2007.12.11 『トリスタンとイゾルデ』シェロー&バレンボイム&ストーレイ/ミラノ・スカラ | ||
TRISTAN UND ISOLDE Nuova produzione Teatro alla Scalla Tristan IAN STOREY Direttore DANIEL BARENBOIM 今日12/11は6:15テーゲル発のエアー・ベルリンで飛び、7:55ベルガモ(オリオ・アル・セリオ)に到着した。ベルガモからはバス1時間でミラノ中央駅に到着。早めにヒルトンにチェックインして、ゆっくりと寛ぐ。今まで雨続きだったが天気は晴れとなった。ベルリンに比べてミラノのほうが寒く感じる。さて、今日は18:30からミラノ・スカラにてパトリス・シェロー新演出、バレンボイム指揮の「トリスタンとイゾルデ」 さて夕方、スカラに向けて移動する。ドォーモは見事にライトアップされ、その威容ぶりに驚く。その前に巨大なクリスマス・ツリーが立てられ、対面の建物にもビデオによりイラストが投影され、広場が一大パノラマを描く。ガラス天井のアーケードでは中央ドーム一面が青い星空として輝くクリスマス照明で、行きかう者はそこで足を止めるほど見事なもの。これらの飾り付けは特別な公演に向けて気分を大いに高める演出になった。 先日TV放送された為、ステージの凡そは事前に把握した。実演ではステージの巨大な壁が威圧感をもって迫り、TVとは違ったリアリティだ。ちょうど今年6月に見たウィーン・フェストヴォッヘン「死者の家から」の巨大壁を連想させる。この時はシェローとブーレーズが組んだ重圧に満ちたドラマ展開に圧倒されたが、今回はシェローとバレンボイムによるワーグナー楽劇が重圧とともに必然性を持って語りかける説得力に圧倒された。 第1幕では巨大壁に船櫓の形に切り欠き、そこに船を前方に進ませる。冒頭は出航前の荷積みの場面を加え、出航では船が前方に迫り出す。そして1幕の後半、着港時の荷降ろしの場面などの演出が施される。第2幕も巨大壁で閉鎖空間を作り出し、ドラマ演出とともに究極の陶酔を描き出す。3幕も巨大壁を効果的に用い、ベッドに横たわるトリスタンなど奇抜な発想による演出は一切なく、オーソドックスとも思える手法により、ドラマの核心に迫る。 キャストはイアン・ストーレイ(トリスタン)、ワルトラウト・マイヤー(イゾルデ)、ミケーレ・デヤング(ブランゲーネ)、マッティ・サルミネン(マルケ)と充実し、マイヤー、デヤングなど特に素晴らしい。ただし3幕開演前にストーレイは不調だが歌うとアナウンスがあり、3幕途中のトリスタン歌詞の厳しいところをカットして、オーケストラだけの演奏となったのは残念。とはいえ、バレンボイムの指揮はスカラを完全に掌握し、バレンボイムならではのトリスタンの響きがスカラを包み込んだ。シェローの重みあるドラマ演出とバレンボイムの重厚な音作りが一体化して、トリスタンとイゾルデの世界に没頭させられるという極めて優れた公演となった。やはりシェローの確かな演出と大指揮者が組んだ上演は見逃すことが出来ない。プレミエのTV放送ではエンディング時はフライング拍手となったが、本日は音が消え入ってからの喝采となった。カーテンコールではバレンボイムがオーケストラ全員をステージに上げて、シェローも登場。うるさいと言われるガレリアからのブーイングも殆ど無い喝采が続いた。 ちなみに先日のプレミエでは開演が19時だったが、2回目公演以降は18:30と30分早く、終演は0時を少し過ぎた頃となった。帰途、閑散となったメトロには重いプログラム冊子を抱えた熱心な聴き手があちらこちらに感慨深い表情で乗車していた。ちなみにプログラムの重さは1kgほどある分厚さで20ユーロ。スカラでのワーグナー上演の記録がぎっしりと詰まっている。トスカニーニ、ジークフリート・ワーグナーをはじめ珍しい写真の数々も興味深い。手提げバッグ1個で旅するものにとっては非常に重いが、記念本としの価値が高いため買った。 |
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