四角い森を写す矩形空間が現れ、そこに開かれた開口の奥にも矩形のオブジェが連なり、さらにその奥にも空間が出来るなど、鏡を2面合わせた無限空間をイメージしたセットになっている。ダイナミックな展開の2幕に対して、3幕は再び1幕のシンプルさをベースに聖金曜日や聖杯の荘厳なセットが多彩に展開してゆく。特にステージの半透明スクリーンにはステージ中央のある1点を中心に遠近法による放射直線が延びて、立体空間を描き出す。そこに背景の聖杯の場面が淡い2重写しとなって、幻想かつ深遠な情景を表す。 キャストはアルベルト・ドーメン(アンフォルタス)、マルクス・ホロプ(ティトゥレル)、クリスティン・ジークムントソン(グルネマンツ)、クラウス・フローリアン・フォークト(パルジファル)、パフロ・フンカ(クリングゾル)、リオバ・ブラウン(クンドリー)と素晴らしい。特にドーメンは昨年ジュネーヴ歌劇場でのハンス・ザックスが素晴らしく、今回も悲痛なまでの迫力。ジークムントソンの深いグルネマンツ、フンカの魑魅魍魎としたクリングゾルに、セクシーさを強調したブラウンのクンドリー。そしてフォークトの神々しいまでの輝かしいパルジファルは最高!ゆったりとしたテンポで歌い上げる様は曇りが無い無垢さと同時に悟り導く素晴らしさ。会心のパルジファルを聞いた。アッシャー・フィッシュ率いるアンサンブルも荘厳さに導く素晴らしさで、サンカルロ劇場全体が伽藍として響きを上げる凄さ。まさに深遠なパルジファルだった。 |
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